永遠子は、生徒会室の自分の椅子に腰を掛けて、ただひとりいた。
「紫水 晶子というあの女の魂はとることができましたけれど、残りのふたりは駄目でしたわ。どうしたら良いかしら・・・」
少し不安を感じさせる表情と、声。その顔がふいに歪んだ。自身たっぷりの表情。ぎらぎらとした眼光。つり上がった口の端。それはまるで別人だった。
「ヨイ。アヤツヲ捕ラエテオケバ、残ルフタリモジキニヤッテ来ルデアロウ」
明らかに別人のもののそのことばに、さらに永遠子は不安を重ねる。
「一体あの者たちは、何者なのでしょう」
「ワカラヌガ、案ズルナ。女ヲ捕ラエテアルノダカラ、奴ラニハ手出シナド デキルワケモナイノダ!」
永遠子はカッと口を大きく左右に開き、にたりと笑いながら、楽しそうにことばを続けた。
恐らくならば、永遠子には現在、ふたつの人格が存在していると思われた。元よりの性格と、更にひとつ。それはあの日、屋根裏で不思議なかんざしを見つけたときからの異変だったのだろう。
ふいに、その様子が変わった。というより、元に戻ったというべきか。少女らしい、あどけなさの残る表情へと変化したのだ。正気に戻った感じもした。
“どうやら、間違いなく彼女には何かが絡んでるわね。どちらかというと、かなり古くから存在するモノみたいだし”
紫鏡のエネルギー体は、永遠子のすぐ側にいた。
「お父様・・・早くお帰りになって、永遠子にお顔を見せて・・・」
切なげに瞳を潤ませ、永遠子はぽつりと呟いた。しかし、すぐにぐっと唇を噛みしめると生徒会室を後にして、屋上へと向かった。
“お父様、ねぇ・・・”
紫鏡は永遠子のその後ろを寄り添うようについていった。
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