移動体メディアの普及と変容

Diffusion and Transformation of Mobile Media

                              松田 美佐
                              Misa Matsuda
                              富田 英典
                              Hidenori Tomita
                              藤本 憲一
                              Ken-ichi Fujimoto
                              羽渕 一代
                              Ichiyo Habuchi
                              岡田 朋之
                              Tomoyuki Okada

1 はじめに


 わが国では、1990年代に入り、まずポケットベルが、続いてPHSや携帯電話などの移動電話が若者を中心に爆発的に普及している。ポケットベル(Pager, Beeper, Paging Service)は、1968年に日本電信電話公社によって東京23区でサービスが開始された。当初は呼び出し音のみのトーンオンリー型であったものが、1987年のディスプレイ表示型の登場で、90年代半ばには女子高校生を中心として爆発的に普及した。携帯電話(Cellular Phone, Mobile Phone)は、1985年に開始された車外で利用できる自動車電話「ショルダーホン」が発端となり、1987年にサービスが開始された。当初は、高額の通話料のためビジネス利用中心であったが、その後、通話料も下がり急速に普及しつつある。PHS(Personal Handyphone System)は、1995年に首都圏と札幌市(北海道)でサービスが開始された。屋外でも利用できるコードレス電話という発想から生まれたPHSは、公衆電話並みの通話料であったことから簡易型携帯電話として、若年層を中心に急速に普及した。しかし、今日では、携帯電話の通話料金も下がったために、接続の良さから携帯電話への乗り換えが相次ぎ、PHSの契約数は1997年9月の706.8万契約をピークに減少傾向にある。また、ポケットベルの契約数も、携帯電話とPHSの急速な普及により1995年の1061万契約をピークにその後大幅に減少している。
 このような急速な普及により、移動体メディアを流行や風俗の文脈でとらえた論考が数多く見られるようになった。ただ、その多くは印象論的なものにとどまっている(1)。ただし、このような状況は日本だけに限らない。Katz and Aspden(1998)は、かつての電話がそうであったように、その目覚ましい普及とマス・メディアの大きな関心にもかかわらず、移動体メディアを用いたコミュニケーションに関する研究は「無視されてきた」と述べている。しかし、徐々にではあるが、移動体メディアを用いたコミュニケーションに関して、実証的なデータをもとに検討を加えた研究が重ねられてきている。本稿もその延長線上に位置づけられるべきものとして、以下の順に議論を進める。まず先行研究を整理した上で、次に1996年から98年にかけて実施したインタビュー調査をふまえて、移動体メディアがメッセージの受け手の負荷を軽減し、比較的緊急度の低い目的でも気軽に利用されるようになってきていること、「番号通知サービス」を利用し、人間関係を峻別、選択していくコミュニケーション、「選択縁」が成熟しつつある点を明らかにする。そして最後に、以上の検討をもとにその過程を四段階に整理する。
 なお、本稿では、携帯電話とPHSをまとめて「移動電話」、ポケットベル(ポケベル)を加えて「移動体メディア」と表記することにしたい。

 

