ピンポーン。
チャイムの音。
「どちらさま? 押し売りだったらいらないよ」
安珠はふざけてそんなことを言いながら玄関のドアを開けた。
折角の日曜日なのに、ホント誰だよ―――少なからず、安珠は不機嫌な様子である。
しかし、ドアの向こう側に立っていたのは貴子である。思いもよらぬ訪問者に、安珠は少々驚いた。
「ど、どうしたの、炭野さん!? よくここがわかったね」
「わぁ、安珠さん、男の人の恰好してるんですね!!」
貴子は安珠の姿を見ると、突然言った。
思わずガクッと腰砕けしそうになり、慌てて安珠は姿勢を立て直す。
「当たり前でしょぉ!! オレ、一応きちんと男だよ。それより、よくここがわかったねって言ったんだけど」
「あ、そうですね。すいません。学校の名簿にはまだ載ってなかったので、シスターにお願いして、転入手続きの用紙を見せていただいたんです」
貴子は明るく笑いながら答えた。
安珠はやれやれという感じである。
「で? いったい何の用事なの、急に。まさかオレをからかいに来たワケじゃないんでしょう」
「あ」
貴子は思い出したように口を開いた。
「安珠さんに協力しなくちゃ、と思って学校のことを調べてみたら、すごく変な・・・ただならないことが起きているのがわかって・・・」
「えっ!! ホント、それ!?」
「はい」
安珠はさっとスリッパを出して貴子にすすめた。
「え、いいんですか?」
突然お邪魔しちゃったのに、とでも言いたげである。
「いいから。オーイ、し・・・晶子ぉ、香ちゃーん、来客だよぉっ」
安珠は奥にいたふたりに声をかける。人間の姿になるように、紫鏡を“晶子”という名で呼ぶことによって、合図しているのである。
晶子と香は慌ててドタバタと玄関へやってきた。
「いらっしゃい」
ふたりは愛想笑いをしながら声をかける。
「あ、こんにちはっ」
貴子もぺこりとお辞儀をして顔をあげた。
「えっ!!」
顔をあげてふたりを見た途端、貴子はまるで幻でも見たような顔をして立ちすくんだ。
「この人たち・・・人間じゃない・・・」
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