アレルギーとは体に異物(アレルゲンまたは抗原と呼ぶ)が入ることにより、その入った異物を排除したり攻撃したりする免疫機構が逆に自分の体にとって害を及ぼす過剰な反応をおこすことです。この自己と非自己を認識する機構は人間が自分の祖先から長い年月を経て獲得した遺伝情報でその個人個人で違います。ふつう病原体を排除する作用を持つ抗体は免疫グロブリンの中でもIgG,IgA,IgMなどですがアレルギーに関与する主な抗体はIgEという種類のものです。その他にリンパ球(T細胞B細胞)、マクロファージ、肥満細胞、単球、好酸球、好塩基球、好中球という血球細胞(免疫担当細胞)やそこから出されるサイトカイン(インターフェロン、インターロイキンなど)、化学伝達物質(ヒスタミン、ロイコトリエン、トロンボキサンA2、プロスタグランジンD2、PAF,ECF-A,NCF)などがアレルギー反応に関与しています。
アレルギー反応は強い異物の刺激があれば誰でもおこす可能性があります。(例えば回虫症、移植の拒絶反応)しかし家系的に喘息、 皮膚炎、鼻炎などのアレルギー疾患の多い、IgEを作り易い、アレルギー反応を抑えられない体質の人がおり、このような体質をアトピー体質と呼びます。しかし最近は湿疹がひどいだけでアトピーと簡単に言う傾向があり、混乱があります。
もう少し分かりやすく臨床的にアレルギー反応を分けると数分から数十分でおこる即時型、数時間でおこる遅発型、数日でおこる遅延型に分ける人もいます。
即時型はもちろん先ほどの1型アレルギーでおこり、じんましん、急性の喘息発作や結膜炎、鼻炎、食物アレルギーで嘔吐、下痢など急性のもの、薬剤のアナフィラキシーショック等があげられます。
遅発型、遅延型はまだ完全には解明されていませんが4型と3型アレルギーなども複雑にかかわっているようです。これには主にアトピー性皮膚炎、慢性化した喘息発作、鼻炎などが当てはまります。
アレルギーマーチ:アトピー性皮膚炎を皮切りに喘息、鼻炎、結膜炎を次々と発症する現象
低年令から高年令になるにつれての変化
アレルゲン: 食物→ダニ (検査上陽性でも食べても影響が少なくなります。注射は別。) IgE: 低値→高値 (正常値も成人の方が高値です。) 皮膚炎: 湿潤→乾燥 顔面、頭部→四肢の関節屈側(肘、膝の内側)
思春期頃にはアレルギー疾患は軽くなる人がほとんどです。理由として自律神経機能、精神状態(自立心など)、呼吸機能、消化管の粘膜、免疫能(分泌型IgA,Sup-T細胞の数、機能)などが成人に近づくためと考えられます。
正式には気管支喘息といいます。定義は「ゼーゼー、ヒューヒューという喘鳴を伴った発作性呼吸困難を繰り返しておこす疾患。」で、アレルギー疾患の中でもよく見られますが、ひどくなると命にもかかわる病気です。発作は春と秋に多く、一日では夜と早朝に多く、運動やかぜに伴っておこす場合も多いようです。台風や低気圧が来るときまって集団でゼーゼーして外来を受診します。ストレスやたばこの煙なども発作を誘発します。
原因となるアレルゲンはほとんどの人がダニや家のほこりでその他カビや花粉、動物の毛やフケなどがあり、主に吸入することにより前に述べたようなアレルギー反応がおこり、肺の気管支の筋肉が収縮したり、粘膜が腫れたり、粘液の分泌が増加したりして空気の通りが悪くなり「ヒューヒュー、ゼーゼー」というようになります。最初は即時型の反応でおこりますがその後は遅発型、遅延型の反応も加わり、いわゆる炎症の状態となり、喘息薬が効きにくくなります。こういう理由で発作がおきたら早めに対処し、早めに抑えた方がよいのです。またアレルギー反応を繰り返す事により気道が過敏状態となり、アレルゲンがなくてもちょっとした原因で発作をおこすようになります。
治療には対症療法と原因療法または発作時の治療と発作の予防があります。
