平成11年5月27日(木)〜
花を縫ふてふ
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男から 長い間音信もなかったのに .
忘れてしまうなどという ひとでなしではありません 今から参りますので .
と言い送ってきましたので .
あなたという葛(かづら)の
美々しく這う樹木が
ずいぶんと多くなりましたね
わたしという一本の樹へも
まだ気持ちは絶えていないなんて
いやです
うれしくございませんわ
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女の 今はあだとなってしまった男の 形見だと置いていったものどもを見て .
形見と言われたけれど
今はもう にくいほどよ
これさえなければ
忘れるときもあるでしょうに
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男は その女がまだなにも知らないうぶだったと 喜んでいたのですけれど .
ある御方のところで 真相がもれ聞こえることがあって しばらくして .
近江の
筑摩の祭りを
早くしてほしいです
薄情な人の
鍋の数を見ましょうか
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男の数だけ鍋をかぶる そういうお祭りだそうです .
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男が 梅壺という宮中の御殿から 雨に濡れて退出する人を見て .
うぐいすが花を縫うという
笠があればと思います
濡れそぼつあなたに着せて
帰してあげたいのに
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返し .
うぐいすが花を縫うという
笠はいいのです
想いという火種をつけて
お借りできませんか
火をおこしすっかりかわかして
お返しできるでしょう
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