1,ジーンの話しを聞く
「先ほども言ったが、この研究カーディナルは、元々、無人MSを作るための施設だった。そのため人工知能の権威である、クレイマンが所長に抜擢された。RX−78に搭載された教育型コンピューターも、ここの成果の一つだ。」
近くで見るジーンは、少年と言うよりも、中性的な印象を受ける。ジーンという名前の響きと、顔立ちが、記憶のどこかに引っかかったが、記憶にたどり着けそうには無い。
「RXシリーズは、連邦軍初のMSのハズだ…それに登載されていると言う事は…」
「さすが特務部隊。頭の回転も速いね。その通り、MSそのものの製造はできても、パイロットの養成は間に合わないと判断された。その為に、MS製造のV計画と平行して、無人機の開発も進められていたというわけさ。パイロット補助コンピューターはその副産物ってわけ。」
確かに、本来ならば、動かすことで手一杯の俺たち、連邦軍のパイロットが、歴戦のジオンパイロットに引けを取らないのは、優れた制御コンピューターのおかげだろう。
「ところがだ、MSの通常機動制御でさえ、従来のシリコンチップでは役不足。ニューロチップを使ってようやく。と言うレベルでね。もちろん、最高水準のチップを使えば可能だが、それでは使い捨て同然に消費される無人機のコンセプトに反する。君ならどうするね?」
士官学校で、こんな物言いをする教官がいた気がする。旧世紀の戦史に残る戦闘を題材にした戦術の講義で、「君がナポレオンだったら、どうするかね」そんな口癖だった。口調と顔は思い出せるが、名前まで思い出せない。
「パイロットの養成を急ぐさ」
「素敵な答えだ。それだったら、こんな事件は、起こらなかったろうね。軍は、安価でニューロチップよりも高性能なチップの開発に着手した。第三のチップ、旧世紀から倫理規定で、それなりに規制されていたが、そんなモノは軍、とくに戦時下にあっては、ママのお小言以下だったろうさ。」
「まさか…バイオ…コンピューターか」
「ご明察。当初は、動物。犬や猿を使用するはずだったが、脳の解析は、人間のモノが一番すすんでいてね。だが、さすがの軍も、人間の脳を使うわけには行かなかった。」
脳みそを直接ハンマーで殴られたような衝撃とともに、ある考えが脳裏に浮かぶ。その考えを否定して欲しくて、思わず口にする。
1,ジーンに問う
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