宇宙の果て
結論から言うと、宇宙に果てはありません。つまり、地球を離れ、どんなに宇宙を進んで行ってもまた元の場所に戻ってきます。 なぜなのかを理解するには、ちょっとコツがいります。
「次元」という言葉をご存知ですか。 次元とは、わかりやすくいえば、「一定の方向へ伸びる広がり」のことを言います。 あなたが生活する空間は、横幅、高さ、奥行きの3つの方向へ広がっていて、3次元と呼ばれます。 私たちが生活する空間は、3つの方向へ広がりを持っているわけです。
そこで考えていただきたいのですが、あなたは、時間の流れを理解できますよね。 一般的に言えば、時間は過去から未来へと進みます。 タイムマシンがありませんから逆戻りできませんが、それでも、時間も、空間と同じように過去から未来へ、という方向と広がりを持っていることがわかります。
このように、目には見えないけれども方向と広がりをもつものがあることを、あなたは理解できるはずです。
横幅、高さ、奥行き、そして時間。ここまでで4つの次元があることを、理解しましたね。
宇宙の広がりを端的に理解するために、5つめの次元を想像します。 難しく感じるかもしれませんが、簡単なので安心してください。
5次元目を理解するための前段として、まずさきほど言った、目には見えないけれども広がりをもつことを理解できる、という言葉を思い出してください。 目には見えない時間を、あなたは理解できます。
では、時間を表現するためにはどうしたらいいでしょう。 これは紙を用意して、横に一本直線を書けばいいですね。 直線の左側に過去と書き、真ん中に現在、右側に未来と書いて、時間関係を書いて説明したり、勉強したりしたことがあるでしょう。 このように、実際には存在しない線を想像することにより、私たちは、時間の流れを理解しやすくなります。
このことと同じく、5次元目として、表面が鏡になった、地球儀のような球体を想像してください。 球体の表面にも、線を引くことができますね。 そして線を一方向に引き続けると…そうです。また元の場所に戻ってきますね。 球体の表面に私たちの宇宙が映し出されています。 鏡の地球儀の表面には凹凸はありませんが、鏡の球体がもしあなたの目の前にあったら外の風景を映し出すように、その地球儀には宇宙全体が映し出されます。
球体の表面は、湾曲していますし厳密に言うと立体で3次元ですが、球体の表面は一つの広がりを持っているわけです。球体が地球ほどに大きくなったら、線を引きながら一周するのは大変な苦労です。いうまでもなく球が大きくなれば表面積は大きくなるわけですから、「球の表面」で表わされる「一定の方向への広がり」を、次元ということができるわけです。
でもまずここでは、球体の表面積は広がりをもち、ペンで線を引くことができる、ということと、球体のどこに点を書いても、そこが中心になってしまうことを理解してください。 これを、時間を直線のイメージで想像したのと同じように、目には見えないけれども方向と広がりをもつ5つめの次元として理解します。
わかりにくいかもしれないので別の言い方もしましょう。たとえ話です。
宇宙の方々を旅できる高性能な宇宙船にあなたが乗っているとします。 あなたは初めてこの宇宙船を操縦することになりました。 あなたは少し不安な気持ちで、操縦席に座っています。
操縦席の目の前にある画面には、まずあなたが見るための前方の風景を映し出すディスプレイがなくてはなりません。 目的地を探す時や、障害物を避ける時、必要ですからね。もちろん、宇宙船にはそれがあります。あなたは少し安心しました。
それと行き先を誤らないために、3次元の地図(星図)が必要です。星図がなくては、地球から冥王星へ行く時にどんなルートをたどればいいかわかりません。これは、いわばカーナビを3Dにしただけのものです。ルートを登録する機能も、どうやらちゃんとありました。迷うことはなさそうです。
それから、時間も知る必要がありますね。操縦席を見回し、あなたは時計を探しました。 時間は、星図のとなりに、直線のグラフでちゃんと表示されています。あなたはなおのこと安心しました。
ところが見慣れぬ地球儀のようなグラフもその隣に置かれています。そのグラフはバスケットボールほどの大きさの球体の形をしていて、あなたの現在位置はその球体の表面に、点で表示されているのです。 そうです、これが5次元目のグラフなのです。
あなたは、3次元の星図で行き先をコンピュータにインプットしました。 すると、自動的にバスケットボールの球体の表面にも、現在位置と、行き先が表示されました。
しかしあなたはここでふと、不思議に思いました。 これでは、この宇宙船を操縦して目的地を通り過ぎてどこまでも行ったら、球体を一周してまた元の場所に戻ってしまうじゃないかと。 しかしそれは正しいのです。
宇宙には、球体の表面と同じく、果てがありません。 そして上にも書いたとおり、現在地を点で表示したら、どこもかしこも中心になってしまいます。 それもまた、正しいのです。
それはつまり、宇宙は3次元ではないからです。 3次元で宇宙の広がりを考えるから、果てがあるのではないかという考えにたどり着きますが、宇宙は実は5次元以上あるのです。 (本当は、10〜11次元あると考えられています。)
あなたは、その見たことのない不思議な球体のマップを訝しく思いながらも、とりあえず地球から冥王星まで行ってみることにしました。 3次元のマップは、あなたが通った道程を正確に記録し、時間を示すグラフも、刻々とすぎる時間を、正確に刻んで行きます。 そしてバスケットボールの球体も、表面に表示された地球から冥王星の表示まで、一本の線が引かれて行きます。一本の線は、球体の表面に表示されますから、正確には直線でなく曲線ですが。
時間を示す直線のグラフと同じように、この5次元目の方向と広がりを持つグラフも、このようにして視覚的に表現できるわけです。 あなたは、冥王星まで、3次元の空間を移動すると同時に、4次元目の時間を移動し、なおかつ5次元目の方向へも、進んできたのです。たどり着いた場所は、冥王星です。別の次元に移動したわけではありません。
このように、宇宙には広がりはあるけれども果てはない、不思議な構造をしています。 目に見えない時間を直線に表すと理解しやすいのと同じく、宇宙の広さを理解するのには、球体の表面に線を引いて表すと理解しやすいのです。
実際には、バスケットボールほどの大きさの球体では、宇宙に存在する惑星や恒星の名前、銀河の名前を全て書き込むには小さすぎるでしょう。 しかし全ての惑星、恒星、銀河を書き込むにしても、球体を大きくすれば、いつかは書き込み終わるに違いありません。
宇宙をもし隅々まで探検するとしたら、この球体に、惑星や恒星の名前を書き込み続ける作業になるはずです。しかし、銀河間の移動は、実際には不可能であると考えられています。なぜならば、光の速度よりも早く伸び続ける空間が銀河と銀河の間には立ちはだかっており、この距離は絶望的なまでに遠いからです。