2 移動体メディアを用いたコミュニケーションに関する先行研究


 移動体メディアを用いたコミュニケーションに関する調査研究として最も多いのは、利用者の社会的属性や利用目的、頻度や時間などの利用状況を調査したものである。
 それらを見ると、例えば携帯電話の普及初期段階においては、多くの国で利用者の社会的属性や利用目的が共通していることがうががえる(2)。フィンランドで1990年におこなわれた調査によれば(3)、利用者で最も多いのは31歳から50歳までの男性であり、41%は雇用者が購入し、支払っているもので、私的な利用を目的とした購入は12%に過ぎなかったという(Roos,1993)。また、1988年の時点でのアメリカにおいても、利用者の多くが中小企業の経営者であるが「ゆえに」、97%が男性であったという(Rakow and Navarro,1993)。日本でも、中村(1996)が1995年5月に兵庫県南部地域でおこなった調査では、利用者の9割以上が男性、30代から50代が8割を占めており、料金は会社などの法人が支払っているものが44.5%、自分で支払っているのは53.4%であったという。これらはいずれも、加入・維持コストの高い普及初期段階においては、携帯電話利用が仕事上で必要な男性が利用者の中心をなしていたことを示すものである。
 そのほかの携帯電話利用法として挙げられるのは、日本でも阪神淡路大震災の後に急増した緊急連絡手段としての利用や「親しい人とのおしゃべりやつきあいのため」といった自己充足的な利用などである(Roos,1993)。ただし、「仕事のため」といった道具的な利用を含めこれらの利用法は携帯電話独自のものではなく、一般加入電話の利用と共通している(例えば、川浦,1989 やDimmick,Sikard and Patterson,1994)(4)。さらに、移動メディアの爆発的な普及を考えると、これらの調査がおこなわれた時点と現在では、平均的な利用者や利用目的、利用状況はかなり異なるといわざるをえない(5)
 その点で興味深いのは、Rakow and Navarro(1993)によるインタビュー調査である。それによれば、同じ「道具的な利用」であっても性によって携帯電話の具体的な利用法は異なるという。すなわち、仕事での利用が多い男性にとって携帯電話は公的な世界を拡張するのに対し、女性には子供との連絡など家事目的で利用されるため、逆に私的な世界を拡張する傾向が見られるのである。このような男女の携帯電話利用の違いから彼女らは、他の新しいメディア同様、携帯電話は古い社会的政治的慣習を破壊し、ハイアラーキーを再配置し、公的領域と私的領域の境界を再構成する潜在的な可能性を持っているが、現状での利用にはジェンダー・ポリティクスが働いていると結論づける。この研究は、移動体メディアの利用をより深い社会的文脈上で理解することを試みたものといえるであろう。
 他にも、移動体メディアを用いたコミュニケーションの特徴やその影響を描き出した事例研究は興味深い知見を提示している。例えば、松田(1996)による移動電話の利用者へのインタビュー調査は、移動電話の利用により「電話をする用件」が、緊急ではないものの、全く不必要でもない「気楽な用件」へと変化しつつあることを見いだしている。この移動電話の利用により用件の「質」が変化するという指摘は今後さらなる検証が必要であろう。また、若年層における数字表示式のポケットベルの利用者調査をおこなった高広(1998)は「ポケ言葉(6)の方言」を発見し、数字の語呂合わせで文字メッセージを送りあうには、その数字を文字に変換し、解釈するコードが共有されていなければならないために、メッセージを交換する間柄はある程度閉ざされていたと述べている。この知見は、その後登場したコードが不要な文字表示式ポケットベルでは、誰とでもメッセージ交換が可能となり、そのことが「ベル友(=ポケットベルでのメッセージ交換から知り合った見ず知らずの友達)」成立の一条件となったことを示唆するものである。
 さて、いずれの調査も普及の諸段階における移動体メディアの利用状況やコミュニケーション特性、その影響を明らかにしているが、先にも述べたように、1990年代以降の世界各国での移動体メディアの爆発的普及を鑑みると(7)、短期間で移動体メディアを用いたコミュニケーションの特徴やその影響はかなり変容していると思われる。
 以上でみたような先行研究は存在するものの、現状では移動体メディアを用いたコミュニケーションに関する研究は数少なく、また、その状況の変容を踏まえた研究はほとんど存在しない(8)。Roos(1993)は、移動電話はその技術的な特性から、移動性・アクセスのしやすさ・同時性・プライヴァシー・個人的な利用といった面を重視されがちではあるが、例えば「アクセスのしやすさ」に関しては、利用者が都合の良いときにごく限られた人とだけ移動電話を使うことで固定電話と同様に使うことが可能であるし、「個人的な利用」に関しても、人前で話せば他人に会話内容を聞かれるため、公衆電話での会話と同じように形式的で非個人的な会話となる可能性があると述べている。すなわち、移動電話それ自体が持っているのは、我々のコミュニケーションを変化させ、ひいては社会のあり方を変容させる可能性なのであって、現実の変化を考える場合には移動電話という新しいメディアを利用者側がいかに使うのかとの観点からの検討が必要不可欠である。利用者を含め、社会から切り離された形でメディアが存在しえない以上、今後、移動体メディアをめぐる状況の変容を踏まえた研究が必要であると思われる。

 

3 調査の概要


 上記でふれた先行研究をふまえ、われわれは移動体メディアを利用したコミュニケーションの急速な普及がどのように展開し、その後いかなる変容をとげているかを明らかにするべく、1996年8〜9月に東京の渋谷と原宿、97年1月に大阪のミナミで、さらには1998年8月に東京と大阪の同じ地点でのべ4回にわたりインタヴュー調査をおこなってきた。対象と方法については、調査を開始した96年当時、普及の主な担い手とされた10〜20歳代の若者(9)とし、あらかじめ用意した質問項目(別項参照)にしたがって街頭で聞き取りをするかたちをとった(10)。こうした形態で調査をおこなった理由としては、次の点をあげておきたい。まず普及途上にある新しいメディアを対象としたため、仮説検証型の定量調査ではなく、問題発見型の定性的調査を試みたこと、さらには、普及初期において質問紙による量的調査をおこなおうとする場合、使用者のサンプリングが困難であったことの二点である。
 質問内容を作成する際には次の点を念頭に置いた。まず、各メディアの利用状況を具体的に把握すること、どのような利用動機があるのか、さらには対人コミュニケーションの中でいかに位置づけられているのか、また、多様化、複合化していく機能をどのように用いているのか、といったことである。さらに、98年の調査では、時間の経過にともなうメディアの革新や利用状況の変化をふまえ、質問項目について若干の項目の修正をおこなっている。
 以上4回の調査について、回答者の属性および所持している移動体メディアの種類は次ページの通りである。本稿では96年の東京調査と97年の大阪調査、そして98年の東京調査と大阪調査をそれぞれひとまとまりのものとして取り扱う。次節以降でこの双方の調査結果をそれぞれ検討した上で、移動体メディアの使用状況とその変化、さらにはメディアをめぐるコミュニケーションの状況について96-97年の調査と、98年の調査の双方から比較分析をおこなうものとする。

 

4 1996−97年調査の結果


 ここでは、はじめに96年と97年の調査におけるインタヴューのデータを参照しつつ、メディアを持つようになったきっかけと具体的な使用の状況を整理し、どのようにこれらのメディアが受け入れられているかを概観する。つぎにそうした使用状況と移動体メディアを通じた対人関係やコミュニケーションの特徴的な側面を紹介し、メディアの特性や受容のされ方とどのような面で結びついているかを考察する(11)

4-1 所持のきっかけと使用状況


 まず移動体メディアを持ったきっかけについて見てみよう。ポケットベル、携帯電話、PHSなどいずれの場合も、友人や、彼氏・彼女と「連絡をとるため」であるとか、そうした「友達がもっていたから」あるいはそうした人々から「持つようにいわれた」という例がきわめて多い。また、外出が多く自宅の電話などでは「つかまらない」ためだという場合も少なくない。

