ジェフドはといえば、いっそ今度はかつらで髪を隠そうかと真剣に考え
「何色がいいかな。」
と、テイトに相談して、また叱られた。
「女の格好するより、まともだろう!」
こうジェフドに言い返された時には、咄嗟にテイトは頭が痛くなった。
(殿下なら、やりかねない……)
どこかに服を隠そうか、と思ったテイトは、その考えを捨てた。
ジェフドは、前にもまして、竪琴の練習に熱心になった。
読みふけっていた本は、よく詠じられる詩を覚えるためだった。
何のことはない。どうすれば、本物らしく見えるか、研究していただけのことだ。
別の方面へその熱心さを向けてもらいたいのだが、ジェフドにその気はないらしい。
意外に便利なことも気が付いた。
どこにいても怪しまれないし、咎められることもない。
はっきり言えば、どんな場所でも出入り自由で、耳に入る話は城では聞けないものばかりだ。
ついでにいえば、お小遣いには充分な収入もできる。
まさか、やみつきになるとはルドモットも考えていなかった。
「もう少し大人になって、結婚でもしたら、さすがに、やめるだろう。」
これも実は甘かった。
無理のない話ではあるが…。
その後も長く、ジェフドの吟遊詩人の真似は続く。
彼にとって、こんなに、実益と趣味を兼ねた楽しいものはない。
さすがに都から離れることはなかったが、城を空ける日が多くなった。
不思議に、人が詩人と信じて疑わないことが、拍車をかけたらしい。
さすがに、ルドモットが、
(これは、いけない)
と、思ったときは、すでに遅かった。
いや、無理にやめさせておかないばかりに、とんでもないことになった。
少しくらい遊ぶ時間があっても、という親心で甘やかした結果に途方にくれた。
さらに、ジェフドが成長した時、真似では済まなくなっていたのである。
王子様は吟遊詩人!?<完>
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