ダニ(カーペット敷かないか一部にする、掃除をこまめに、寝具を清潔にし、ダニを通さないふとんカバーをするなど)カビ(かびとり)ペット(飼わない)食べ物(牛乳、卵、大豆、そば など原因アレルゲンを避ける)
アトピー素因を持つ人にできる特殊な湿疹、皮膚炎
年令で症状は違いますが、共通してかゆみが強く、良くなったり悪くなったりを長く繰り返す特徴があります。皮膚の皮脂膜というバリヤーが不完全なため外界からの刺激や異物の侵入に弱く、ダニ、細菌、日光、汗、食物、衣類によるこすれ、精神的ストレスなどによって増悪します。
乳児:頬、頭部、眉毛のところに赤や白のプツプツができ、ひどいと湿ったふけやつゆがでます。(脂漏性湿疹)背中や胸にはあせものようになります。
幼児、学童:夏は関節の屈側にあせも、汗かぶれができ湿疹となります。 冬は乾燥肌で、ストーブにあたるとかゆくなり、かくとひどくなります。
入浴は手に直接石鹸をつけて洗い、入浴後には保湿剤を塗るのが大事です。爪を短く切る事、かいてしまったら、外用剤を塗る事です。
治療
●抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤の内服。
●もし原因となるアレルゲンがあればそれを避ける事。
●スキンケアも非常に大事です。ステロイドの入ったものが効果は強いですが軽いところは非ステロイドの抗炎症剤や保湿剤、抗ヒスタミン剤をまず塗ります。
ステロイド剤は強いものから弱いものまで種類が多く、皮膚炎の程度により使い分けられ、
部位を指定して数種類のものが処方されます。
ステロイド外用剤は皮膚萎縮、網細血管拡張、色素脱失、真菌の皮膚炎になりやすいなどの副作用がみられることがありますが、ひどいところは強い薬をまず塗り、良くなってきたら弱いのに変えるなど医師の指示どうり使用すればこわくありません。
自分で勝手に診断して以前もらったのを塗ったり、強い薬をよく効くからといって長期に使うことは避けて下さい。
●免疫抑制剤軟膏(プロトッピック)が症状がひどくてステロイド剤が止められず副作用が心配となる時には使えるようになりました。
●かゆみをおさえる治療は非常に大事です。薬だけではなく、ストレス、皮膚乾燥、皮膚の不潔、肌に触れる衣服に対する注意が必要です。
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同じ皮膚におこるアレルギー症状ですがほとんどは即時型の反応でおこります。食物、薬、感染が原因のことが多く、そのほかまれに
胃腸障害、日光、寒冷、心因性などの事もあります。かゆみを伴った円形や、地図状の赤い膨疹ができたり消えたりを繰り返します。
だれでも一度や二度は経験があるのではないでしょうか。数日繰り返す事はよくありますが1か月以上繰り返す場合は慢性蕁麻疹といいます。同時に呼吸困難、血圧低下などを伴う場合をアナフィラキシーショックといい、すぐに治療しないと危険な時があります。
原因がわかった場合はそれを避ける事により再発を予防できます。
治療は抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤投与です。
反復性発作性のくしゃみ、水のような鼻汁、鼻づまりを3主徴とする鼻粘膜のアレルギー疾患です。主には花粉などのアレルゲンが鼻粘膜表面に沈着し、粘膜固有層に入り込み、1型アレルギー反応をおこします。ヒスタミンなどの化学伝達物質が知覚神経終末を刺激し、くしゃみを誘発し、粘液腺細胞が刺激され粘液の分泌が増加し、血管を刺激し局所循環障害、浮腫をおこし鼻づまりとなります。しかし遅発型反応もみられ、この場合は好酸球、好塩基球、好中球などの細胞浸潤が主体のようです。
治療は原因除去はむずかしく、抗アレルギー剤、去痰剤、抗炎症剤などで、鼻吸入薬、点鼻薬も使用することがあります。副鼻腔炎を合併したときには抗生剤も使用します。
眼の結膜におこるアレルギーでかゆみ、充血、腫れ、目やにが主症状です。鼻炎と同じく、アレルゲンが眼の粘膜に入り込んで主に1型アレルギー反応をおこします。
