「紫鏡2」魂使い
序章

 屋根裏部屋だろうか。薄暗く、明かり取りの天窓からはぼんやりと日の光が射し込んでいる。部屋の中はアンティークな置物や家具ばかりが置いてあり、余程裕福な家のようだ。

「うっ、うっ」

 誰かの泣き声。

 それは、少女のものだった。

「くやしいっ! どうして私があんな女にこんな目に遭わされなくてはならないの! 許せない!!」

 涙に濡れた顔は、日本人形のように整ったものだった。

「お父様の再婚には、初めから反対だったのよ。だけど・・・、そんなことお父様には言えないじゃないの。それなのに。あの女は財産目当てで近づいただけなのに! お父様は騙されているって気づかない!! ・・・私はどうしたらいいというの!! あの女・・・許せない!」

 少女は悔しそうに床を叩いた。

 その時、何かわからない物音が誰もいない部屋に響いた。ハッとした少女は辺りを見回したが、誰かが潜んでいる様子はない。それでも目をこらして周りをよく見てみると、ぼんやりと明かりを放つ場所がある。

 家具の隙間を縫い、恐る恐る少女が近づいてみると、古風な鏡台の脇にひとつのかんざしが落ちていた。光はそのかんざしから放たれていた。それは、比較的小さめの作りのもので、何か半透明の石の珠が三つ付いたものだった。天窓から差し込む薄明かりが石の珠に反射して光を放っているのか?

 不思議に思いながら、少女はそれをそっと手に取った。

 すると、さらに光りは明るさを増して強烈な閃光となり、少女の視界を閉ざした。




 しばらくの後、ようやく光は消え、視界を取り戻した少女はまるでそのかんざしに魅入られるかの如く、かんざしを自分の髪にさした。

「コレデ・・・ノゾミノママニ・・・」

 少女はぽつりと呟いた。



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Les Rois au pays de Pyjamas

オリジナル小説「紫鏡」