「いろいろ呼び出されることが多いし、家にいないときが多いので。」(東京、女・24歳・ポケベル)
「みんな持っているから。1人がもし、持つと広がっていくから、それでみんなが持つようになって、いろいろ入れっこしたりして。」(東京、女・16歳・ポケベル)

 さらに、次のケースからもうかがえるのは、連絡をとりやすくするという意味合いが単に「いつでも」「どこでも」とれるようにするというだけでなく、個々人へのダイレクトコールを可能にするという状況である。

「やっぱり、外で友達とかと連絡とれたら便利だし、あと、家で夜中電話かかってきた時でも自分の部屋に携帯置いてあれば、楽だし。」(東京、女・19歳・ポケベルと携帯電話)

 つづいて、これらのメディアが具体的にいかなる場面でどのように使用されているかについてであるが、これはメディアの種類により差異が見られる。まずポケットベルの場合、「待ち合わせ」などの純粋な連絡のための使用と並んで、「遊び」あるいは「ヒマなとき」という答えが目立った。

「用事あるときとか、なんか『おはよう』とかね、『おはよう、何してん?』とか、『おやすみ』とかね、そういう挨拶。」(大阪、男・16歳・ポケベル)

 これが携帯電話やPHSの場合となると、「おはよう」「なにしてる?」といったあからさまな不用不急の目的での使用を直接回答するケースは大幅に減少する。しかしながら、松田(1996)が「用件の変容」と指摘したような「気楽な用件」からの使用もしばしば見られる。

───あまり長電話はしない?
女「用件だけ」
(中略)
───話す内容とかは。どんなことをよく話しします?
男「ほんと事務的な。」
女「1日の出来事、報告。」
───その都度、結構思いついたときに?
女「いや、毎日しゃべるのが日課なんで。何を喋るというより、おもしろかった話とか、ギャグの言い合いとか。」(東京、女・19歳・携帯電話とPHSとポケベル、および男・19歳・携帯電話)

 こうした利用動機や使用状況を見る限り、移動体メディアはプライベートな局面において「気軽なメディア」として受け入れられていることがうかがえる。その理由としては、まず移動体メディアが特定の個人の用いるメディアとして位置づけられていることが考えられるだろう。またポケットベルの場合にかぎれば、高広(1997)が指摘しているような移動体メディアの「マルチメディア/ニューメディア」的な側面にも関係が深いといえる。そこでは「非同期的」コミュニケーションを可能にしていることで、メッセージの受け手の負荷を軽減し、比較的緊急度の低い目的でも気軽に利用できるようになっているのである。

4-2 対人関係ならびにコミュニケーションにおける特徴とメディア特性


 この調査では、移動体メディアをめぐるコミュニケーションや対人関係においていくつかのユニークな特徴が明らかになった。以下、それらの特徴を紹介しつつ、各移動体メディアの特性や使用状況との関係を考察する。
 移動体メディアの「気軽な」利用は、着信した通話を受け手の側で自在にコントロールするようなコミュニケーション形態を可能にしている。これは富田(1997)の指摘する「居留守番電話型コミュニケーション」にあたる。すなわち、携帯電話やPHSの留守番電話機能を逆手にとって、受けたくない相手からの通話や、受けたくないタイミングの時に、意図的に留守録状態にするというものである。これは、先にふれたポケベルの「非同期性」を電話でも実現するものだといえる。実際、ポケベルの場合も「シカベル」する(ベルをシカト=無視する)ことで、同じような対応をするユーザーが多く見受けられた。

「ベル、便利ですね。」
───縛られてるみたいな感じはないですか?
「ないんですね、ベルは。シカトしちゃえば一緒です。」(東京、女・20歳・ポケベル)

 さらに、別のやり方で通話の選別をおこなうケースもしばしば見られる。

「うざいやつは話して、ああこいつはと思ったらすぐ切っちゃうの。」
「『電波がやばい』とか言って切っちゃうの。」
「『ごめん、もう電源切れそう』とか言って。」(東京、女・14歳・PHS、女・15歳・PHSとポケベル)

 これは、移動体メディアが有線メディアにくらべて信頼性に劣ると思われている点をうまく活用して、人間関係やコミュニケーションの選別をおこなうものである。その意味では「居留守番電話型コミュニケーション」と共通する意図が含まれているといえよう。
 また、96-97年の調査では、ポケットベルの「非同期性」、さらには文字によるコミュニケーションであるという側面が、ユーザーの側から特異な価値を与えられている様子がうかがえた。

「電話しなくてもいいようなことなんだけど、とりあえず何か言っておきたいこととか、『おはよう』とか、それはわざわざPHS使うほどでもないじゃない。電話して『おはよう』と言うよりもベルで、それだけでも繋がっているし。ちょっと入れるぐらいなら。ずっと電話とかしなくても毎日ベル入れあえばなんかつながってるっていう……。」(東京、女・20歳・ポケベル)

 こうした傾向を反映してか、ポケットベル・ユーザーの中には、将来もとくに携帯電話やPHSを必要としないという声や、かりにそれらを持つようになったとしても、ポケットベルを手放そうとは思わないというケースが多くみられた。
 ポケットベルのメディア特性のもとに成立したコミュニケーションのユニークな形態としては、「ベル友(とも)」の存在も忘れることはできない(藤本、1997など)。今回のサンプルのうちでも相当数がベル友の経験を語っている。アトランダムにポケットベルの番号へかける者、あるいは友達の友達によるポケットベル番号の紹介から知り合う者など、その成立にはいくつかのヴァージョンがみられた。

