【3】

 翌日。まだ朝と言っても良い時間にゾロが眼を覚ましたときにはもう既に、サンジの姿は船の上から無くなっていた。
 テーブルの上に。冷蔵庫の中に。溢れんばかりの料理を収めて、姿を消した。
 目減りしていたはずの倉庫の食料も満杯の状態に戻っていた。
 だからクルーは、街に降りずにそのまま船を出した。彼を追いかけたくなる自分達の行動を抑えるために。
 そして、用意された最後の食事を口にした。
 最後の食事は旨かった。いつものようにできたてじゃなかったけれど。冷えては居たけれど。それでも作り手の優しさが伝わり、一口食べるだけで身体が、心が温かくなった。
 自分の好物だけではなく、クルー全員の好物が用意されていたことにほんの少しだけ胸が痛くなったけど、それでも料理は最高に美味かった。

 いつの日かまた、この料理を口にしよう。

 全員でそう誓った。
 彼が何をするために船を下りたのか分からない。だけど、時期を見て彼を探しに行こう。彼が口にした、五年と言う数字を区切りに。
 サンジもそれを望んでいるはずだ。
 テーブルの隅に置かれた、一本抜き取っただけで置かれた煙草の箱と、冷蔵庫に張られたメモからそう確信する。
 そのメモと煙草は、どんなに色褪せても捨てられることは無かった。
 煙草はキッチンの片隅に置かれ続けた。
 メモは、冷蔵庫に張られたままだ。
 彼の存在をキッチンに感じていたかったから。
 口の悪さや女へのだらしなさなど窺えない几帳面な文字を、皆が毎日眺めた。
 その日が来ることを、切に願いながら。 





          【See you again!】










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《20040529Up》