鳥の声。木々の香りを運ぶ風。少し斜めに射しこむ日の光がきらきらと空気を輝かせている。
その緑豊かな林のなかで、ひときわ鳥のさえずりの賑やかな場所があった。林のなかにある川のほとり。木々の隙間から射し込む光が川の水面に反射する。そして光り輝く瀑布。
大きくはないが、それでも荘厳たる姿を見せつけるかのように、沢山の美しい清水を落とし続ける滝の、その水飛沫が降り注ぐ川原の草花の上に、色鮮やかな様々な鳥たちがまるで小山のようにたかって集まり、さえずりを響かせている。
普段通りに薪や食料となる果実等を手にして散策を楽しみながら帰路についていた緑髪の美しい青年は、いつもと違う鳥たちの様子にふと足を止めた。
「・・・? 何かあるのか」
鳥たちの下に、黒っぽい影を認めて驚いて近づいていく。
「人じゃないか! こんな所に何故!? それも、まだ年若い女ではないか」
緑髪の青年の存在に、空へ逃げ去る鳥たちの中から現れたのは、紛れもなく黒髪の少女であった。しかし、ぐったりとした少女は地に倒れたまま微動だにしない。
緑髪の青年は、少女の胸に耳をあて、口元に手をかざす。
「まだ生きている。仕方ない、連れて帰るとするか」
おもむろに少女を軽々と担ぎ上げると、緑髪の青年は家路へと急いだ。
鳥たちは、その姿を周囲の木々の枝々から、まるで見守ってでもいるかのようにじっとみつめていた。
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