1,ジーンの視線に耐える。
「ここまでは言ってしまっても構わないだろう。君たちが、コールサインと思っている機体名。あれは、素体となったバイオドールの名称だ。MS戦術、戦闘データ、それらを脳に焼き込み、機体に生体コンピューターとして組み込んだ。と言うわけさ。」
思わず、振り返りドロシィを見る。DOROSYは着座姿勢のまま、ただ座っている。意志や人格を持っているとは到底思えない。だが、どこか俺の視線を避け、うつむいているように感じられる。ジーンは、たたみかけるように続ける。
「そして人間は思いついた。無人MSを作らずとも、バイオドールをバイオコンピューターに作り替えなくとも、バイオドールをそのままパイロットにすればいい。例の機械で、思考とデータを焼き込めば、大量生産できる。そう気がついたのさ」
「そんな訳で、本来なら脳以外は、ゴミ扱いだった僕たちだけど、肉体の方も重要視されるようになった。激しいGに耐えられ、高い目視能力と、反応・反射速度、などなど、遺伝子レベルから強化され、ドーピングによる強化にも耐えられるような体質を与えられた…僕は、情報処理能力を重視して作られたタイプだが、それでも反応速度や筋力は、君より強いだろう」
ジーンの腕は、どちらかと言えば細い方に入る。にわかには信じがたい話しだ。
ジーンは、突如、何かに越えきれなくなり、低い笑い声を上げた。自嘲気味の、恐怖と怒りと悲しみに耐えかね、泣き叫ぶ事で、それらを振り払おうとする、哀れな叫び。
「俺たちが犠牲にしてきた命は無駄だったというのか…」
「一個人としては…そうだろうな。大局的には、意味があるのかも知れない。記録には残らないだろうが、今日この日は確実にターニングポイントだったよ…良い方に転んだのか、悪い方に転んだのかは分からないがね」
体中から、力が抜けていく。バイオドールも、俺たちも、ただの操り人形に過ぎず、誰かのシナリオ通りに動いていたわけだ。
「俺たちは、戦わなくてはならなかったのか?」
「我々は、所詮”人”に過ぎなかった。と言う事さ」
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