1,アイリーンについていく


所長室の扉を抜けると、トゲのある粘着質をおもわせる臭気が鼻腔に突き刺さる。ここでは、もう当たり前になってしまった血の臭い。アイリーンは、思い切り吸い込んでしまったのだろう、扉のところでむせかえっている。

アイリーンの背をさすり、落ち着くのと、換気が進むのを待つ。所長のポール・クレイマンは、実験区画で死んでいた。とすれば、この血の主は、所長以外で、ここへ入り込める人間と言うことになる。床一面に広がった血の海は、心臓が最後の一滴まで吐き出した証明だろう。

荒れ果てた部屋の中、自らの血の海で溺れた男の正体を確かめる。
「父さん・・・」
確認を取るまでもなく、彼の身元は判明した。ウィリアム・ケストナー。バイオドール開発主任。ここの施設のナンバー2。

彼はなぜ殺されたのだろう。いや、殺されなければならなかったのだろうか?。この施設を占拠しているのは、バイオドール。だとすれば、バイオドールの凶行だろう。

バイオドールの生みの親とも言える、ケストナー博士を殺す理由。

フランケンシュタインコンプレックスと言う事もあり得る。だとすれば、何らかの衝撃的な出来事がバイオドールを襲ったと言うことになる。だが、錯乱と言うには理性的な行動をしているし、冷静と言うには、論理性にかける行動もしている。だが、思考力に欠陥があるとは思えない。

大型機械工作区画で、バイオドールと対峙してから、ずっと付きまとう違和感。いい知れない違和感が、頭の中で大きくなる。

違和感と言えば、なぜケストナー博士は仰向けで倒れている?。銃創をみれば、背後から撃たれたのは間違いない。コレだけ撃ち込まれたなら、手は伸ばせても、寝返りを打つのは無理だろう。

部屋の荒れ方は、確実に何かを物色した跡だが、それほど乱雑に探した犯人ならば、ケストナー博士ももっと手荒に扱っているはずだ。成果は期待してなかったが、確認のためにケストナー博士の衣服を探ってみる。何かを持っていたとしても、もちされれた跡だろう。

意に反して手応えがある。スペクター&ワイト社のM6906。命中精度、パンチ力ともにトップクラスの拳銃だ。コンパクトボディではあるが、科学者が護身用に持つには、でかすぎる。バレル内部に埃が溜まった様子もなく、少し溜まった煤が、実射されていたことを物語っている。

すこし悩んだが、このM6906をアイリーンに渡す。女性が持つには巨大すぎるが、実用的な形見であることには違いない。その無骨な形見を、アイリーンは愛おしそうに抱きしめた。

おそらく、この部屋を物色していたのは、ケストナー博士だろう。物色の最中に、何者かに殺害され、その犯人は、ケストナー博士を持ち物を調べた。それが、一番、無難な筋書きだろうか?。

ケストナー博士、犯人ともに、目的のモノを見つけたかどうかは不明だ。ケストナー博士は、何を求めてこの部屋に来たのか?。それとも、連れて来れたのか?。

1,部屋を調べる。
2,ケストナー博士の私室へ行く



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