ジェフドとソファーに並んで座り、話を始める。
「いかがでしたの。」
「問題はどうやって、テイトにナーサの気持ちに気付かせるか、だな。」
ナーサが黙って見つめているだけでは、伝わらない。
この際、本人から直接口に出してもらうのが、一番効果的だ。
「女から騎士に告白しろと言うの!?」
普通、求婚は男からするものだ。
まして、控えめなナーサにできようものか。
「私からでも構わないが…。テイトが信用してくれるかどうか。」
身近な女性を、見繕ってきたと思われかねない。
きっとテイトは、
「陛下が無理に勧めたのであれば、気になさらないでください。」
そのくらい言ってしまう。
それでは、却ってナーサを傷つけてしまう。
お互い引き合わせた方が、手っ取り早いかもしれない。
「頭から自分の妻になる女性はいないと思い込んでるからなあ。」
サラティーヌは、ジェフドに寄り添うようにして、言った。
「当分、戦はないでしょうね?」
「カルトアにそんな余力はないよ。敵さえ来なければ、討って出ないさ。」
サラティーヌは心配そうな声を出す。
「あの時は、国を一つにまとめるためにも、あなたが指揮を執るしかなかった。でも、次は?先陣を任せるとしたら、きっとテイトだわ。だとしたら…」
サラティーヌもテイトが結婚を考えない理由に思いあたったらしい。
何より、忠義を優先する騎士だ。
「本当にお役目大事の人だもの。妬けるくらいに。」
「サラ…。」
「わかってるわ。あなたにとっても大切だということ。」
ジェフドが臣下というより、兄とも友人とも思って、信頼している。
ただ、頭の固いテイトが同じように考えているかは別として。
「テイトがナーサの想いに応えてくれれば、余所見はしない。それは保障する。」
「そうね。誰かと違って、黙って遊びに行くような性格でもないようですし。」
サラティーヌの視線に合い、ジェフドは、つい、目を逸らした。
「視察と言ってくれないか。」
今は控えているとはいえ、忍び歩きが趣味のジェフドにとっては、きつい一言だ。
当分は城から動けない。
テイトに余計な負担をかけてしまうことは、極力避けなければ。
ジェフドなりに、思案を巡らせるのであった。
テイトは、よもや自分の知らない間に、そんな話が持ち上がっているとは露知らず、精勤の日々である。
いくら口数が多くないと言っても、顔見知りであれば話もする。
ある晴れた日、庭園の見回り中にテイトは、ナーサと鉢合わせた。
別に珍しいことではない。
ナーサは平静を保とうと必死なのだが、テイトは一向に気付く気配がない。
「あなたに縁談が来たせいか、陛下が私にもと、やけに熱心で困ります。」
とんでもない話題の切り出し方だ。
ナーサは、思わず涙ぐんでしまった。
「やはり、私ではご迷惑なのですね…。」
急ぎ足で、その場を立ち去ってしまった。
テイトは呆然としてしまう。
一体、何がいけなかったのか。
気晴らしに、散歩に出ていたジェフドがナーサの姿を見かけた。
ただならぬ様子の、少し先にはテイトがいるではないか。