ぶらり日光3

あ か や し お3


   遠 州 屋 薬 局



       平野 正


    平成15年4月27日
           鳴虫山の「あかやしお」
春の行事の締めくくりは桜の後に日光鳴虫山のアカヤシオツツジを見に行くことにしている。
湿った気流が山に当り良く雨を降らすので鳴虫山の名が付いた。
1100mくらいの切り立った山で今年は登れるか不安を感じた。
急激に登り、下りは落ちるように木につかまりながら下りて来る。

    目線が高いので急には見えない。
8ヶ月振りの東武鉄道の乗車であるがこの時期
には沿線に此れが有ればアカヤシオが見られる
と目安になるものがある。白、赤の葉(総苞片)を
頂いたハナミズキ、土手や川原の黄色い菜の花
と水を張った田圃だ。
今日はそれらと伴に田園風景が始まると野の八
重桜、農家の庭先の紫の花ズオウ、生垣の下や
あぜ道の白ピンクの芝桜、そして畑には麦緑と若
若しい豊富な色彩に感激して見入った。
ハナミズキ等にアカヤシオの目安として気を奪わ
れて去年はその他の花を目にしても何も感じなか
った。
今年は日光観光協会からアカヤシオは咲き始め
ましたと情報を得ていたので気持ちに余裕があり
車窓からの色彩を充分感じられたのだろう。
個人の好みで申し訳ないが八重桜の濃いピンク
の花と黄緑色の葉の組み合わせには如何しても
馴染めない。私の感覚には合わない。
下今市では咲いていたヤマツツジが日光に近ずくにつれ直ぐに花開く色彩のある蕾から堅い
未熟な蕾と変わってきた。僅かな傾斜による温度差が植物に影響を与えている。
さて日光駅からは桜が目安となる。街のソメイヨシノは葉桜になっていたが山に見える山桜
は満開だ。これらもアカヤシオが咲き始めの美しい色合いを見せているだろうと期待させる。

道々、家庭に咲くシャクナゲ、すみれ、ミツバツツジを楽しみながら好天の下、登山口に着く。
他のグループが準備体操をしているのに混じって体をほぐした。最初からの急坂をゆるりと登
りはじめた。

             神主山から男体山、女峰山、赤薙山を望む(男体、女峰は雲の中)
6年連続のあかやしお登山なので目標とそれに至る道程は理解している。
中腹の神主山(832m)に着く。ここは唯ひとつ見晴らしの利く所で男体山、女峰山、赤薙山が望める。去年よりは2週間遅いので、さすがに雪は少ない。
神主山を越え3回急なアップダウンを繰り返さない
と「あかやしお」は現れない。
未だと思っている道の中央にアカヤシオの花が4つ
寂しく表れた。ここで花が見られるなら充分期待を持
てると歩を進めた。
如何いうわけだか解らないが頂上に近づくほど花が
多くなる。この高度だと日当たりによるのか?
またあの乳白色の綺麗な花に会えたとうれしくなる。
急登坂も花を見た興奮で楽になる。
何とも言えぬ濃いピンクと乳白色の2種類の花に目を
奪われ登山道の南の崖に吸い寄せられる。
花を見上げる位置から遥かに見下ろす深い谷底まで
所々にアカヤシオがある。
アカヤシオが無ければ殺風景な山だがこの時期は
山ツツジの蕾も沢山あり、ムラサキヤシオと思われる
蕾もあり興奮させる。
あかやしおは花が咲いている内は葉が出ない。山
ツツジの長刀状の若緑の小さな芽も私達に力を与え
てくれる。
      現れ始めた「あかやしお」
      かたくり(花弁に花の模様がある)        かたくりの葉は美しくない
以前御前山で感激したカタクリも道端にあり本当にこの時期の鳴虫山は浮世を忘れさせて
くれる。
8年前御岳山でカタクリを見た時名札にスプリング エフェメラルと書かれていて、それがカタク
リの名称かと思っていた。天然のカタクリは探し当てないと無いくらい貴重でカタクリのそよ風
に揺れる様は愛らしく御前山では小さな屏風様の風よけを持参し腹ばいで1時間もシャッター
チャンスを待つ人もいた。「春の短い命」などと胸にしまっておきたい名にも感動した。この噺を
日光を田舎に持つ女性にしたところ私の感動とはまるっきり違う答えが返ってきた。
カタクリは御浸しにすると美味しいのよね。

私の胸に秘めた感動は奥歯で粉々にされてしまった。

昔は野原にカタクリは豊富にあり摘んで食べたのは日常の事だったらしい。
最近朝日新聞夕刊の「花折々」でスプリング エフェメラルと呼ばれる「春の短命植物」という
くくりがありカタクリの固有名詞でない事を知った。

段段アカヤシオが密集してきた。
年々私達に登山を躊躇させる山だがこの美しさを見たらチャレンジしないわけにはいかない。

しろやしお

16年あかやしお


14年あかやしお

あかやしお1

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