1,目を覚ます


心拍に合わせて、傷が痛む。脈動と痛みの協奏に耐えかねて、意識を闇から引き上げる。さわやかな朝日はないが、リノリウムによる十分な光量が確保された空間。

「よかった…」
アイリーンの、安堵と怒りに満ちた、涙目の微笑みが、まず意識に飛び込んでくる。膝枕の上体のまま、アイリーンは俺を抱きしめる。

「アイリーン…まだ、俺は生きているのか…」
傷の痛みと、アイリーンの温もりで、ようやく生きているという、実感へ変わっていく。

「ちっ、この世の見納めが、そのなものとはな…」
呼吸に血の混じった声が、二人の世界を引き裂く。その声は、怨嗟に満ちたものでなく、解放の喜びに満ちているような感じさえする。
「ムカツクが、悪い光景じゃないな」

「ヒュー…」
「アイリーン…お前の選んだ道だ。後悔はするなよ…」
「…わたし、後悔なんてしないっ。絶対にっ」

アイリーンの答えに、満足したのか、ヒューと呼ばれた男は、安らかな笑顔を見せる。戦士の亡骸に、布をかぶせる。資材のカバーだが、何もしないよりはマシだろう。

そして二人で祈る。ヒューに平穏が訪れるように、ただひたすらに。

1,補修を行う



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