焦らすようにゆっくりと男との距離を消す一歩を踏み出し、弛んで脂ぎった頬に手のひらを添える。
 はっきり言って、その感触は吐き気をもよおすほど不快なものだったが、今は吐いている場合ではない。吐いたらその時点で終了だろうし。
 頬に添えていた手をゆっくりと動かし、指先で頬を、首筋を、胸元を撫でていく。その指先が下肢に伸びた所で、僅かに硬くなった男のモノを手のひらで覆った。
「………まだなにもしてないのに、随分とやる気じゃねーの?」
「オレのは、コレで普通なんだよ」
「へぇ………そりゃあ、この先が楽しみだな」
 軽口を叩きながら、男の足元に膝を落とし、ゆっくりとズボンの前をはだけさせる。そして、力を持ち始めたモノを丁寧な手つきで取りだし、細い指先で裏筋をそっと撫でた。
 それだけで先の行為を期待したのだろうか。股間のモノは更に力を持ち始めた。
 しばらく手指で弄んだ後、立ち上がり始めているモノへと口付ける。
 視界の端に子供の泣き顔が見えたが、今は構っている場合ではない。その存在を無視して、サンジは目の前のモノに意識を集中させた。
 硬く力を持って立ち上がったモノを丁寧に舐め、先走りの液を流し始めた先端を舌先で刺激する。砲身全てを口内に納めて吸い上げるように刺激してやれば、男は小さくうめき声を漏らした。
「……我慢してないで、イケよ」
 口から大きくなったモノを外し、上目遣いに男の顔を見つめながら立ち上がったモノの側面を舐め上げてやれば、男は荒い息を吐き出しながら口角を引き上げる。
「……まだまだ、こんなモノでは、オレは気分よくならねーなぁ………」
 その言葉にジワリと瞳を細め、砲身にかじり付きながら指先で先端を抉ってやった。
 小さく息を飲む音が聞こえ、手の中のモノの容量が増える。
「飲むのと、顔にかけるのと、どっちが良い?」
 笑みの色が滲む楽しげな声で問いかけながら再度砲身を口内に納め、男を絶頂に誘う為の刺激を与える。
 その刺激にうめき声を上げた男は、股間に沈んだサンジの頭へと手を伸ばしてきた。そして、性急な動きで強引に、掴んだ頭を上下に動かし始める。サンジを使って、自慰をするかのように。その動きに逆らわずに従っていたら、不意に頭を持ち上げられた。
 間髪入れずに、顔に熱い迸りがかかる。
 思わず顔を顰めたが、すぐに気を取り直し、熱く強い瞳でサンジの顔をジッと見つめている男に向かって、青い瞳を向ける。そして、滑らかな頬を伝ってしたたり落ちてくる雄臭いモノを舌先でペロリと舐め取った。
 男の瞳の色が変わる。
 完全に欲情した事が丸わかりな色に。
 ソレを確認してジワリと笑いかけたら、捕まれたままだった頭を強引に引き上げられた。そしてそのまま、強引に口付けられる。
 思う存分口内を蹂躙した舌先が離れたと思ったら、力任せにシャツを引き破られ、食い付かん勢いで首筋に齧り付かれた。その痛みに身体が僅かにすくむ。
 ぶよぶよとした指先が肌を撫で、胸の突起にひっかかり、弄ぶように撫で回してくる。
「フッ………あっ………!」
 久しぶりに感じる刺激に、自然と声が漏れた。
 艶が混じる、甘いとしか言えない声が。どこからどう聞いても、誘っているとしか思えない声が。
 その声で、男の股間が再び力を持ち始めた。足に硬い感触があたる。すぐにでも突き入れたいと訴えるように、サンジの足にこすりつけてくる。
 だが、ソレよりもまずはサンジの反応を楽しみたいと思ったのか、男の手はしつこくサンジの身体をまさぐってきた。
 胸の突起を撫で回すだけだった指先の動きが押しつぶすようなものに変わり、強い刺激が与えられるようになった。その刺激のせいで完全に立ち上がったソコに、爪先を強く、突き差される。
 途端に、サンジの身体は小さく跳ね上がった。
「ヤッ………」
 熱が一気に体中を巡り、白い肌に朱色が差す。
 理性では気持ち悪いと思っているのに、身体は男の刺激に反応する。出そうと思わなくても、自然と甘い、先の行為を強請るような声が漏れてくる。
