1,イリスの視線の先を追う。


視線の先には、ピンクの光線に貫かれるRGM−79(G)。おそらくは、ヒルダ。ソーンの機体だろう。右手射界で、もっとも挙動に時間が掛かる、ドロシィの右後方。

「本当に、教科書通りの動きだったな…」

MSは人間ではない。腕がどの向きにあったとしても、射撃に支障はないし、後方には、後方警戒用のカメラやセンサーがあり、厳密な死角とはなりえない。右手に武器を持っている場合、右斜め後方に銃口を向けるには、2ステップ必要となる。

ソーン…バイオドールなら、そこをついてくる。だが、普通の人間ならともかく、バイオドールの反応速度では、普通に撃っても回避されるのがオチだ。

だから、機械的な隙をついた。ドロシィの背後を通るとき、普通に移動したのでは、攻撃を喰らう危険性が高い。必ず、スラスターを使って跳躍し、攻撃ポジションを取るはずだ。そうなれば、着地制御のタメに脚部のダンパーが沈み込む。沈み込んで、衝撃を吸収しきるまで、完全な無力状態。

左手に持たせたビームライフルは、あらかじめ右後方に向けてあった。あとは撃つだけだ。

>防御プロクラムC181終了。
>通常警戒モードに移行します。

「ごくろうさん、ドロシィ」

ドロシィの労をねぎらった途端、クスリとジェーンが笑う。本心からの笑み。一瞬、ムッとしたが、すぐに微笑みの対象が俺でないと分かった。

「なるほどね、さぁイリス。言わなくちゃいけない事があるでしょう」
母親が諭すような声と、親友が告白するのを見守る顔で、ジェーンがアイリーンを促す。

「自信を持ちなさいとは言えないけれど…イリス、あなたは生まれたときから、あなただったの。誰のコピーでもなく、あなた自身だったのよ。さぁ、イリス。今、言わなくちゃいけない事があるでしょう」

アイリーンは、深く息を吸い、覚悟を決めて、語り出した。

「私…アイリーンの代わりでよかったの…アイリーンのフリをしていれば、人間になれたから…でも、あなたには…あなただけには、私自身を見て欲しかったの…バカよね、私…アイリーンに嫉妬していたのよ…ごめんなさい。もっと速く言いたかったのだけど…私がアイリーンでないと知ったら…私がドールだと知ったら…あなたは…そう考えると怖くて…」

一気にまくしたて、全てをはき出すと、アイリーンは崩れ落ちた。うなだれるアイリーン…いや、イリスを見て思う。彼女もまた猜疑心を組み込まれた一人だったのだ。

「確かに、バカだよ…俺は、アイリーンの事なんて、なにも知らないんだぜ…」
手を差し伸べる。俺のかけがえ無い人に…
「俺は、君の事しか知らない。君の名が、何であっても関係ない。俺が見ているのは、君だけだよ」

駆け寄るイリスを抱き留める。小さく、か細いイリスの腕が、ときに誰よりも大きく温かい事を俺は知っている。この小さな手に、幾たびすくい上げられた事だろうか。

チェック
部隊の集合写真を持っているか。

1,集合写真を持っている。
2,持っていない。



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