2,チェックしてないならば。
質問の文言を脳内で反芻する。聞きたくもあり、聞たくもない質問。ようやく腹が決まり、口に出そうとした途端、警報が鳴る。
「くっ、敵影捕捉。当機は現在交戦中。下がれ、ドロシィ」
こちらからは、敵影は捕捉ではないものの、ベティを捕らえ損なったビームが、飛んでくる。相手は、ルーマか。しかもそのビーム発射間隔から見て、複数現れたようだ。
「少佐、単機では無理です。」
「ああ、二機でも無理だろうよ。」
普段とはあまりにかけ離れた少佐の返答に、呆然とする俺に、ラーナがたたみかける。
「今から、シークレットカードのコードを送るわ。回線を開いて、暗号コード・デルタ2」
「ラーナっ」
「ごめんなさい。」
>コードデルタ2。データリンク開始。
>BETYとのリンク成功。キーコード受信します
>新規キーコードを、カードDとしてメモリ登録
「ごめんなさい。ドロシィ2。あなたとの約束。守れそうにないわ。」
ラーナの言葉に反応したかのように、通路の隔壁が閉じていく。その声には、諦めの色が浮かんでいるが、顔はなぜか晴れやかだ。
「このコードは…」
アイリーンの呟きに、ラーナは、ただ微笑むだけ。そんな中にでも、モニターにに映るビーム光が、ラーナの顔を照らしていく間隔は、短くなっていく。
「何を言うんだ、ラーナ。扉を開けろっ」
「すまん、ドロシィ2」
アレード少佐の割り込み。先ほど飲み込んだ言葉が、一気に吹き上がる。
「少佐っ、この作戦に命をかけるほどの価値があるのですが?。あなたはこの作戦の真相を知っているのですか?」
「すまん、ドロシィ2」
うつむいて、同じ言葉を繰り返す少佐に、追い打ちをかける言葉が見つからない。
「知って…いたのか?…」
「あなた達は、生き延びて。」
ラーナの力強い声。自らの死がすぐそこに迫っているのに、どうしてそんな顔が出来る。
「ケストナーさん、彼をよろしくね」
ラーナの顔が消える。
>BETYとの通信リンク強制切断
>原因は、リンク先の機能停止と思われます
>BETYのビーコン消滅
>ベータ、チャーリーへ打電。これより、アルファ隊は、DOROSYが指揮を引き継ぐ
返答はない。通信が届かないのか、それとも、誰も生き残ってないのか。急激に、今ここにいる生命体は、自分だけではないか?と言う感覚に捕らわれ、泣き出しそうになるほど、怯えている自分に気づく。
後席から救いの手が伸びてくる。暖かく、柔らかな手。1人ではなかった。彼女がいる。生き残るためにも、彼女を救うにも、奴らに処罰の口実を与えるわけにはいかない。
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