治療は主に抗アレルギー剤の点眼になります。
現在はIgEや好酸球数がすぐに検査できますし、1回の採血でダニや家のほこりなど最高13種類のアレルゲンに対する反応の強さも分かるようになりました。このことより、治療も症状をやわらげる対症療法に加えてアレルゲン除去、抗アレルギー剤など原因にせまる治療ができるようになっています。
草花や樹木の花粉をアレルゲンとしておこるアレルギーのことで、鼻炎、結膜炎、喘息が主な症状です。本州ではスギ花粉が多いですが北海道ではほとんどありません。開花の時期も少し違っています。
開花時期 |
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樹木花粉(しらかんば、まつ、にれ など) |
5(4)月頃から |
イネ科花粉(かもがや、おおあわがえり など) |
6(5)ー8月 |
雑草花粉--- キク科(よもぎ、ぶたくさ など) |
8ー10月 |
食物アレルギーは食物をアレルゲンとしておこるアレルギー反応のことで、いろんな症状をひきおこします。ふつうは即時型の反応としては嘔吐、下痢、蕁麻疹、喘鳴、呼吸困難、ショックなどで遅延型では皮膚炎が主なものでしょう。
診断は疑わしい食物を食べないで良くなるかどうかをみる除去試験、良くなったあとその食べ物を食べてみて症状がでるかどうかを
みる負荷試験の二つが基本となります。そのほか皮膚テスト、血液のIgEラスト法などがあります。
乳児は小腸の発育が未熟であまり早期から抗原性の高い食物をとらない方が良いといわれていました。しかし近年は妊娠中や授乳中も母親はアレルギーがない限り何でも食べるようにし、離乳食も特に制限せず何でも与えていった方がアレルギ−の発症が抑えられることが証明されてきました。
乳児期は皮膚炎の皮膚からアレルゲンが入り込んでアレルギ−を発症すると言われておりワセリンや保湿剤などのスキンケアは大事です。特に食物や唾液の付着しやすい、顔、頸部、胸、手などは念入りに。
ただしアレルギーを発症してしまった場合は原因食物の除去や制限をします。
抗原性の高いものとは主にタンパク質で卵、牛乳、小麦、大豆、ピーナッツがあります。特に生卵は気を付けた方が良いようです。加熱することにより同じ食物でも抗原性は低くなります。
そのほかの注意としては添加物(タートラジンなどの着色料が免疫反応とは異なる仕組みで蕁麻疹、喘息をおこすことがあります)の少ない食品がよく、魚、肉は新鮮なものをとり、あくの強い野菜はヒスタミン、コリンを含むので避けることなどです。(ヒスタミンを含む:ほうれん草、トマト、茄子、セロリ コリンを含む:トマト、茄子、竹の子、ピーナッツ、山芋)
しかし、あまり神経質になりすぎると食べるものがなくなってしまい、栄養失調になってしまいます。私が大学病院にいる頃、ある病院でアレルギーといわれ、赤ちゃんと授乳中の母親がかなり厳格な除去食の指導により痩せ細って、困って大学病院を受診したのを今でも覚えています。最近は小児アレルギー学会でもこのような行き過ぎた制限は良くないとされ、また確実な検査、診断をせず安易に除去食を開始するのも問題とされています。とはいっても特に即時型の反応をおこす人は厳格な制限をする必要があるでしょう。その場合栄養を十分とるために制限した食物の代わりとなる食品をとることが必要です。
最近は食物アレルギーの人の治療として、アレルゲンを症状を起こす量より少量から徐々に増やしながら食べていくようになってきています。
以上まとめると、制限はその必要のある人だけがすること、する場合はきちんとした検査、診断を受け、栄養学的にも考えた制限をすることです。
適切な治療により、食物アレルギーは3才までみると50%が食べられるようになったという報告もあります。