 そんな自分の身体に嫌悪感を抱き、今すぐ男を蹴り殺したくなったが、なんとかその衝動を納め、男の肩に己の額を落として熱い息を吐き出した。
 サンジの熱い吐息に触れ、男の股間がさらに力を持つ。もうこれ以上待てないと言いたげに。
 早急な動きでベルトを引き抜かれ、前を開けられてズボンを下げられる。膝の位置までという、中途半端な位置まで。
 はだけたシャツで隠れた尻に、男の手が回り、双丘を掴んでその感触を確かめるように撫で回してくる。
 引き締まった臀部の硬い感触を十分に堪能した後、男の太い指が隠れた蕾の中へと進入してきた。
 その異物感に、小さく息を飲む。
 濡らしもせずに進入してきたためにその滑りは悪く、サンジの身体は意識しない内にその進入を阻んだ。
 それでも無理矢理に突き込んでこようとしたが、そのままでは早急に己のモノを突き入れることが出来ないと思ったのだろう。舌打ちした後、蕾の中に進入させていた指を引き抜き、その指先をサンジの口内へとねじ込んできた。
「舐めろ」
 短い要求に従い、高そうな指輪がはめ込まれた指に舌先を這わせた。時々態と赤い舌を見せ、男の欲望を煽るようにしながら。
 チラリと視線を俯ければ、男の股間はこれ以上無い程張りつめている。目の前の男の瞳には、欲望の色しか見て取れない。早く出したいと。早くサンジの身体を貫きたいと、そう訴える色しかない。
 サンジは内心でほくそ笑んだ。そして、男の指で後穴を暴かれる刺激に艶めいた声を発しながら、素早く周りの状況を窺う。
 周りに居る男の部下達は全員、自分の痴態に釘付けになっている。
 銃口は下がり、引き金に指を置かれていない。
 セイを拘束していた男達の手は、おざなりにその肩に置かれている状態だ。
 今がチャンスだろう。
 それまで熱に浮かされたような潤ませていた瞳に冷静な光を宿し、セイの瞳を見つめた。
 そんなサンジの視線に気付いたのだろう。大きな瞳からボロボロと涙をこぼしながら、セイはジッと、サンジの瞳を見つめ返してきた。
 そんなセイに、行けと、顎をしゃくる。周りに気付かれないように僅かな動きで。
 サンジの言葉をうけて、小さな身体がビクリと震えた。だが、すぐに了承するようにコクリと頷き返してきた。その瞳には真剣な光が宿っている。動揺の色は、もう見えない。
 サンジは僅かに瞳を細めて笑った。自分の考えが伝わったことを確信して。これで一番の気がかりは無くなると、そう思って。
 だが、次の瞬間にはギョッと、目を見開いた。
 セイが、こちらに向かって駈け出してきたのを目にして。
「バカッ! 違うだろうっ!」
 状況も忘れて叫んでしまったサンジの声に、サンジの身体を弄んでいた男の身体がビクリと揺れた。
 そして、周りの男達が慌てて銃を構える。
 真っ直ぐに、セイの背中に向けて。
 焦ったサンジは、慌てて男の身体を引き離そうとした。
 その瞬間。
 耳元に低い、押し殺した声が響き渡った。
「馬鹿はてめーだ」
「え?」
 なんだ、と思った瞬間、身体を後方に引き倒されるように男の拘束から引きはがされた。
「………てっ!」
 当然のように、埋め込まれていた男の指で体内を引っかかれ、サンジは小さく悲鳴を零した。
 だが、痛みに対して示した反応はそれだけに留める。身体が床にぶつかった瞬間に直ぐさま体勢を立て直し、無様に倒れることなく膝立ちになった。
 セイがどうなったのか、確認しないといけないから。
 何が起こったのか、確認しないといけないから。
 大切な我が子を守るために。
 慌てて視線を辺りに振りまいたサンジは、目の前に立っている男の姿を目にして、大きく目を見開いた。
 そして呆然と、呟く。
「――――ゾロ――――」
 三本の刀を構え、頭に黒いバンダナを巻いた男に、それ以外の言葉をかけられなかった。














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《20070603UP》






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