「なんかいきなり、“ベル友”になろうとか言って、ポケットベルの番号とか書いてきて、それから、『名前、何て言うの?』とか、全然知らないのに。で、会ったときとか、遊ばないんだけど、今も続いている。」
(中略)
───自分からベル友になろうってかけたりしたことは?
「ある。目茶苦茶の番号をやって、ヒマなときとか。」(東京、女・17歳・ポケベル)

 

5 98年調査の結果


 98年度の調査では前回調査とは異なるきわめて興味深い特徴がみられた。以下に、そのデータの概要を紹介する。

5-1 移動体メディアの使用遍歴


 ポケットベル、PHS、携帯電話の順に、使用者の年齢層が上昇しているというデータ(郵政省、1998)を反映してか、多少ぶれはあるものの、ポケットベル→PHS→携帯電話という使用履歴を持つインフォーマントが、98年調査では少なからずいた。この履歴には主に次のような特徴がみられる。(1)携帯電話やPHSの使用開始と共にポケットベルの使用をやめてしまう。(2)ポケットベルをやめた理由は「文字をうつのがめんどくさい」「友達が持たなくなった」。(3)それとともに「『ベル友』やめた」という声が聞かれる。

「もう周りの人がポケベルじゃないんで、つまんないじゃないですか。自分だけじゃ。誰も入んないし(笑い)。飽きたんで。」(東京、女・24歳・携帯電話)
「ポケベルがなんか打つのが面倒で、ピッチだとPメールって、なんかポケベルみたいだし、楽だから。」(東京、女・19歳・PHS)

 さらに、ポケットベル使用者が減少した理由は、ポケットベルの文字機能が携帯電話やPHSの文字通信サービスへ吸収されたことが大きいと考えられる。上掲のように声のやりとりに終始するインフォーマントは多いが、その利便性を強調しつつも文字通信を頻繁に使うインフォーマントがいたことも確かである。この使用状況は次のようにまとめられる。(1)携帯電話やPHSに付属している文字通信サービスの利用は親しい友人間に限定されていることが多い。(2)文字通信サービスの利用は状況(授業中、仕事中等)に依存している傾向が強い。

「文字はすごい親しい子と……。」(大阪、女・21歳・携帯電話)

───声でしゃべるのと、文字でおしゃべりするのと、どちらが多いですか。
「最近は声のほうが多いけど、普通の......、いま夏休みだから入りますけど、普通の学校の時とかは文字のほうが多い。」
───それは? 学校の時が文字が多いというのは、授業があるから?
「そうそう。そういう時とか、相手する人も授業があったりするから、あえて文字とかでやったりする。」(東京、女・19歳・PHS)

5-2 利用に対する意識


 利用しはじめた動機はともかく、「何故使い続けるのか」に対して「便利だから」という回答が判を押したように返ってくる。この利便感は「時間の有効利用」にあるようだ。反面、所有したことによって「しばられている」という感覚をもつインフォーマントもいる。こういった利便感と拘束感に関連して、家庭にある固定電話と比較した携帯電話の特性が浮きぼりにされる。それは、「今しかなさの希薄化」である。つまり、携帯電話を所有していれば「いつでも連絡可能」であり、「家に帰らなければ、連絡がつかない」固定電話の場合よりも「連絡は今でなくてもいい」という意識が強まる。このあたりから「時間に対するルーズな感覚が増長していること」を危惧するインフォーマントもいる。
 移動体メディアを所有したことによって生活が変化したかどうかに関しては、むしろ「変わらない」という返答が多い。

───それは家の電話と同じようにPHSを使っているということですか。
「家の電話は使わない。」
───それはどうしてですか。
「電話番号を打つのが面倒臭いから、これだと電話帳で通話、押せばいいから。」(東京、女・19歳・PHS)
「(生活が:筆者加筆)根本的に変わっていないと思うんですけど、時間とかでもいまぐらいの時間だったらいつもつかまらなかったから、即、家に帰ったんですよ。でも、その時間でも友達とつかまったり、会えるっていうんで、結構、時間が有効に使えるようになったような気がします。」(東京、女・21歳・携帯電話)

「(前略)…だからもうほんとに今、なくてはならないというか、自分のそういう便利な道具としてなくてはならないじゃなくって、みんなの中でのなくてはならないというものになっちゃっているっていうのが、便利だなとは思う反面、なんかちょっとっていう気もあるし、あと例えば待ち合わせとかにも遅れるとか平気で、連絡とちゃうじゃないですか。だからすごいルーズな人とか増えたりとか、連絡つくからちょっと遅刻してもいいやとかそういう人がすごい増えたんじゃないかっていうふうに思っています。」
───縛られているっていう感じはしません?
「それはしますねぇ。」
───しますか。
「ええ。まぁ、どこにいても連絡がつくのは便利ですけど、それはやっぱり逆に縛られているっていう感覚もやっぱりありますし、…(後略)」(東京、男・21歳・携帯電話)

 インフォーマントの中には、このような「しばられている」という意識をもたず、むしろ自由に使用し「便利」と感じる者も多かった。それに関連して「持って出かけるのを忘れたとき」「なくした・やめたとき」の不便感が増しているようである。

「持っていたんですけど、お金かかるんで1回やめたんでけど、そしたら友達から電話かかってこなくなっちゃったんで、それで買ったんです。」(東京、男・17歳・携帯電話)

───持って出るの忘れたこととかありますか。
「あります、あります。」
───そういう時はどんな気持ちになる?
「なんか、さみしい。(笑い)いや、なんか、あらな、あらな落ちつかない。かからんかっても、あらな落ちつかない、なんか。(笑い)」
───友達状態?
「友達状態です。必需品ですよ、なんか。財布みたいな感じで、大事なもん。」(大阪、男・17歳・携帯電話)

