1,記録している


俺は、ニュータイプなんかじゃない。だが、一つ分かった事がある。ジーンが長々と語った理由。反乱を起こしたバイオドールだけに、与えられたもの正体。そして、ジーンが欲している一言を。

「なぁ、ジーン。知恵とは、疑う事なんじゃないか。って思った事はないか?」
ジーンの怪訝そうな顔。情報型バイオドールであるジーンは、人間の天才以上のIQを与えられたハズだ。そのジーンが、しがない陸軍中尉の俺の質問の真意を測りかね、首をひねる姿は滑稽でもある。

「この作戦で思ったよ。命令通りにしか動かないなら、俺はメカドールとどう違うのかってね。」
まだ、俺の真意を測りかね、ジーンの眉間に皺が深く刻まれる。

「イヴは禁断の実を口にして、知恵を得て、神から離れた。今なら分かる。アダムとイヴが、神から離れていった理由。二人は、神を疑ったんだよ。」
呆然とするジーンを尻目に、アイリーンの顔は険しくなっていた。

「知識を持つ事で、異なる意見を比較し、より正しいと信じる方を選ぶ事が出来る。だが、それは言い換えれば、どちらかが正しくないかも知れないと、疑う事だ。そうだろ?、ジーン。」

「イヴは、蛇の誘惑によって。君は、所長によって無理矢理…知恵を、疑う事を知った君は…君も人間だ、ジーン」

ジーンが心より欲した言葉。誰かに言って欲しくて、こうまで長々と語ったのだろう。呆然としたままのジーンは、スイッチが切れた人形のように動かない。しばらくして、俺の言葉を飲み込む事が出来たのか、突如として、狂ったように声をあげて笑い出した。

「君は…愉快な男だ。君を見ていると、人は分かり合えるかも知れないと思い始めたよ。だが…人とは悲しい生き物だ。分かり合ったとしても、自己の存在をかけて殺し合わなければならない。」

ジーンは、ホルスターのフタを開く。
「君に、個人的な恨みはないのだが…」
それに呼応して、背後のアイリーンにも動きがある。所長室で見つけた、M6901をアイリーンに手渡した事を思い出す。背中越しに、感じる覇気が、俺からイヤな汗を搾り取る。腰に付けた気休めの拳銃が、異常に重く感じた。

チェック
アイリーンの指輪を持っているか?

1,持っているならば

持っていないならば

2、ジーンを撃つ
3、アイリーンを撃つ
4,なにもしない



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