保育園や学校での除去食には限界があります。以前そばアレルギーの裁判があり、学校の対処が問題となりましたが、即時型の反応のでる食物がはっきりしているときは厳重に制限しなければなりませんので、家から弁当を持っていかなければならないこともあります。もしまちがって食べてしまったときは注意深く観察し、症状がおこれば病院に行った方が良いでしょう。
先ほどお話したようにアレルギーはだれでもおこしうる免疫機構の過剰反応であり、それをおこしやすい遺伝体質をアトピーと考えれば良いでしょう。
アレルギーをおこしやすい体質は変わらないが症状は軽くなります。
それは自律神経、呼吸機能が成熟したり、精神的自立、風邪をひきにくくなるなどが理由としてあげられます。
いままでお話したことになりますが、外敵から自分を守るための免疫機構は複雑に調節されていますが、この抑制が効かなくなったため過剰な反応がおこったり、自分を敵とまちがえて攻撃したりしておこると考えると理解しやすいでしょう。
安易な理由で制限をしないことと、制限が必要な場合も代用食などで、栄養不足にならないようにすることです。アトピー素因の強い場合は少なくとも生後1才までは生卵はとらない方がよいでしょう。卵は加熱すると、抗原性は低下します。
体質改善というのは本当はおかしな表現です。アレルギーをおこしやすい体質自体はずっと変わらないと考えられます。抗アレルギー剤は続けている間アレルギー反応を途中でブロックするような薬です。
減感作療法は毒をもって毒を制すという考えで、アレルゲンを低濃度からしだいに高濃度に変えて皮下注射していく方法ですが、痛いし、頻回に通院が必要なため最近はあまり行われなくなりました。
体質を変えるわけではありませんが冷水浴や水泳などで自律神経や呼吸機能を鍛えたり、精神的な弱さや依存心を克服していくことで、喘息発作をおこしにくくすることができます。
日本で約1000万人といわれているので、10人に1人くらいです。
眠ると、体が温まって副交感神経が優位となり、気道の分泌が増えると気道がせまくなり、発作がおこりやすくなります。
こういう時は水を飲ませたり、ゆっくり腹式呼吸をさせたり、もし薬や携帯用の吸入薬があれば使用し、軽いうちに早めにおさえるとひどくなるのが防げます。
一般でいわれるアレルギー疾患とは異なり、3型アレルギーでおこるといわれますが膠原病とか自己免疫疾患と呼ばれる病気のなかまと考えてください。喘息やアトピー性皮膚炎の人がかかりやすいわけではありません。ちなみに主症状は紫斑(あざ)、腹痛、関節炎、血尿、蛋白尿などです。
(参考)アレルギー疾患に使用する薬物
(経口)食物アレルギーの第一選択薬、腸管だけに作用する。体内に吸収されない (吸入)カプセル....粉を吸入するので咳がでたりして難しい。 アンプル....最も有効だが吸入器(1,5から2万円)が必要。 エアロゾル....携帯用吸入器。最近発売され、手軽で使いやすいが、アンプルの方が使いやすく、効果的。 使い捨て。 (点鼻液)アレルギー性鼻炎に (点眼液)アレルギー性結膜炎に
喘息薬
(気管支拡張のみ、動悸はないが手のふるえが時々あり、特に吸入薬は発作を速効的に抑えるのに有効、抗炎症作用なし、長期の予防的使用は良くないとの説あり)
(経口剤に加え吸入液、携帯用吸入器、経皮テープ剤のあるものもあり)
(経口剤に加え吸入液のあるものあり)
喘息であれば発作の重症度、慢性か急性か、頻度、アトピー型か感染型かなどで使用する薬物を選択したり、日常生活での注意点も変わってきます。
β2刺激薬の吸入、(ネオフィリンの点滴は外来では普通しなくなった)
ロイコトリエン拮抗薬(オノンなど)内服、ステロイド剤やインタールの吸入、去痰剤やβ2刺激薬の内服、テオドールの定期的内服
ロイコトリエン拮抗薬(オノンなど)内服、ステロイド剤やインタールの吸入、テオドールの定期的内服(最近はしなくなった)
β2刺激薬の吸入、ネオフィリンの持続点滴、ステロイド剤の注射、酸素投与、交感神経刺激薬の持続吸入、人工呼吸器使用、気管内洗浄