1,アイリーンを紹介する
「ああ、途中で可愛いハイカーをピックアップしたよ」
「そいつはいいな。俺たちにも紹介してくれよ」
「OK、アイリーン・ケストナー嬢だ。」
「はじめまして、お嬢さん。俺はカミカゼ、後ろのデカブツが、タコだ。よろしくな」
おどけた二人の雰囲気にアイリーンもうち解けた表情を見せる。
「そのバンダナの文字、日本語よね?。スミヤって言う日本人のスタッフがいてね。私も日本語を少し習ったの」
何気ない、そしてあまり意味のない会話。どこかの大学の廊下で立ち話をしているような錯覚に陥る。
休憩時間の歓談を終了させるのは、始業ベルではなく、警報機だと言うことが、ここが戦場であったことを思い出させた。
キャサリンが俺たちを押しのけるように前に出る。強引に押されたせいで、スタビライザーが悲鳴を上げる。転倒しなかったのが奇跡に近い。ドロシィが元いた場所を高出力ビームが通り抜けていく。行きがけの駄賃に、キャサリンのシールドと左腕をもぎ取って。
しかし、それに臆することなく、キャサリンは敵に向かってバーニアを吹かす。まさにカミカゼ。去り際、プロトビームライフルを俺たちに投げつけて。
「ここは、俺たちがくい止める。さっさと行けっ」
キャサリンはすでにビームを発射したであろう、ルーマと組み合っている。どうこで、どうしたのか、キャサリンにはビームサーベルすらもない完全な丸腰状態。
「バカヤロウ。片腕で、丸腰のお前らをおいていけるかよ」
まるで、デートの邪魔をしてすまなかった、とでも言うような笑顔でタコが微笑む。
「お嬢さんだけは、守り抜けよ。」
キャサリンの首が、真後ろを向き、こちらに向けて、頭部バルカンを発射する。一瞬でも、親友を疑った俺がバカだった。いや、疑ったワケじゃない。射線から回避しようとするのは、パイロットの条件反射だ。だが、理由はどうあれ、そのせいで間に合わなかったのは、事実だ。
キャサリンが撃ったのは、隔壁の受信機。回避運動をしなくても、間に合わなかったかも知れないが、回避をしてしまった事実は、俺の中で重くのしかかる。肩と背に伝わる暖かい温もり。アイリーンの存在だけが、かろうじて俺に正気を保たさせてくれる。
隔壁が閉じる音が、俺たちを檻へ追い立てるように、重く響き渡る。
キャサリンが使用していたプロトビームライフルは、銃身が湾曲していて使用できないが、補助バッテリーの電源は使用できる。実験区画から、プロトビームライフルを持ってきている場合、バッテリーを移し替えることが出来る。
1,所長室に向かう
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