様子がおかしいと思った。
 いつもと変わらぬ態度で振る舞っては居たが、どこか気もそぞろなのだ。
 最初はちゃんと面倒を見られなかった自分に怒っているのを隠しているせいだろうかと思ったのだが、しばらく経ったところでそうではないことに気が付いた。
 何か、もの凄く焦っているのだ。
 それが分かっても、ナミはなにも気付いていないふりをしてサンジと別れた。そして、彼の視界から自分の姿が隠れたことを確認してから気配を押さえ、歩き始めたサンジの後を追う。
 元海賊専門の泥棒だ。尾行くらいはお手の物。そうじゃなくても、今現在、サンジは注意力散漫になっている。ナミの気配に少しも気付いていない。
「――――どこに行く気?」
 ついていくのがやっとなスピードで駆けだした彼の後を必死で追いながら、ナミは内心で呟いた。
 市場には向かっていない。方向が全く逆だから、それは間違いないだろう。向かっている方向から考えると、酒場街へと向かっているように思える。
 そんなナミの考えは間違っていなかったようだ。視界に酒場が見えてきた。
 酒場の影が見え始めたところでスピードを落としたサンジは、一軒一軒、吟味するような瞳で見つめながらゆっくりと歩を進めていく。
 そんな動きでしばらく歩いていたサンジの目が、細い路地へと向けられた。
 その路地を、ジッと見つめる。鋭い瞳で。何かを見極めようとしているかのように。
 いったい何をしているのだろうかと首を捻ったところで、サンジがゆっくりと足を動かし出した。その路地へと向けて。
 ゆっくりと歩を進めていくと、その先に一件の酒場があらわれた。くたびれた、あからさまに流行って居なさそうな酒場だ。看板は色あせ、斜めに傾いている。潰れているのではと思うくらいに薄汚い外見だ。
 その入り口をしばし見つめていたサンジの口端が、ゆるりと引き上がった。そして、勢いよくドアを蹴り飛ばし、悠然とした足取りで店の中へと踏み込んでいく。
「――――なんなの、いったい?」
 サンジの行動の意味が分からず、呆然と呟いた。だが、ここでボンヤリしているわけにはいかない。ナミは気配を殺して酒場の入り口へと近づいていった。
















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《20060924UP》
















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