5-3 利用からみられる人間関係選択とコミュニケーションの実態


 着信のさいにかけてきた相手の番号もしくは相手の名前を表示させることのできる機種・サービスは、移動体メディア使用者が人間関係を自由に取捨選択する機会をあたえている。このことは前節でみられた「居留守番電話型コミュニケーション」と共通の傾向を示していると考えられる。

「だから、『番号通知出さないと私とんないから』って言ってある。」(東京、女・18歳・携帯電話)

 コミュニケーション全般に関しては、移動体メディアの使用にともなって一次的接触が増大する傾向にあるようだ。電話を介して身体を拡張するのではなく、次の事例のように携帯電話特有の時間的利便性を駆使し一時的接触をはかることがより容易になっているのである。

「夜中、寝よるときにかかってきて、『遊びにこい』とか。あと先輩からとか、断りきれ んでなんか、行ってしまうみたいな。」(大阪、男・16歳・ポケベルと携帯電話)

 また、T.P.O.に応じてフレキシブルに人間関係を選択していく使用を示す回答もみられた。

「(電話番号の教えやすさについて)家の電話のほうが電話的には使うのが好きなんですけど、携帯のほうが電話の回線をすぐ切ったりとか、留守電にできたりするじゃないですか。番号も表示されるから。ちょっと安心かなと思って。」(東京、女・18歳・携帯電話)

 

6 両調査の比較検討


 本調査の目的は、アンケート質問票調査などの定量的統計調査手法では発見が難しい現象や、その現象に至る萌芽的な動機などを発見することにあった(藤本、1997)。4・5両節でみてきたように、「複数端末利用」や「ベル友」現象など、当初の目的どおりの調査結果が得られた。6節では、96年8月・97年1月の調査から98年8月調査へと至る経年比較によって、両現象を中心としたメディア行動の変容過程を分析した。
 「複数端末利用」とは、携帯電話・PHS・ポケベルの「端末三種」のうち二種、三種を常時携帯し、併用することである。当然、通信費も格段に高くなるが、本調査では正確な収入源と金額までは特定しなかったものの、アルバイトによる可処分所得の支出目的第一位に「交際費的な通信費」が挙がった点を傍証として指摘しておきたい。
 輻輳化した交友関係を維持するべく携帯電話・PHS計3本を鞄にしのばせていた「自称タレントの卵」(17歳女・渋谷)をはじめとして、別表(p.93)のとおり、96年に確認された「複数端末利用」は、その後96年から98年にかけて、大きく減少すると同時に、「端末不所持」も著しく減少した。逆に、「携帯電話単独利用」は著しく増加し、ほとんど標準的な基本装備といえるまでに、若者たちに普及した(12)
 こうした変化の背後には、いくつかの理由が考えられる。理由Aについては、郵政省や各企業の統計資料からも裏づけ可能だが、理由B・Cについては、インフォーマントの談話分析によって抽出できたものである。

〈理由A〉企業側における性能とサービスの向上
 ユーザー側が複数端末利用を通じてようやく満たしていた用途・機能が、単独の携帯電話で統合的に代用できるほどに、端末性能とサービスが向上した。街頭で採集された発言は、「携帯電話は電波がいいから(PHS・ポケットベルに代えて所持するようになった)」の一言に尽きる。ただし、「電波がいい」が、「おいしい」「かわいい」「ノリがいい」と同様、きわめて多義的な価値判断語彙である点は、注意を要する。
〈理由B〉ユーザー集団成員相互における「ドミノゲーム」的な技術標準化
 携帯電話の単独利用にふみきった理由として、重要な発言は「みんなが使ってるから(自分も使い始めた)」というものだ。一見、テレビCMやクチコミに対する付和雷同・主体性欠如にも見えるその含意は、自分の所属グループ(ペアから大集団まで)の誰か(キーマン)が端末変更をきっかけに、一時的に「ドミノゲーム」的な葛藤状況が起こり、選択の主体として決断したことを意味している。こうした異なるメディア間の競争と棲み分けによる「ドミノゲーム」現象について、生物学的なメタファーを借りるなら、個体レベルでの「決断」が繰り返されることによって、特定地域集団内で一種の「生態学的遷移」が起き、集団全体として「極相(クライマックス)」ともいうべき「技術標準化」が成立したといえるのではないか。
〈理由C〉ユーザー個人における「ワレットPC」的な身体感覚の変化
 「複数端末利用」が嫌われた一因として、鞄の奥から服のポケットへ、という収納定位置の変化と、身体の一部としての感覚変容が起きていることがあげられる。また、携帯電話やPHSが、かつてのポケベルと同等の容積・重さでありながら段違いの電話番号・アドレス・音声メモなどの多機能・大記憶容量をもつ端末となったことから、いわばビル・ゲイツの「ワレット(財布)PC」構想(1994)に近い一種の分身的な存在として、携帯電話の単独利用への移行が急速に進んでいる。
 96年8月、すでにポケットベルの大流行はかげりをみせていたが、「お金があっても携帯電話は欲しくない」と語っていた誇り高いポケベル擁護派は、「携帯電話は(大声で独話する姿が人目につく・アタマ悪そうだ・友だちとメッセージを見せ合えない)から、ダサイ・カッコワルイ」という、表面的な機能より一種の美意識ともいうべき身体感覚をもっていた。これに対して、98年夏、さらに少数となったポケベル派は、「お金があったら携帯電話に買い替えたい」と、もはやプライドなき節約派へと変化している。メディア移行の背景には、以上のような理由があったと考えられる。
 95年に街頭の聞きとりで確認されていた(藤本、1997)「ベル友」は、96年8月渋谷原宿および97年冬ミナミの調査において、広範な流行が確認された。これは、先行する伝言ダイヤルやダイヤルQ2という「匿名的コミュニケーション」のより広範な層への普及拡散プロセスであった(岡田、1993、あるいは富田、1994など)。既知の紹介関係をともなわない、番号だけをたよりに直接、未知の誰かにアクセスする「ベル友」遭遇をきっかけに、恒常的な交友関係が成立する「匿名縁」の事例すら見られた。
 しかし、98年8月時点では、すでに「ベル友」は「昔はたくさんいたけど、最近はいない」過去の存在となっていた。また、「ベル友」に代わる「Pメール友」「ショートメール友」という新しい「匿名的コミュニケーション」が誕生していたが、もはや「ベル友」ほどの流行には至っていない。むしろ目立ったのは、「番号通知サービス」(若者言葉で「番通」)の開始によって、通知・非通知が臨時的・恒常的に選択可能となったため、番号非通知者からのコールを拒否したり、拒否しないまでも慎重な「心の準備」をしてから電話に出る行動様式が広まっていることだ。これは、番号をたよりに人間関係を峻別し、選択していくコミュニケーションの方向だといえよう。従来の地縁・血縁・社縁に代わる「選択縁」の存在は、かねてから指摘されてきたが、加算式の「ベル友」的関係性から加算乗除自在の「番通」的関係性への変遷は、移動体メディアの革新と表裏一体となった「選択縁」の成熟プロセスを示唆している。

