CAUTION:全ての運動「スポーツ」また自然の知識や安全な対処方法ならびに救助方法を学習・習得する為には実際の環境下(水の上)で正しい指導と安全管理のもと学習ならびに練習する事が大切です。
5.カヤックの漕ぎ方(実践編)

5-1.川の流れを理解する。

 水は、標高の高いほうから低いほうへ流れます。これは、ごく当たり前のことですが、川は常に一定の状態で流れているのではなく、水深も違えば流速も違い刻々と変化します。これが川の表情でもあります。
 特に渓流では、水深があり流れの速い荒瀬もあれば、さざなみが立っているようなチャラ瀬もあります。蛇行しているところでは深い淵になっている所も少なくありません。大きな岩が真中にあったり、水が一気に落ちているような落ち込みなどもあります。このような変化に富んだフィールドで、いかに安全にカヌーイングができるかは、流れの表情を見極めることにかかっています。しかし、川に漕ぎ出すと瀬の音は聞こえても、流れだけをみても瀬の様子がわからない場合は、躊躇なくスカウティング(艇から降りて下見をすること)をしましょう。

 川底の状態と波の立ち方

瀬、ザラ瀬 ・川底に小ジャリがある速い流れ。通常、瀬と呼ぶ。また、ザラ瀬とは、水深が浅くなっており、場所によってはカヌーのボトム(舟底)を擦ってしまい、漕げなくなってしまう場所。
隠れ岩 ・川底に大きな岩がある場合、水は押し上げられて大きくうねる。水面からみるとヌメッとしたような状態。隠れ岩とも言う。
荒瀬 ・比較的大きな岩がある川底で、流れが速い川では白波が立つ。通常、荒瀬とも言う。
落ち込み

ストッパー
・水面に頭を出す大岩の下では、水が落ち込み、白く泡立つ。通常、落ち込みと言う。
バイパス - 川の流れが、中州で分断されて、2つに分かれること。普通は本流のが水量も多く安全であるが、場所によっては障害物がある時があり、支流はエスケープルートになる。
瀞場(トロ場) - 川の勾配がなく、流れが穏やかである場所。初心者が練習するには絶好の場所。


 流れによって出来る川の状態と障害物

以下、Outdoor Shop LANDSのHPを参考にしています。(私のカヤックもこのお店で購入しました。)

A:岩
水面ぎりぎりにある岩は直前まで発見しにくく、回避が遅れがちになる。直前で回避行動を取った場合、艇が横向きに岩に当たり、岩を避けようと上流側に体重移動させると、上流側に沈しそのまま岩に押しつけられることがある。さらに岩を中心にして左右のバランスが均衡してしまうと、岩に張り付いてしまう(ラップとかブローチングと呼ぶ)。強大な水圧により艇が押しつぶされ、クローズドデッキのカヤックでは足を挟まれて脱出できない恐れがあり、上体が水面下で呼吸が出来ない状態では一刻を争う事態に発展する。
水面ぎりぎりの岩でも注意して見ていると、わずかな水の盛り上がりや、岩を頂点としたV字型の水の波紋(アップストリームVと呼ぶ)のサインがあらわれていることが多いので、絶えず進路には注意しましょう。どうしても避けきれない場合には、艇を横向きにさせないようにし、それでも横向きに岩に当たりそうになったときは、体重を岩側におき上流沈だけは避け、パドルや手で岩を押して岩から離れるようにしましょう。

B:堰堤
河床が急激に変化するとその下流には縦方向の渦が出来る(バックウォッシュ)。その循環流は漂流物を捕捉する働きがあり、強い循環流の中ではいつまでもグルグルと回り続けて、そこから脱出できないこともあり得る。とくに危険性の高いのはローヘッド・ダムと呼ばれる水がオーバーフローするタイプの堰堤で、川幅いっぱいに均一な循環流が発生し死亡事故も多く起こっている。ローヘッドダムは直前まで発見しにくいので、事前の調査が重要である。ローヘッドダムを発見したら必ず岸をポーテージしましょう。
循環流からの脱出の方法としては川底の下流への流れをつかみ、一気にバックウォッシュの下流側(アウトウォッシュ)に出る可能性も考えられるが、川底には岩や倒木その他の障害物が堆積していることも考えられ、それらに捕捉される危険性も高い。

C: ホール
河床の急激な変化や大きな岩を水が乗り越えているところの下流には、ホールが出来る。ホールに突っ込んだカヤックのバウが、川底の岩や岩の割れ目に突き刺さると、突き刺さった逆の方向に戻さない限りそこから抜け出せなくなる(バーチカルピンまたはピンニングという)。ピンニングしたカヤックの乗員は、背中からの水圧に押され容易に脱出する事が出来ない上に、水をかぶり呼吸も困難になる。最悪の場合水圧で艇が折れ曲がり、下半身を圧迫しさらに脱出を難しくする。ピンニングはカヤックだけでなく、脱艇して漂流している人間がホールに足から落ちて、足が川底の岩に挟まり動けなくなることもある。安全が確認されたホールでのロデオプレイ以外は、上流からいきなりホールに突っ込むのは注意しましょう。

