平成10年10月6日(火)〜


あふなあふな

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若すぎるほどでもない
そんな青年たちでした

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こちらあちらのつながりの
友達が集まって
月を観て遊んだのでした

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彼らの中に一人だけ
こう詠んだのです

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どうのこうの
安易に月を愛でるのは
よしましょうか
この出入りが積もれば
人の老いとなるのですし

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身分いやしからぬ男が
自分よりもさらに高貴な御方に
想いをかけて
年が経ちました

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誰にも心知られずに
私が恋い死にをしたとすれば
虚しいものです
人々は祟りと思って
どの神に無実を着せるのでしょうか

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相手にしてくれない人を
いかにしたらなどと
永く永く
想い続けていましたところ

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それもいじらしいと同情されたのでしょうか

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それほどなら明日
御簾越しにでも

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と約束してくださいました

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よろこびは限りなく
半面
疑わしい 信じられない
という思いもあって
みめ佳い桜につけて

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さくら花よ
今日はこれほどに
艶美に咲いていても
とても頼みにはできません
明日の夜のことまで

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こういう心中も
贈ってしまいました

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月日のゆくことさえ
嘆く男がいました

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弥生(旧暦三月)の終わりごろに

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惜しみなげくうちに
春のおわりとなる今日この日の
夕暮れにまで
もう
なってしまったのですね

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恋しさに
行っては帰る日々を重ねましたけれど
女に
ふみで伝えることすらできずに
詠みました

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蘆の辺りをこぐ
粗末な舟は
いくたび
ゆきかえりをするのでしょう
知る人もいませんのでと

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男は
この身は賤しいと知りながら
天に住まうかというほどの人を
想い焦がれたのです

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わずかながら期待できるかもしれない
そういう様子がありました

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臥しておもい
起きておもい
おもいに苦しみぬいて
詠みました

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あいあいの
恋をすべきでした
比べたりしない
貴いとか賤しいとか
苦しいばかりです

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昔もこのようなことは
世の理(ことわり)だったのでしょうか

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