 

7 まとめと今後の課題


 本稿では、移動体メディアを利用したコミュニケーションの急速な普及がどのように展開し、その利用形態がいかなる変容をとげているかを明らかにしてきたが、最後に、この間の移動体メディア普及過程を4つの段階にまとめておきたい。それは、若者が、たとえ親と同居していても、別居独立するのに等しい自前のvoice&mail併用型メディアを獲得するプロセスを意味している。
(1)「加入電話段階(親がかりのメディア隷属段階)」:住居・通信・経済すべての面で、両親に従属。
(2)「ベル段階(受信時のみ自前の半独立・半寄生段階)」:「数字・カナ暗号段階」から、「フリーワード段階」へと移行。
(3)「移動電話段階(送受信ともに独立した段階)」:ポケベルからPHSと携帯電話へ移行し、さらに、携帯電話のシェアが突出。
(4)「voice&mail段階(音声・文字併用段階)」:携帯電話の文字機能や「ポケットボード」(13)を駆使する「ネオ・メーラー」(14)が登場。
 96年夏は〈ベル段階〉の末期、98年夏は〈移動電話段階〉の末期〜〈voice&mail段階〉の萌芽期にあたる時期であったと位置づけられる。現在、このプロセスの順路にかかわりなく、様々な経路でメディア遍歴をかさねるユーザーが出現し、パターンは多様化しつつある。代表的なものとしては、親と別居しても、自分の部屋に加入電話を敷設することなく、携帯電話1本で一人暮らしを始める事例などがあげられる。
 このプロセスの中で、移動体メディアは、「非同期的」コミュニケーションを可能にすることで、メッセージの受け手の負荷を軽減し、比較的緊急度の低い目的でも気軽に利用されるようになった。そして、移動体メディアの「気軽な」利用は、着信した通話を受け手の側で自由に選別できるようなコミュニケーション形態を可能にしている。それは、移動体メディアが、いつでも、どこからでもコネクト(接続)できるだけでなく、従来、電話の特徴と考えられてきた「応答の強要」という側面を緩和し、話したくない相手との関係をスクリーン(遮断)する役割も果たしていることを示していた。また、ポケットベルが果たしていた機能は移動電話での文字通信サービスに吸収され、今日の「ネオメーラー」が登場しているのである。この移動体メディア普及過程の四段階は、通信技術の発展から見た一元論では説明することができない。Markus and Vikson and Shnnawy and Soe(1992)の調査によれば、現在利用している様々な非同期性の電子メディアについて、各メディア間の技術的統合を多くの回答者が望んでいる。ただし、回答者の多くがそこで望んでいるのは、複数の電子メディアを統合するマルチメディアによって、音声入力されたメッセージをテキストとして受信したり、FAXで送信された文書を電子メールで受信し編集可能となったりすることであった。つまり、送受信するメディアを自分の好みに応じて自由に選択したいのである。さらに、Soe and Markus(1993)は、technological utilityよりもsocial utilityの重要性を指摘している。これらの研究は、ビジネス上での利用に限定されたものであるが、女子高生のポケベル利用や大学生の移動電話利用についても、「便利である」「使いやすい」などのtechnological utilityより「周囲の人が持っている」「仲のよい友達が持っている」などのsocial utilityや「個人の好み」がメディア選択に大きな影響を果たしていることは、今回の調査からも明らかである。
 水越(1996)は、メディアのあり方を電気技術の進歩によって一方的に規定されると考えるのではなく、情報技術、メディア、社会という三者の重層的かつ複合的な相関関係からとらえる「ソシオ・メディア論」を展開している。情報技術は、メディア変容や社会変容を引き起こす重要な因子であるが、実は、情報技術自体がすでに社会の網の目に組み込まれており、社会を構成する多様な要因と人々の日常的な実践こそが、その潜在能力を世の中に発現させるのだと指摘する。
 本研究は、このようなメディア論の文脈に位置づけられ、「移動体メディアが、メッセージの受け手の負荷を軽減し、比較的緊急度の低い目的でも気軽に利用されるようになってきていること」「番号通知サービスを利用し、人間関係を峻別、選択していくコミュニケーションである『選択縁』が成熟しつつある点」「移動体メディア普及過程の四段階」など本稿で明らかにした事実は、情報技術とメディアと社会のダイナミックな関係が移動体メディアにおいていかなる形で生まれつつあるかを示しているのである。
 その意味では、岡田(1998)が指摘するように、パソコンやインターネットとは別の「もうひとつのマルチメディア」としての移動体メディアの存在は、社会とメディアのかかわりを考察するうえできわめて重要な領域であるといえる。岡田は、文学、クラシック音楽、美術などの高級文化に対して、芸能、ポピュラーミュージック、マンガなどをポピュラー文化と位置づけるこれまでの文化研究の対比をパソコンと移動体メディアに当てはめ、前者を「エリート・メディア」、後者を「ポピュラー・メディア」と位置づけたが(岡田、1997)、冒頭でも触れた普及率の高まりを考慮すれば、「ポピュラー・メディア」としての移動体メディア研究がこれまで以上に重視されるべきなのは明らかである。  残された課題は多いが、その中でも、加入電話と移動電話の今後の関係、諸外国との比較研究、年齢差によるメディア受容の差異、移動電話の「コネクト機能」「スクリーン機能」という相反する機能、前述した「選択縁」が従来の人間関係に今後どのような影響を与えるのか、さらには「ネオ・メーラー」が従来のインターネット利用とどのように接合していくのか、といった点が、今後の研究においてとりわけ重要だといえよう。

