平成10年10月6日(火)〜
あふなあふな
.
.
若すぎるほどでもない そんな青年たちでした .
こちらあちらのつながりの 友達が集まって 月を観て遊んだのでした .
彼らの中に一人だけ こう詠んだのです .
どうのこうの
安易に月を愛でるのは
よしましょうか
この出入りが積もれば
人の老いとなるのですし
.
.
.
・ .
身分いやしからぬ男が 自分よりもさらに高貴な御方に 想いをかけて 年が経ちました .
誰にも心知られずに
私が恋い死にをしたとすれば
虚しいものです
人々は祟りと思って
どの神に無実を着せるのでしょうか
.
.
.
・ .
相手にしてくれない人を いかにしたらなどと 永く永く 想い続けていましたところ .
それもいじらしいと同情されたのでしょうか .
それほどなら明日 御簾越しにでも .
と約束してくださいました .
よろこびは限りなく 半面 疑わしい 信じられない という思いもあって みめ佳い桜につけて .
さくら花よ
今日はこれほどに
艶美に咲いていても
とても頼みにはできません
明日の夜のことまで
.
こういう心中も 贈ってしまいました .
.
.
・ .
月日のゆくことさえ 嘆く男がいました .
弥生(旧暦三月)の終わりごろに .
惜しみなげくうちに
春のおわりとなる今日この日の
夕暮れにまで
もう
なってしまったのですね
.
.
.
・ .
恋しさに 行っては帰る日々を重ねましたけれど 女に ふみで伝えることすらできずに 詠みました .
蘆の辺りをこぐ
粗末な舟は
いくたび
ゆきかえりをするのでしょう
知る人もいませんのでと
.
.
.
・ .
男は この身は賤しいと知りながら 天に住まうかというほどの人を 想い焦がれたのです .
わずかながら期待できるかもしれない そういう様子がありました .
臥しておもい 起きておもい おもいに苦しみぬいて 詠みました .
あいあいの
恋をすべきでした
比べたりしない
貴いとか賤しいとか
苦しいばかりです
.
昔もこのようなことは 世の理(ことわり)だったのでしょうか
.
.
.
.
.