興味のないことには飽きっぽくても、好きなものには夢中になるジェフドが、簡単に諦めるとは思えない。
「あの奇抜な発想は、誰にもできぬ。ジェフドの才能はそういうところだ。」
器が大きいことは、テイトも感じている。
おとなしそうに思われがちだが、あくまで容姿の上だけだ。
「無茶をせぬよう、気をつけてくれれば、今は良い。」
これ以上の無茶とは、何を指すのか、テイトには考えられない。
ジェフドはといえば、いっそ今度はかつらで髪を隠そうかと真剣に考え
「何色がいいかな。」
と、テイトに相談して、また叱られた。
「女の格好するより、まともだろう!」
こうジェフドに言い返された時には、咄嗟にテイトは頭が痛くなった。
(殿下なら、やりかねない……)
どこかに服を隠そうか、と思ったテイトは、その考えを捨てた。
ジェフドは、前にもまして、竪琴の練習に熱心になった。
読みふけっていた本は、よく詠じられる詩を覚えるためだった。
何のことはない。どうすれば、本物らしく見えるか、研究していただけのことだ。
別の方面へその熱心さを向けてもらいたいのだが、ジェフドにその気はないらしい。
意外にに便利なことも気が付いた。
どこにいても怪しまれないし、咎められることもない。
はっきり言えば、どんな場所でも出入り自由で、耳に入る話は城では聞けないものばかりだ。
ついでにいえば、お小遣いには充分な収入もできる。
まさか、やみつきになるとはルドモットも考えていなかった。
「もう少し大人になって、結婚でもしたら、さすがに、やめるだろう。」
これも実は甘かった。
無理のない話ではあるが…。