平成10年11月24日(火)〜
散り交ひ曇れ
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堀河の大臣(おほいまうちぎみ)という方 おいでになられました .
四十歳の賀 九條の邸で催された日 中将であった翁 .
さくら花
散り交わせ 曇らせよ
老いなるもの
来るといわれる
道 まぎらわすほどに
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太政大臣(おほきおほいまうちぎみ)とお呼びしていた方 おわしました .
官職に連なる男 長月(陰暦九月)のころに 梅の造花に 獲物の雉(きじ)をつけて お贈りしました際に .
わたくしが頼みとする
貴方様のためにと手折りましたところ
この花は
この季節には (ときしもわかぬ)
咲きようのないはずでしたのに
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こう詠んで添えました (きじ を詠み込んだ辺りでしょうか) 大変に感じ入ってくださり もったいないことに 使いにご褒賞のお約束をいただけました .
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右近のむまばの(右近衛府の馬場の) ひをりの日(仕上げとなる騎射試乗の際) .
馬場のそばに停まっていた牛車に 女の顔が すだれのさらに下簾(したすだれという幕)の奥から ほのかに見えました .
中将であった男が 詠みます .
見ないということでもなく
見るということでもない
あなたが恋しいために
なんとはなしに今日一日
思い出しては暮れるのでしょうか
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返し .
知る知らないということで
なぜ なんということもなしに
わけへだててしまうのですか
想うこころだけが
道しるべとなるはずですわ
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後日 誰であるかは十分に知ることができました .
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男が 後涼殿の間(はさま)を渡っていましたところ あるやんごとない人の御局(みつぼね)より わすれ草を .
しのぶ草というようです .
とて 賜ることがありました .
あのようないきさつでは
忘れ草の生える野辺と
見えるかもしれませんね
これはしのぶ草でした
後々まで私は頼みといたしますので
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