1,部屋を調べる。


ポール・クレイマンが、研究者として働く場所は、研究区画にあるとするならば、この部屋は、所長としての雑務をこなす場所だ。

目につくのは、中身をほとんど吐きもどした書棚と、成金趣味の調度品。そして、大型のデスクにマウントされた端末。

床に散らばったファイルを一つ一つ調べている余裕はない。財務局なら、垂涎のシロモノも混じっているかも知れないが、ケストナー博士が、そんなものをこの非常事態に捜しているとは思えない。

平時ならば、横領の証拠を掴むために…と考えたろうが…いや、今は探偵ごっこをしている場合ではない。

入り口と向かい合うように設置された大型デスク。映画のセットでしか見たことがないような、重厚なシロモノ。萎縮する所員、視線を上げることなく会話する所長。そんなチープな光景が脳裏を過ぎる。

あまりに安易な自分に苦笑しながら、その重々しい雰囲気を台無しにしている、PCに歩み寄る。

「このターミナルは、メインコンピューターと直結されているはずよ」
アイリーンが慣れた手つきで、キーボードに触れるとモニターが点灯する。省電力モードになっていたのか。モニターには、ただ「▽カードを入れて下さい▽」とだけ表示されている。セキュリティチェックとすれば、クレイマン所長のIDカードか、専用のカードキーが必要なはずだ。

1,改めてカードキーを探す。
2,手持ちのカードを試してみる。



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