 

[註]
(1) 中には、若者に特徴的なコミュニケーション様態や人間関係を描き出す鍵のひとつとしてポケットベルを取り上げた大平(1995)のように、極めて興味深い考察も見られる。また、直接的に移動体メディアを用いたコミュニケーションに焦点を当てた論考として、富田ほか(1997)。
(2)日本でのPHS初期利用者はかなり異なる。Ishii(1996)、石井ほか(1996)参照。
(3)比較的早くから携帯電話が普及したのは北欧諸国である。例えば、1992年でのフィンランドでの普及率は7%程度であるのに対し、同時期の日本やドイツ、フランスでは1%、イギリスで2%、合衆国で2.5%にすぎなかった(Roos,1993)。
(4)もちろん、抽象度を下げれば携帯電話と電話の利用法は異なる。例えば、中村(1996)やKatz and Aspden(1998)による調査は、日常的な移動の多さが携帯電話利用と関連していることを明らかにしている。
(5)携帯電話の利用者ひとつをとっても、ここ数年で「中年の男性」から「若者」へとその中心が移行しつつある。例えば、野村総合研究所(1998)や郵政省(1998)を参照。
(6)数字表示式のポケットベルで文字メッセージを交換する際の語呂合わせ言葉。「428(しぶや)」「4951(至急来い)」などが代表的。
(7)移動電話契約者数は、1994年と1996年を比較しても、イギリスで376万台から567万台、ドイツで250万台から375万台、イタリアで224万台から386万台、香港で49万台から121万台、中国で157万台から716万台、韓国で96万台から318万台などと急増している(総務庁統計局編,1998と電通総研編,1998のデータから)。また、日本では契約者数が減少しているポケットベル(ページャー)は、シンガポールで34.4%、韓国で27.7%、香港で17.2%(いずれも1996年)などアジア諸国で特に高い普及率を示している。
(8)例外的に、ポケットベルとPHS利用者へのパネル調査をおこなっているのは中村(1997)。また、註5で示したように、野村総合研究所(1998)や郵政省(1998)では性・年代別の移動体メディア利用者の割合の推移がわかる。
(9)若年層の移動体メディア使用率とその伸びの高さについては、野村総合研究所(1998)および郵政省(1998)を参照。
(10)ただし、質問項目の順序は各インフォーマントによって一定してはいない。
(11)インタヴューの文末のカッコ内は(調査地、性別・年齢・所持するメディアの種類)の順で付記している。
(12)参考までに、街頭でのサンプル比をあげておくと、渋谷原宿96年→98年にかけての経年変化は、「複数端末利用」14.2%→7.1%、「端末不所持」31.6→15.8%、「携帯電話単独利用」9.6%→51.6%であった(表1参照)。
(13)簡単に電子メール等が楽しめる端末として、NTTデータ通信(株)から発売されているメッセージ送信と10円メール送受信専用の「pocketboard(ポケットボード)」。
(14)『アクロス』1998年6月号(パルコ出版)の命名による。

 

[参考文献]

