演奏行為と確率的な選択行為
- ライブ [ undirected/eight ]
- インスタレーション [ undirected/four ]
- christophe charles @神戸 xebec hall
久しぶりのジーベックでのライブなわけだけれど荒んだ感を持ったのは、この施設のその後の経緯を中途半端にしか知らないからだろうか。
彼の音源は様々なリミックスや[ undirected ]、[ dok ]で聴いているが、最近の[ undirected/dok ]や[ undirected 1992-2002 ]などは知らない。[ undirected ]で聴いたフィールドレコーディングされた要素の加工と組み合わせと、microstoriaの[ reprovisers:japan ]での楽曲との違いは、ちょっと想像できないものだった。それは半野喜弘のリミックスにおいてもそうだった。今回聴くことが出来たものでは、[ dok ]や[ undirected ]のものが使われていたのが分かったが、全体としての組織化は予想の外のものだった。[dok]が好きで[ undirected ]を聴いて退屈した者は、ovalの粒子のような音色に魅力を感じたかもしれないし、また彼が苦手と言っていた反復的なループやそれどころか明らかなダンス仕様のビートの音色を聴くと、彼は変わってしまったのだろうか、と心配する者もいるのかもしれない。
それでも彼らしいという部分があるとすれば、一つには音色の重ね合わせの仕方にある。彼がダンストラックのループを用いようと、ダンスものに聴こえないのは当然というか部分的な用いられ方しかされていないということがあるけれど、それだけでなく配置のされ方がこのような音を冷ややかに見つめるような視点を強いるからでもある。オヴァルの音色にあれほど焦がれた者がここでは色あせて聴こえるとすれば、それはすでに音響派というジャンルが飽和したという意味においてかもしれないが、同時に音色の心地よさに浸ることを、それが許さないということでもある。彼の音楽を「静謐」だとか「冷ややかな」などと形容するのは紋切り型な反応ということになると思う。同時に「論理的」だとかも。彼の音楽を聴くことの楽しみは、音がどのように組み立てられているのかということについて意識を向けることにあるという安易なものなのだろうか?確かに彼の音を聞くとその場で鳴っている音への没入を回避せざるを得ないように僕には思えた。というよりそのことに音楽を受容する喜びがあまりないと思えたという方が適切かもしれない。
ふと演奏している姿がスクリーンに映し出されるのを見ていて、fenneszの大阪でのライブを思い出した。ラップトップを使いながらも、オヴァルと違いその演奏がある長さを持ったサウンドファイルを用いたいわゆる即興演奏と言えることに共通しているからだ(別にフェネスでなくともいいのだろうけれど)。フェネスは音楽的にはポップストラクチャーを用いることに意識的であるという意味ではオヴァルとの類似の方が強いといえるけれど、彼のライブは過去の音源を構成するサウンドファイルをバラバラに再構築した持続を作り出している。そこでは各サウンドファイルという部分においては既聴感を持ちつつ別の全体がそこに現れ、全体はポップ・フォーマットの境界を往復するという印象を持つ点で、オヴァルとは似ない。彼のcdなどの固定されたメディアでの作品群が、音色のレベルでの既存のフォーマットの境界往復を行っていることを考えると興味深い。
音の重ね合わせの方法論において、フェネスのライブでの組織化とシャルルのそれは類似している。けれどもそれは上で言ったようにオヴァルを基準に両者を対比した上で言えることで、フェネスに存在した境界は、そもそもシャルルには関係がないようだ(存在しないのではなく)。それでも彼らに共通するのは、やはりというかラップトップ・コンピュータというツールによって、いくつものサウンドファイルをその場で生じたもしくは明確な前もっての、意図によって音を「即時的に」構築していると思われる点にある。このことはいくらラップトップ・ライブが退屈だからという言われ方が一般的になろうが、このスタイルの強みになると思われる。ところでこのことは利点と欠点を持つ。利点とは上で言ったように楽器演奏とは異なる高次のレベルでの確率的操作により、想像し得ない複雑な厚みを持つ音の結界を場にもたらすことが出来、それを操作できるという点であり、欠点はその確率から漏れる部分が静的であると受容者に気づかれる可能性は楽器演奏より未だ目立ってしまうという点である。
受容
- 音 [ first take ] roberta flack ( atlantic records )
- 音 [ freddie king(1934-1976) ] freddie king (rso records, Inc.)