いったん下関の駅を出る。写真を撮り(右写真:下関駅舎)、弁当を探して歩く。改札口前の弁当屋で何か特別な弁当を探すがない。店の人の話では名物弁当といえばふくめしだが今は季節ではないとのこと。しかたがないので二段重ねの上等幕の内弁当のようなものを買ってホームへ上がる。
ホームには12時17分発浜坂行きの急行「さんべ」が停車している。ベンチに座っていると、奥の待避線に停車していたDD51に引かれた50系客車4両が幡生方へ移動するのが見えた。急行「さんべ」が発車すると、さきほどの客車が推進運転(バック)で入線してきた。この車両が今度乗る列車になるのであった。停車すると、相当の数の乗客がドアのところに群がる。学生も多い、というより半分は学生である。私は前から3両目の中央あたりに席を確保したが、立ち客もけっこういる。12時32分に下関発車。次の幡生でも相当の乗客が待っている。ツッパリも多い。
私の持つイメージでは「山陰本線=海」なのであるが、海はなかなか見えない。満員の乗客も、幡生の次、綾羅木、安岡と停車していくうちにドッと降り、いつのまにか車内に空席ができるようになってきた。私のボックスにも空席ができ、安岡から乗ってきた若いおじさんが座る。
いつになっても海が見えないので若おじさんに尋ねる。若おじさんによると海のよく見えるのは、湯玉の手前から長門二見の手前、長門栗野から伊上の先、そして黄波戸の先だということであった。若おじさんは阿川まで行くそうで、ついでに海の色について聞いてみる。海の色が何層にも見えるのは地の色が違うからで、手前は砂だが岩になると海水の色が濃くなるということであった。
小串をすぎるあたりで車内は空席が目立つようになり、若おじさんは1つ前のボックスに移っていった。私は下関で買った弁当をひろげる。若おじさんの言うとおり湯玉の手前で海に出る。湯玉では下り急行「さんべ」待ち合わせのため3分停車。13時25分に発車する。滝部では遅れて走ってくる客のため、発車が1分遅れる。若おじさんは阿川で下車していった。
14時27分、長門市に到着。31分の停車である。今夜の宿を予約するため途中下車。時刻表で「浜田ステーションホテル」を見つけ、電話をしてみる。和室しか空いていないとのことであったが予約をする。
ジュースを買ってホームに戻ると、列車はいつのまにか3両になっていた(右写真)。1番先頭の客車が切り離されたようで、私の乗っている車両が2両目になっている。14時41分仙崎からの628Dが到着。そして14時58分に長門市を発車。
15時12分、飯井駅通過(左下写真)。この飯井駅の前後は海岸近くを走る。そして、15時32分萩駅着。反対列車待ち合わせのため3分間停車。海のそばにある駅というイメージを持っていたのだが、実際は平野から山に入る手前にある駅である。15時35分、出雲市からの827列車が到着。荷物車2両、客車3両。到着と同時にこちらは発車。列車は山に入るとみせかけて左へ回りこむ。
東萩駅2分停車。駅前に萩ロイヤルホテルなども見え、萩駅よりも発展しているように見うけられる。発車間際ホームのアナウンスが「次は越ヶ浜〜」と告げる。「ん?」と感じ、よく考えてみると、今までほとんどの駅が何の放送もしていなかったので、めずらしく感じたのである。
長門大井で下り特急「いそかぜ」通過待ち合わせのため3分停車(右下写真)。やや遅れて通過したため、こちらの発車が2分遅れ15時59分になる。この後、須佐でも559D長門市行きとの待ち合わせで2分停車した。
扇状地の出口のようなところにある飯浦に停車すると、ディーゼルの音以外なんの音もしなくなる。機関車の汽笛がこだまし、寂しいような雰囲気。益田の1つ手前の戸田小浜駅を発車するとしばらくは海岸沿いを走るが、やがて海と別れ内陸部へどんどんと入っていく。そして17時06分に終点益田駅に到着する。次に乗る予定の列車まで50分もあるので、改札口を抜けて駅前の本屋に入った。
益田駅へ戻ると、なにか盛んにアナウンスしている。17時42分発の特急「おき5号」が米子駅で車両故障のため70分遅れているらしい。「おき5号」とこれから乗る米子行き262Dは同じく改札口前の1番線である。「おき5号」の遅れのため、17時40分には262Dが入線し乗車が始まる。17時56分発のこの列車は、急行型のディーゼルカーで2両編成。その2両目中ほどの左側に席をとる。座っていると後方でバイト先「ケン&スタッフ」の大久保氏らしき声が聞こえてきた。振り返ると当然のごとく大久保氏ではない。聞くとはなしに彼らの話しを聞いていると鉄道マニアらしいき一行で、列車が発車すると俄然騒がしくなる。マナーは最低、車内で大声でしゃべるし、同じ鉄道を愛する者として恥ずかしい。
三保三隅で遅れの「おき5号」と交換のためしばらく停車する。こちらの発車予定時刻は18時23分であったが、「おき5号」と交換して発車したのは18時30分であった。ディーゼルカーは遅れを取り戻そうとスピードを上げる。
浜田に着いたのは18時55分で6分の遅れであった。ここで下車。マニアたちは米子まで行くらしいが、スタンプと食料調達のため降りてきた。ニセ大久保は友人にスタンプを頼んでいる。どういう基準で鉄道旅行をしスタンプを集めているかは知らないが、停車時間は25分もあるのだし自分で押すべきではないのか他人事ながら考えてしまう。
到着した3番線から地下道を通って改札口へ上がる。外へ出て駅前のバス停を何気なく見ると「1:51」という数字が書いてある。そんな時間にバスなんかあるのかなとよく見ると国鉄の山陽・山陰連絡バスの時刻で、広島を22時10分に出たバスが終点浜田駅着1時51分。広島7時13分着のバスは浜田駅始発3時40分である。こんな時刻で果たして乗客はあるのだろうか。
「浜田ステーションホテル」は駅のすぐ前にあって、この町でいちばんの高さの建物ではなかろうかと思われるほど大きい。ホテルへ行こうと歩き出し、途中で振り返って駅を見る。あまりの小ささに驚いてしまう。東京からの寝台特急「出雲1号」の終始発駅とはとても思えない。
ホテルは2階がフロントになっている。部屋は319号室。入るとすでに布団が敷かれていた。外に出て食事をとろうとしたが、商店街は閉まっている。しかたがないのでホテルの1階にある店で釜飯を食べた。味は予想以上であまりにも美味く、1つ土産につくってもらいビールを飲みながらビデオを見つつ部屋で1人暗く食べた。
つづく
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