4,なにもしない


「やめて、ジーンっ」
アイリーンは既にM6901の銃口をジーンに向けている。重い拳銃にふらつく様子もなく、教本に載せたいようなな綺麗な射撃姿勢。

「お前は、なぜ戻ってきた?。お前に、その覚悟があるのか?。」
ジーンは構わず、ゆっくりと銃を抜き、構える。ジーンもまた、絵に描いたような美しい姿勢で狙いを付ける。銃口は、俺だ。

「覚悟があるなら、答えろ、………」
アイリーンの名を呼ぼうとしたであろうジーンは、そのまま崩れ落ちた。

「私は…私は、アイリーン。アイリーン・ケストナーよ…」
崩れ落ちるアイリーンに、なぜか近寄る事が出来なかった。

「自分の道を決めたのなら、自信を持って生きなさい」
ハニーブロンドの長髪の女性の、涼やかな怒声。アイリーンは疑うことなく、その女性の胸に顔を沈める。所長室で、モニター越しに出会った所員。Gセクションチーフのジェーン・ラディウスその人だ。

「ジェーン・ラディウスGセクションチーフですね。自分は…」
「ええ、そうです。所長室では失礼しました、中尉。」

機先を制せられ、二の句が継げなくなる。まるで、恋人の実家に初めて来たような感覚だ。何とも言えない沈黙が、辺りに重くのしかかる。

「全て…終わりましたね」
ジェーンは、誰に言う出もなく呟く。それは、アイリーンに語っているようでもあり、俺に問いかけているようでもあり、自分自身に言い聞かせているようでもある。

「一つだけ…聞かせてくれ。俺は、どうすればいい?」
「あなたは、どうするおつもりですか?。あなたは知りすぎてしまった…」

そう言ったジェーンを、衝撃波が連れ去って行った。俺は、衝撃波で弾き飛ばされながら、霧散するジェーンと、ドロシィのビームライフルに貫かれるヒルダを眺めていた。

マーコス少佐が言ったとおり、ソーンの動きは、そのまま教則本そのものだった。わざと背を向け誘っていると言う状況になんの疑いも持たないソーンは、所詮、肉で出来た機械と言うことか。

反面、自らの死を恐れず、任務だけは全うするの姿勢に、恐怖を感じられずにはいられなかったな。もしソーンのような、思考パターンで一般生活を送ったならば、どんな事態になるだろうか?。

答えは愚か、想像すらする暇もなく、圧倒的な力に押さえつけられて、俺は意識を闇に沈めた。

1,目を覚ます



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