9月2日前半
気がつくと5時30分であった。昨夜の強風はすでにおさまっていた。そばには宿の人がいて起きあがるのを待っている。急いで着替えを済ませ入り口まで降りてゆく。宿の支払いがまだだったので、そのことを告げると、女主人が父らしき人に怒られてしまった。出発が早いのだから、昨夜のうちに支払いを済ませておくべきだったと後悔。初めて旅館というものに泊まった私の経験不足で申し訳なし。
深浦の駅まで宿から15分かかるとのことであったが、車に乗ったのが5時48分。昨日の軽トラと違って乗用車だったが、運転している人は「間に合わないかも」と言いつつ時速80キロぐらいで走る。
五能線の踏切を渡るあたりで前方に日本海が見えるが、白い波しぶきをあげていて、かなり荒れているようである。そして、深浦駅には5時57分に到着。なかばあきらめていただけに感激して、思わずチップをあげてしまった。
深浦始発で川部をとおって弘前まで行く1725Dは2両編成である。先頭の左側に席をとった。列車は定刻に発車して海岸沿いを走り、しばらくすると内陸部に入り6時56分に鰺ヶ沢に着く。20分の停車である。6時58分、反対側のホームに東能代行の724Dが到着。この列車から何両か切り離され、こちらの弘前行に増結される。
五能線の輸送量は両端が多いのであろうことは、昨日と今日乗ってみてわかったので、これはうまい車両運用である。もちろんたった1回乗っただけでは、その線の実態はわからないが、少なくとも五能線の中間部分は輸送量が少ないであろうことは時刻表から知ることができる。
7時16分に鰺ヶ沢を出た列車は、海の見える高台をちょっとかすめて内陸部に入る。そして7時48分に五所川原に着いた。跨線橋をわたって津軽鉄道のホームへ行くと、2両編成のディーゼルカーが停車していた。津軽中里行である。津軽鉄道はストーブ列車で有名であるが、もちろん今は走っていない。
この線は、ほとんど何もないところに駅があり、いきなりとんでもない所に停車するといった感じである。それでも金木までは、駅から沿線に家が点々と見られたが、太宰治の生地である金木をすぎると、家らしきものはめったに見えず、また(自分の)津軽のイメージどおりの「曇ときどき雨」という感じで淋しい。それでも金木だけは、津軽鉄道のなかでいちばん栄えているだけあって、けっこう大きそうな街であった。 列車は8時47分に終点の津軽中里に到着(左写真)。残っていた10人ほどが降りた。
駅前にはタクシーが停まっていたが、特にこれといった店がない。先の信号を右に曲がると、そこにやっと商店街があらわれた。パチンコ店はあるし、ほかほか弁当やはあるしで、どこにでもあるような街をみつけて何故かホッとする。フィルムを買おうとしたが、カメラ店は見当たらない。仕方なく駅近くへ戻り、なんでも屋でフィルムを購入。そして駅の待合室で9時45分の弘南バスを待つ。が、まだ30分も時間があるし、また半袖で寒いので、なにか羽織るものが欲しくなり、再び商店街へ戻る。
ふらふらしているのは、駅の待合室にいた壮年の男女の会話がさっぱりわからず(別に聞き耳を立てているわけではないが)、「ここはどこ?わたしは誰?」的な感じがしたので居たたまれなくなったせいもある。しかし、商店街に行ったものの買いたいようなものは見つからず、寒さを我慢して駅に戻った。
駅から小泊行きのバスに乗りこんだが、このバスはオールロマンスシートで、かなり古い。それがスピードを出して走るので、かなりスリリング。途中で乗客の乗降を繰り返しながら相当なスピードで走り、しばらくして海岸に出た。そこからしばらくは海岸沿いの道を行く。途中から右に折れ山を登り始めたが、バスはスピードを落とさず。おまけにジャリ道ときているので、バスは猛烈に揺れている。その山を下っていくと、やっと舗装されている道路にでた。あのまま真っ直ぐに行っても小泊に行けるようなのだが、どうも工事中らしい。なんだかんだで難行の末、小泊に着いた。
どうしても寒いので、食堂に入ってチャーハン(ここまで来て食べるもんじゃない)を注文したついでに、近くに洋服店はないかと聞いてみたが、日曜日は休みとのこと。昼食後、寒さに震えながらもせっかく来たんだしと、近くの海岸(右写真)で写真を撮ったり、波の音を録音したりしていたが、雨が降り出してきたのでバスの営業所へ戻る。
五所川原行きのバスを待っていると、先ほどのバスの運転手さんが「下前行きのバスはこれだよ〜」と声をかけてくれた。本当はほかにも何か声をかけてくれたのだが、津軽弁が強くてほとんどわからなかった。それでも、この運転手さんに限らず、さっきの食堂の親父さんにしても、なんとかわかるように話してくれたので、ありがたかった。
12時45分の五所川原行きのバスは、わたし1人を乗せて出発。途中での乗降も、4人乗って1人降りただけであった。時刻表では「十三湖」とバス停の名が出ていたが、どうも「十三」らしい。私は、その「十三」で下車した(13時20分)。
十三湖の方へ行ってみたが、嵐のあとのようで水はにごっていた(左下の写真)。それから海の方へ歩いていったが、風が強くて何回も押し戻される。それでも海岸(右下の写真)につくと、漁というか釣りをしている人が2人いるのを発見したが、波は相当に荒かった。波の音を録ろうとしたが風がかなり強いので、タオルを風防にして録る。
十三湖大橋の方へ戻ったが、バスの時間には少々あるので「和歌山」というドライブイン(?)に入ってチャーシューメンを食す。これが実にうまかった。お金を払うときに、いつもこんなに風が強いのか聞いてみると、「いつもはこんなものじゃない。今日は弱い方だよ」とのことであった。
五所川原行きのバスは20分ほど遅れてやってきた。時刻表の巻末には、14時40分の「十三湖」始発と載っており、乗車するとたしかに客は私1人であったが、どうも小泊から来たらしい。
このバスも、市街地などの狭い道を相当はスピードで走り抜け、途中で農協の集まりから帰るバアさまたちを乗せたりしながら、予定より5分遅れの16時05分に五所川原駅前に着いた。次に乗る五能線は18時15分なので街中をぶらつく。
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