D:ストレーナー
ストレーナーとは濾し器のこと、岩などに流れが当たっている場合ははねかえるが、その間を水だけ通り過ぎてしまうような障害物の場合は捕捉されてしまう。代表的なものは倒木などが水面ぎりぎりに進路を塞いでいる場合、それに引っかかってしまうと強大な水圧に押されて身動きできなくなってしまう、これは体験したものでないと水圧の大きさと怖さは分からない。
ストレーナーを発見したら一刻も早く回避行動を起こすこと、漂流していてどうしても回避できない場合は、ストレーナーを乗り越えるようにする、絶対に下へ潜ってはならない。

E:アンダーカットロック
水面下の部分がえぐれている岩のことを言います。流れが直角に近い角度でぶつかっているアンダーカットロックは、水面下に引きずり込まれる可能性が高く、引きずり込まれると水圧に押されて脱出できなくなることがあります。
流れが岩にぶつかると通常はクッションウェーブという返し波が発生しますが、アンダーカットロックの場合はクッションウェーブが発生しません。クッションウェーブが無く、流れが吸い込まれているような所はアンダーカットになっていると考え、近づかないことです。

F:エディー
エディは休憩や下流の偵察になくてはならない場所ですが、本流の流れが速い場合には強力な渦が発生します。また本流とエディの境目には水圧の壁「エディ・フェンス」が出来、漕ぐ力の弱い初心者にはエディフェンスを越えられないことがあります。エディフェンスに跳ね返されたり、不安定なエディ内で沈脱した場合、強烈な渦に引き込まれることもあり得ます。

G:スタンディングウエーブ
波そのものはとくに危険と言うことはないのですが、自分のパドリングレベルを超えた大きく不規則な波は、沈させられ、脱艇の可能性が大きく、その後の危険につながっていきます。自分のパドリングレベルでは不安があり、さらに下流にいろいろな障害が予測される場所では、ポーテージが賢明です。

H:シーブ
シーブとはザルのこと。岩などが堆積して進路が狭まっていたりすると、水は通り抜けるのにボートや人は捕捉されてしまいます。護岸用のテトラポットなどもシーブの一種です。

I:橋梁
強い流れのある橋げたの下流側には、強力なエディーが発生し艇を横向きに橋梁に近づけると、艇が橋梁にはりつき極めて危険な状態になる(ラップとかブローチング橋梁には近づかないこと

その他の障害物を紹介しておきましょう。
名称 説明
仮設橋 河原での工事中によく見られるが、絶対に通過不可能なので、早めに岸に寄せポーテージすること。
取水堰 取水堰はその規模によらず、危険である。必ずポーテージすること。大きなものは地図でも確認できる。
沈下橋 沈下橋は増水することにより、通過不能となる。水量の増減には十分注意が必要です。
消波ブロック 消波ブロックは、川の至る所で見られる最悪の人工障害物である。近づくと吸いこまれるように艇が張りついてしまうので、絶対に近づかないこと
ポーテージ・・・・・・・・ポーテージとは艇を担いで岸から迂回すること。
※ライニングダウン・・・・岸を迂回する場合には、ポーテージのほかにライニングダウンという方法もある。岸辺の浅瀬を、艇にロープをくくりつけ、引っ張りながら瀬を迂回することである。





 川のグレードを知る(参考)

1級の瀬 多少小さな波が立っているぐらいで、流れもゆっくりしたパドリングぐらいの速さで、比較的ゆるやか。デッキに波がかぶる程度で、初心者でも緊張せずに楽しめる。
2級の瀬 やや波が高く、流れも速くなるが障害物や波に癖もない比較的素直な瀬。カヤックで上半身に多少波がかぶる程度。適度なスリルが味わえる。
3級の瀬 波が高く、パワーもあり、場所によっては1m以上のホールも出現し流れも複雑になる。しっかりとしたパドリングをしないと沈の恐れがある。
4級の瀬 波は相当高くなり、2〜3mのホールや強烈なストッパーが出現。上級の技術がないと危険である。確実なロール技術とレスキュー態勢の配備が必要。
5級の瀬 非常に早い流れと、水量。パワフルなストッパー。細心の注意をしてても沈をする確立が高い。
6級の瀬 カヤックで下るには、危険が高すぎ、冒険的な要素のが強いほど強力な瀬。もはや自然の猛威を感じるくらいの瀬。




川の流れを理解した所で、さあ、いよいよ本格的な川での技術習得です。

5-2.川を横切る(フェリーグライド)・・・・・・・へ続く



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4−5.沈脱&ロール5-1.川の流れを理解する5-2.川を横切る(フェリーグライド)