「悪いが、ちょっと用事があってよ。お前等に付き合ってる時間がねーんだ。だから、また今度な」
ヒラリと手を振りながら断りの言葉を入れた。
だが、その言葉では納得出来なかったらしい。マイクロトフは、一歩前に踏み出しながら言葉をかけてきた。
「そう言って、相手をしてくださった事はないじゃないですか」
「………そうだったか?」
「えぇ。それでいつも相手をして頂けていませんから。今日こそは、相手をして頂きたい」
「ぁ〜〜……それは悪かったが、でも、今日はホントに用事が………」
「今日は一日オフですよね。用事など無いはずですか?」
詰め寄るマイクロトフに再度断りの言葉を入れようとしたら、下手な言い訳は許さないと言わんばかりに、カミューが口を挟んできた。
その言葉に、なんでそんな事を知っているのかと大きく目を見開く。その態度で彼の言葉を肯定している形になってしまい、カミューはしてやったりと言わんばかりの微笑みを浮かべてきた。
意地の悪さが如実に表れた笑みを見て、舌を打つ。罠にはまった気分になって。
そんなビクトールの姿を見てもう一押しと考えたのだろうか。カミューが言葉を続けてくる。
「無いんですね。じゃあ、マイクと手合わせをすることになんの問題も無い。でしたら、私からもお願いしますよ。凄腕の傭兵の力を部下達に見せてやって頂きたい」
にこやかに、丁寧に。だがしっかりとビクトールの事を絡め取って逃すまいとするようなカミューの言葉に、ビクトールは顔を引きつらせた。
チラリと視線を流すと、周りの兵士達は期待に満ちあふれた眼差しをこちらに向けている。この雰囲気の中で断るのは、なかなか勇気がいりそうだ。
そうなると分かっていてカミューはそう言う言い方をしてきたのだろうが。
そう思うからこそ、彼の思惑通りに動きたくなかった。
ここで断ったら凄く嫌な男の様に見えそうでもの凄く嫌だったが。
「あ〜〜………」
間の抜けた声を漏らし、ボリボリと後頭部を掻く。
そして、ゆっくりと口を開いた。
【断る】 【引き受ける】