「今の時間なら、訓練場に居る確率が高いかな――――」
呟きながら、ビクトールはゆっくりと歩を進めだした。
歩き慣れた道を進んでいくと、耳慣れた金属音が聞こえ始めてきた。その音と訓練所からあふれ出ている熱気を肌で感じ取り、自然と口端が引き上がる。
「やってるな」
そこにフリックが居るのかどうかは分からないが、誰かが剣をあわせている事は確かな事だ。もしフリックが居なかったら、その場に居る人間に彼の姿を見かけなかったか聞き、捜索の手がかりにしよう。
そう考えながら訓練場に足を踏み入れると、そこではマイクロトフとカミューの二人が手合わせをしていた。
手合わせをしている二人の周りには元マチルダ騎士団の騎士達と、その他の同盟軍兵士達が群がっていて、その全員が二人の打ち合いを見つめている。
真剣な眼差しで。
息をするのも忘れたように静かに見つめている。
この二人が手合わせをしているときは、いつもこんな感じだ。その場に居る全員が、小さな動き一つ見逃すまいと、目を皿のようにして見入る。傭兵砦で毎日のように行われていた、ヤジ混じりの手合わせとは全然趣が違う。
「まぁ、確かに見応えがあるからな」
そう感想を零し、キョロキョロと辺りを見回した。
求める男の姿がこの場に無いだろうかと。
だが、あの目立つ色は見あたらない。
どうやらここには来ていないようだ。
「どうすっかなぁ……………」
【試合を見続ける】【すぐに他を探しに行く】