  • 『アクロス』1998年6月号  パルコ出版
  • 電通総研編 1998 『情報メディア白書 1998年度版』
  • Dimmck, John W., Jaspreet Sikand and Scott J. Patterson, 1994, The Gratifications of the Household Telephone: Sociability, Instrumentality, and Reassurance., in Communication Research. 21(5), pp. 643-663.
  • 藤本憲一 1997『ポケベル少女革命──メディア・フォークロア序説──』エトレ
  • Ishii, Kenichi, 1996, PHS: Revolutionizing Personal Communication in Japan. in Telecommunications Policy. 20(7), pp. 497-506.
  • 石井健一・川上善郎・中村功・是永論・辻大介 1996 「初期PHS採用者の利用実態」『情報通信学会誌』第52号 pp. 87-94.
  • Katz, James E. and Philip Aspden, 1998, Theories, Data, and Potential Impacts of MobileCommunications. A longitudinal Analysis of U.S. National Surveys. in Technological Forecastingand Social Change.57, pp. 133-156.
  • 川浦康至 1989「電話行動に関する社会心理学的研究」『昭和63年度情報通信学会年報』 pp.81-91.
  • Markus, M.Lynne and Tora K.Vikson and Maha El-Shnnawy and Louise L.Soe, 1992, Fragments of Your Communication: Email,Vmail, and Fax, in The InformationSociety. 8.
  • 松田美佐 1996「移動電話利用のケース・スタディ」『東京大学社会情報研究所調査研究紀要』7号 pp.167-189.
  • 水越伸 1996「ソシオ・メディア論の歴史的構図──情報技術・メディア・20世紀社会──」水越伸編『20世紀のメディア1──エレクトリック・メディアの近代──』ジャストシステム pp.5-25.
  • 中村功 1996「携帯電話の「利用と満足」──その構造と状況依存性──」『マス・コミュニケーション研究』48号 pp.146-159.
  • ─── 1997「移動体通信メディアが若者の人間関係および生活行動に与える影響──ポケットベル・PHS利用に関するパネル調査の試み──」『情報通信学会年報』8 pp.27-40.
  • 野村総合研究所 1998『情報通信利用者動向の調査』(1998年3月実施) http://www.nri.co.jp/nri/news/980525.html
  • 大平健  1995『やさしさの精神病理』岩波書店
  • 岡田朋之 1993「伝言ダイヤルという疑似空間」『現代のエスプリ』第306号 pp.93-101.
    ──── 1997「ケータイメディア論のすすめ──ポケベル・ケータイこそマルチメディアである──」富田・藤本・岡田・松田・高広(1997)pp. 6-13.
  • ──── 1998「もうひとつのマルチメディア──電話網の中のサイバースペース──」『木野評論』第29号 pp.48-48.
  • Rakow, Lana F. and Vija Navarro, 1993, Remote Mothering and the Parallel Shift: Woman Meet theCellular Telephone. in Critical Studies in Mass Communication 10, pp. 114-157.
  • Roos, J. P., 1993, 300 000 Yuppies? Mobile Telephones in Finland. in Telecommunications Policy. 17(6), pp. 446-458.
  • Soe, Louise L. and M.Lynne Markus, 1993, Technological or Social Utility ? Uuraveling Explanations of Email, Vmail, and Fax Use, The Information Society. 9, pp.213-236.
  • 総務庁統計局編 1998『世界の統計1998』大蔵省印刷局
  • 高広伯彦 1997「ぼくたちのマルチメディア、ポケベル──束縛のメディアから解放のメディアへ──」富田・藤本・岡田・松田・高広(1997)pp. 32-58.
    ──── 1998 「ポケベルからEメールへ──若者に見る文字コミュニケーションの系譜──」『ファッション環境』第8巻2号.pp.33-39.
  • 富田英典・藤本憲一・岡田朋之・松田美佐・高広伯彦 1997『ポケベル・ケータイ主義!』ジャストシステム
  • 富田英典 1994 『声のオデッセイ』恒星社厚生閣
  • ──── 1997「インティメイト・ストレンジャーの時代──ポケベル・ケータイで結ばれた『近しい他人たち』──」富田・藤本・岡田・松田・高広(1997)pp. 14-31.
  • 郵政省 1998『平成9年度通信利用動向調査』 http://www.mpt.go.jp/pressrelease/japaneses/sonota/980331j903.html

     

    *松田美佐:東京大学社会情報研究所 富田英典:佛教大学社会学部 藤本憲一:武庫川女子大学生活環境学部 羽渕一代:奈良女子大学大学院人間文化研究科博士後期課程 岡田朋之:関西大学総合情報学部
     キーワード:移動体通信、携帯電話、文字通信、マルチメディア、メディア変容
     本研究は、財団法人ハイライフ研究所1997年度助成研究「移動体通信メディアの普及にともなう社会・文化変容の研究」の成果である。

     

    〈付録 質問項目シート〉
    【96-97年分質問項目シート】
    ▽フェイス
    ・性別(調査者で記入)、年齢、身分(学生か社会人か)、居住地
    ・移動体メディアを所有しているか否か
    ▽「何も持っていない」とき
    ・持っていない理由、友人は持っているか? 持っている友人にかけることの有無。
    ・今後なにか持ちたい希望はあるか?
    ▽何らかのメディアを所有しているとき
    ・所持している移動体メディア、事業者、使用歴
    ・所持した理由
    ・一日あたりの発着信数
    ・友人は持っているかどうか
    ・使用する状況
    ・やりとりする文字メッセージあるいは会話の内容
    ・主な利用の相手
    ・「ベル友」経験の有無とその経験内容
    ・所持する前後での生活やコミュニケーション、意識の変化
    ・メディアに縛られている意識の有無
    ・各自のオリジナルな使い方
    ・親は所持していることを知っているか
    ・留守番電話サービスの有無(PHS・携帯電話所持者のみ)
    ・PHSあるいは携帯電話の所持の願望(ポケベル所持者のみ)
    【98年分質問項目シート】
    ▽前回からの削除項目
    ・親は所持していることを知っているかどうか
    ・オリジナルな使い方
    ▽前回への追加項目
    ・文字送受信機能の有無(PHS・携帯電話所有者)
    ・アドレス帳機能使用の有無
    ・メディアを忘れて外出したときに不安感を感じないかどうか
    ・所持しているメディアに関連して身近な相手とケンカになったことがあるかどうか
    ・発信者番号表示をチェックするかどうか
    ・新たに知り合った相手には自宅の電話と携帯電話のどちらの番号を教えるか
    ・携帯電話・PHSを使用するようになって自宅での長電話が減ったかどうか

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