平成11年8月12日(木)〜
缺けてゆく夜空 その四 ノート
結局は、五階の一課二課だけが、埼玉の工場に移転という形らしい。
三月一日金曜、浅草橋で送別会兼同窓会。支社へ転勤となった女性は、耳にやさしいさんより半年遅れの中途入社。珠算の段持ちで銀行勤めをしていたが、筆跡がユニークすぎて転職しあの出版社に勤めた、という話だ。めざましいぐらい有能で(世辞ではない。あの会社にはそういう若い女性が異様に多かった。ある時期、ある場所に偶然集中したと思えるほど。実は客観的に見ると間宮は無能で、相対的に感心せざるをえなかったのかもしれない)、それに広めのおでこのかわいい娘だった。
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4月行列の新入社員の歓迎会を7時より行います。又同時に計良氏が残念ながら退職しその送別会と後任の□□係長の歓迎会も兼ねて行いますので、宜しくお願い致します。 日 4月22日(月) 時間 7時 場所 □□□ (TEL付き地図、略) 幹事 早川 |
なお、四月十九日飲み会、四月二十二日ちらしの幹事、ともに老若どちらの早川さんであったか、はっきりしない。
芝君は前年の秋には退職していた。
(もう少し付け足すと、間宮は全く職種の異なる部署にだが、数年してから、歩いて通えるこのバイト先に再び勤めている。夕日君と思いがけず再会した。彼は委託社員に出世しており、電算室所属で颯爽としていた。ある社員に、昔の彼はこういう青年だったという話をした。その社員が夕日君に話したそうだが、夕日君はトイレ窓から見た夕焼けのことは覚えていないと言っていたという。東京に復帰したらしく食堂で課長も見かけたが、頭を下げてもかつての部下と気づいてくれなかった。埼玉に行ったまま、またはちりぢりになったのだろう、他の人とは会えなかった)
佳子さんは、実は辞めるつもりはなかったのかもしれない。佳子さんはだれの子も宿していなかった、なにかしら遊んだり夜の副業で忙しかったりして、久しぶりに出てきたら自分の職場はもう埼玉に移ってしまった後だった、ということまであったっていい。
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[35 再退職 了]