2,所員かも知れない、人物照会を優先する。
ドロシィに可能な限りデータを取らせ、所員データと照合させる。それと同時に、外部スピーカーのスイッチを入れ、謎の人物に語りかける。
「我々は、救出部隊のモノです。身分証を提示して下さい。」
しばらく使って無かったせいか、ハウリングがかかって聞き取りにくいモノの、通じないほどではない。正体不明の男は、意外そうな顔を浮かべている。そして沈黙。体感時間は五分以上だが、実際は一分と経ってないだろう。もう一度呼びかける為に、息を吸い込んだところで、照合結果が出る。
>データ内に該当人物無し
あれが、敵。吸い込んだ息を吐き出すことなく、システムを索敵から、戦闘モードに切り替え、標的を捕捉する。
「悪く思うなよ」
モビルスーツの銃口が向けられているにもかかわらず、男に動きはない。怯えて動けないワケじゃない。そう、さながら、怯えて威嚇している野良猫をなだめるような目つきで、俺を見ている。いい知れない恐怖感を感じ、反射的にトリガーを引いた。
弾丸の代わりに飛び出したのは、警報。
>警告 センサー機能障害発生。全センサー不能。攻撃は不可能。
モニターさえも揺らぐ、強烈な障害。波打つモニター越しに、悠然と去る男の後ろ姿を黙って見送るしかなかった。男が隔壁の向こうに消えると同時に、センサーの障害も消える。どんな手品を使ったのか、見当も付かない。
格闘に持ち込めば、攻撃は出来たはずだ。攻撃できなかったのではない、攻撃したくなかった。だが、恐怖も感じた、やらなければ、やられると言う恐怖。敬愛と恐怖のせめぎあいと言う、奇妙な感覚。畏敬とでも言うのか。
戦場で、混乱するような事はいくつも体験したが、脳が理解を拒絶する事は初めてだ。今、頭を振れば干涸らびた脳味噌が、耳から粉末になって出てきそうだ。
パイロットキットから、鎮静剤を取りだし注射する。シートに身体を預け、薬液が血液に溶け込むのを待つ。暴れていた心臓がようやく落ち着きを取り戻すと、自然と溜め息が出る。
謎の男の映像をリピートし、データとして登録する。次にあったときは、即時対応できるだろう。攻撃できるかどうかは疑問だが。男の顔をアップで見る。二枚目ではないが、不思議な威厳を放つ男。繰り返すうちに、男が去り際に何かを呟いている事に気が付いた。
レメゲトン
ドロシィが読唇データから解析したのは、謎の言葉。データバンクによれば、ソロモンの小鍵とも呼ばれる魔法書とある。分からない。なんの関連があるのだろう、なんの関連もないのかも知れない。
分からないことは考えない方が良い。所員を救出し、バイオドールを破壊し、メインコンピューターを制圧する。それだけに集中しよう。だか、忘れない。頭の隅に追いやるだけだ。
キーワード:レメゲトン、ソロモンの小鍵を登録(シートにメモしておくこと)
1,南の隔壁を抜けて、メカドールのいるCエレベータを目指す。
2.北の隔壁へ向かい、初期侵入口に戻る。
3.当初の予定通り、西へ向かう。
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