水中では、陽光は100メートル程度も届かず、映画グラン・ブルーでも扱われたように、いわば、ブルーアウトとでも言うべき、現象が起こる。そのため、主な戦闘深度は50程度である。夜間では、さらに浅い深度になる。
水中で有視界戦闘をする利点は、実はあまりない。
また、水圧があるため、敵の撃破にも十分な安全距離が必要である。近距離で不用意に撃破すれば、その爆発による水圧で、自機も破壊されかねない。さらに、高機動のMSを追いかけるには魚雷では役不足であり、爆圧による相打ちを考慮しつつ、接近戦を行うと言う、奇妙な戦闘が水中戦である。
爆発させず、相手の戦闘力を奪う。そんな兵器を求め、ジオン、連邦双方で、様々な実験兵器が導入された。
ジオンで定着したのは、クローを装備させることである。携行武装、剣や斧は、水中では抵抗が大きすぎ、振り回すことが出来ない。初期のMS06Mには、ナイフを携行させたが、突くことしか有効打はないため、最初から、腕をクロー化したのである。
また、水中という冷却効率から、地上よりも高出力のジェネレーターを搭載できた事により、ビーム兵器を搭載し、運用に柔軟性を持たせたのである。
水中に電子機器の固まりであるMSを持ち込むのであるから、どんな小さなダメージでも、装甲を抜いてしまえばいい。後は、水が破壊してくれる。と考えたのが、連邦である。取りまわしやすいナイフに回転刃を取り付けた、高周波ブレードとは行かないまでも、小型チェーンソーとも言えるバズソーや、先端部から電撃を行える槍などである。
電撃は、爆発を伴わず、内部の機械だけを破壊できるので、ビーム兵器を使用可能なほどの小型高出力ジェネレーター技術を持つ連邦軍に特に好まれ、EZ9、アクアコマンドともに採用されている。
対して、ジオンは洋上艦の撃破と言う目的から、クローにも高威力が求められた。ヒマラヤ級の空母に、針で穴をあけても無意味だからである。ここでも、ジオンは対艦、連邦は対MSと言う目的意識の差が現れている。