「んなに俺の腕を認めてくれてんのはありがてーけどよ。今はマジに用事があるんだよ。悪い」
なかなか解放してくれ無さそうな騎士二人に、ビクトールは懇願するような口調でそう返した。
その言葉に滲む本気を察したのだろう。カミューは「おや?」と言うように軽く片眉を上げた。そして、僅かに首を傾げる。
「何かあったんですか? 急な仕事でも?」
「いや、仕事ってーわけじゃーねーんだが。フリックを探しててよ」
ずっと探しているのだが見つからないのだと告げれば、カミューは得心したと言わんばかりに深く頷いた。
そして、柔らかな笑みを寄越してくる。
「なるほど。今日はお二人とも休日ですものね」
その言葉の内に隠された言葉に気付いて、苦笑を返す。
多分彼は、自分がフリックと休日を共にしたくて彼の事を探しているのだと判断したのだろう。
それはある意味正解だが、満点ではない。だが、模範解答を教えてやる必要はないので黙っておく。
そんなビクトールに、カミューが言葉を続けてくる。
「フリックさんは朝から武装して、外に行きましたよ。散歩に出ると言ってましたが」
「そうか。なら、まだどっかでフラついてんな」
「探しに行くんですか?」
「おう。ようやく情報を手に入れたことだしな。だから………」
「分かりました。今回は諦めましょう。ですが、次の機会には是非とも、お願いしますよ」
あれだけしつこかったのがウソのようにあっさり解放してくれたカミューに軽く礼を述べ、ビクトールは訓練場を後にした。
真っ直ぐに迷いない足取りで道を行き、門を出る。
ザッと辺りを見回してみたが、目に入る範囲に目立つ青色は無かった。
大気の匂いを嗅いでみたが、血の臭いはどこにもない。
もっと遠くまで赴いていると言うことだろう。
「さぁ〜〜て。どっちに行くかなぁ…………」
【右】 【左】