「――――ガキ共から逃げてきたんだよ」
「子供から?」
「あぁ。遊んでくれって騒いで、しつこく着いて来やがったからよ」
「遊んでやればいいだろうが。どうせ暇なんだろ?」
「馬鹿言え。俺もそうそう暇じゃねーんだぜ?」
その言葉に、フリックは大層疑わしそうな――――と言うよりも、馬鹿にしたような眼差しを向けてきた。何をまともな言い訳を口にしているのだと、言いたげに。
だが、その言葉を口にしたらビクトールが騒ぎ出すと思ったのだろう。特に言い返してくる事もなく、言葉を続けてきた。
「――――まぁ、良い。用が済んだなら出て行けよ。ここはお前のような肉体労働専門者が来るような所ではないからな」
「――――てめぇ」
その言いぐさはなんなのだとくってかかりたかったが、ここはグッと堪えておく。何しろ、これから自分はフリックを罠にはめねばならないのだ。その後のお仕置きが少しでも軽減されるように、出来る限り穏便な話運びにしておきたい。
だからビクトールは、無理矢理微笑みを浮かべ直した。
「―――そう邪険にすんなよ。俺は朝からずっとお前を捜してたんだぜ?」
「俺を?」
「あぁ」
コクリと頷き返してやれば、探される理由が思いつかなかったのか、フリックは数度瞬いた後、軽く首を傾げながら問い返してきた。
「なんでだ?」
【シュウから伝言が】 【手合わせしたい】