クリスティアン・ツィマーマン(Krystian Zimerman、1956〜、ポーランド) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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呼称:鍵盤の貴公子
過去:清純で瑞々しいショパン演奏を聴かせる美青年 クリスティアン・ツィマーマン(ツィメルマン)は、ショパンと同じポーランド生まれで、 1975年、弱冠18歳にして第9回ショパンコンクールを制覇した、類稀な才能を持ったピアニストです。 コンクール開催国ポーランドからの優勝は、1955年のアダム・ハラシェヴィッチ以来、実に20年ぶりの快挙で、 ワルシャワの聴衆はツィマーマンというポーランドからの正真正銘のスター誕生に我を忘れるほど興奮したようです。 それに彼は顔かたちがが ショパンの面影を漂わせる貴公子タイプの美青年で、その様子は「(コンクール本選で)コンチェルト ・ホ短調を弾いたときなど、フレデリック本人が陽の光輝く音の道、希望に燃ゆる光の中を世界制服へと まっしぐらに突き進んでいくかに思われた」(「ものがたりショパンコンクール」(イェージー・ ヴァルドルフ著、足達和子訳、音楽之友社)より引用) とも記されています。ショパン同様、音楽的才能、容姿と天は二物を与えたと思えるほどで、 まさにショパンの生まれ変わりと本気で思わせてしまう要素がツィマーマンには備わっています。 ツィマーマンの優勝には一部反対派もいたようで、我が国のショパンピアノ音楽評論の権威でもあった某氏が ツィマーマンを1位に推すことに大反対したと伝えられています。 確かに現在残っている、コンクール中のものと思われるアンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズを聴くと、 ニュアンスに乏しく際立ったテクニックのみが前面に押し出された演奏で、氏の気持ちも分からなくはないですが、 いずれにしても圧倒的な演奏で、将来性が楽しみな逸材とだけは言えたことは間違いないと思います。 上述した「ものがたりショパンコンクール」では、ツィマーマンの1975年ショパンコンクールの第1次予選の演奏に関して、 「半世紀に及ぶコンクールの歴史全体を通じ、初めてグランプリ候補者が素晴らしい才能であらゆる競争相手を圧倒し、 一番初めから分かってしまうということが起きた」、(中略)「湧き上がるような、青年らしい喜びに溢れた演奏で群を抜いた。 聴く者がこの素晴らしい演奏にあら捜しをしようなどとは思いもよらなくなるほどに魂を奪ったのである」と 著者はツィマーマンを大絶賛しています。 一部、耳の悪い偏屈な方々がツィマーマンの良さを全く理解できないことを棚に上げて、2位のソ連出身の女流ピアニスト・ ディーナ・ヨッフェを1位にするべきだと主張していたようですが、結果的には、ツィマーマンは コンクール優勝、金メダルの他、ポロネーズ賞、マズルカ賞の他、主要な賞を総なめに してしまったそうです。その奇跡的な快挙を見れば、反対派が間違っていたことが証明されたと考えてよいと思います。 ショパンコンクール優勝直後は、その清潔感溢れる瑞々しい美音で 極めて筋の良い素直な演奏を聴かせてくれる優等生的なピアニスト、という印象が先行していたようです。 1978年、79年にジュリーニと録音された、ショパンのピアノ協奏曲第1番、第2番にはそうした彼の 天分がいかんなく発揮されており、豊かなポエジーとファンタジーを湛えた見事な演奏で、現在でもこの2曲の代表的 名盤として輝いていることは周知の通りです。 ツィマーマンの大芸術家への成長の足跡は、その録音から知ることができます。彼はドイツ・グラモフォンと契約を結び、 前出のショパンの2曲のコンチェルトを録音した後、カラヤン、バーンスタイン、小澤征爾、ブーレーズ といった大指揮者とのピアノ協奏曲録音の機会に恵まれています。 1981年、82年にカラヤン、ベルリンフィル と録音したシューマン・グリーグのともにイ短調のピアノ協奏曲では、カラヤンの精妙な棒捌きの下、 極めてクリアーなピアノでその独特の詩情を聴かせてくれました。とくにグリーグの方は、カラヤンの 示唆もあったのでしょうが、出だしから壮大、大柄であり、単に詩情だけで聴かせる小粒のピアニスト ではないことを証明してみせています。