三人は、聖マニフィカト女学園の屋上に佇み、今から訪れようとする朝の気配を全身で感じ取っていた。
紫鏡の亡骸は、アンジェラの腕の中にある。
守護精霊たちは、人間界に降りてその仕事中に命を失った場合、人としてその肉体は永遠の眠りにつくのだと、アンジェラはダイアナに教えられた。
「そろそろ日の出ね」
「うん」
セルリアが声をかけたとき、朝日が昇りはじめ、地上の建物は朱く染まっていく。
「人目についても困りますから、そろそろ行かなくてはなりませんね」
静かな口調でダイアナが言う。
「オレの生まれ故郷・・・」
「そうです。そして紫鏡の安らぎの場でもある、中国の聖地」
「そしてそのまた奥にある霊峰へ」
「そこが・・・」
寂しげに、せつなげにアンジェラは呟いた。
「そこが、紫鏡の眠る場所なんだね・・・」
「・・・そうよ」
セルリアも、今にも泣き出しそうな震える声で、懸命に耐えながらただひとことを答えるのが精一杯のようだった。
セルリアは、紫鏡とは遥か昔―――二千年以上も前からの友人だったのである。いろいろな思い出が脳裏を巡る。無理もないことだろう。
「さぁ、行きましょう」
ダイアナが声をかけた。
ふたりは頷く。
紫鏡、すぐにゆっくりと休ませてやるからな、もう少しの辛抱だよ―――
アンジェラは腕の中の紫鏡を見つめながら、そっと心の中で呟いた。
三人を太陽が照らし始めた頃、長い三つの影が消えた。
三人は、中国の奥地、紫鏡の眠る地となる霊峰へとテレポーテーションしたのである。
今、アンジェラの心の中は紫鏡を失った哀しみで満ち溢れている。しかし、いつまでもそれを嘆いてばかりはいられないのだ。
紫鏡と約束したように、アンジェラには未だ終わらぬ、辛く悲しい戦いの日々が待ち受けているのだから。
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