北欧のショパンと言われたグリーグの清潔感溢れる詩情を 極めて繊細な感覚で細やかにしなやかに歌って聴かせながらも、抜群の演奏技術 と強靭な打鍵で要所要所を引き締め、見事なバランスを産み出した稀有の名演となりました。 その後、彼は、バーンスタイン、ウィーンフィルというこれ以上ないバックを得て、1983年、84年に ブラームスの2曲のピアノ協奏曲を録音(但しライブ音源)しています。これらの作品は2曲とも、ピアノを加えた交響曲と 言われるほど、ピアノと管弦楽が見事に調和したシンフォニックな傑作です。1983年録音の第1番では、 心の中から 滲み出る悲しみに満ちた旋律を、遅めのテンポで一つずつ丁寧に紡ぎ出していくようで、聴くたびに 目頭が熱くなる感動的な演奏です。今の僕にとってこれも同曲のダントツのベストワンです。 それから1年後に録音された第2番では、よりシンフォニックなこの作品を、極めて重心の低い 打鍵で演奏しています。バーンスタインのやや粘着質な音楽作りの中で、その端正なツィマーマンの ピアノは明快な自己主張をしています。その異質な2人の個性のぶつかり合いが、これ以上ない 緊迫したドラマを産み出し、ここに圧倒的な名演が誕生しました。その圧倒的なスケール感と 完成度の高さは、世に完璧と言われるポリーニの同曲盤の比ではないように僕には聞こえます。 すでにこの辺りまでくるとツィマーマンが大芸術家として大変貌を遂げつつあることが分かってきます。 持って生まれたリリシストとしての天分に、大柄なスケール感と風格が備わってきているのです。 1987年にマエストロ・小澤征爾と録音した、リストのピアノ協奏曲第1番、第2番他の演奏は、決して 優等生的ではない真の大芸術家としての風格を感じさせるヴィルトゥオーゾ風の演奏になっています。 しかし世紀の大ピアニスト、巨匠の演奏とは異なり、その演奏は細部まで徹底的に磨きぬかれた 完璧なもので、一つの音の不揃いもない、精巧な工芸品的な完成度を持っているのです。その緻密にして 大柄な彼の演奏スタイルは現在の彼の演奏の大きな特徴となっています。 1989年には再び、ブラームスの時と同じ、バーンスタイン指揮ウィーンフィルのバックを得て、 ベートーヴェンのピアノ協奏曲全集録音が計画通り、行われました。ツィマーマンは1975年ショパン コンクールに先だって、チェコのベートーヴェン・国際ピアノコンクールでも優勝しており、こういった 古典音楽にも非常に造詣が深いようです。この全集中、もっとも傑出しているのは、やはり第5番「皇帝」です。 この作品は、構成的に非常にしっかりした作品で、技術のあるピアニストなら誰が弾いてもある程度 「立派な」演奏になるため、その後のひと押しが決め手になるのですが、ツィマーマンは、 豊かなスケール感の中に瑞々しい感性を湛えながらも、凛とした引き締まった演奏を聴かせてくれます。 その若き巨匠とも呼ぶべき風格はこの作品に相応しく、まさしく「黄金の中庸」と 呼ぶに相応しい圧倒的な名演奏となりました。この傾向は第3番、第4番にも共通しており、これほど 音楽的・技術的に完成度の高い演奏は存在しないのではないかとさえ思います。これをきくと ポリーニの演奏でさえ、剛直でニュアンスに乏しいと感じてしまうのは僕だけではないと思います。 逆にアシュケナージの演奏は、ニュアンスは豊かなのですがツィマーマンのピアノのようなスケール感がなく、 小ぢんまりとしすぎているように感じます。ツィマーマンは、あらゆるピアニストの長所を全て 併せ持つ大アーティストである、と僕はこのベートーヴェンを聴いて確信 したわけです。 しかし、残念なことにこの全集録音計画進行中その完成を待たずして、バーンスタインが急逝して しまいました。ツィマーマンはこの大巨匠の遺志を受け継ぎ、残る第1番、第2番を自ら弾き振りして、 録音を完成させたのです。彼は大指揮者との録音の仕事を通して、既に指揮者としての能力も 身につけていたのです。 1994年,96年には、圧倒的な緻密な棒捌きで分解写真のような演奏を聴かせる大指揮者、ピエール・ブーレーズ とラヴェルのピアノ協奏曲ト長調、左手のためのピアノ協奏曲ニ長調を録音し、そのツィマーマンの より現代的な感覚を聴く人に伝える演奏となりました。ツィマーマンの透徹した現代感覚と造型感覚 は、おそらく本来の彼の天性の素質として既に備えもっていたもので、それが徐々に花開いてきた と考えた方がよいと思います。それゆえ、彼は現在、現代音楽に強い関心を持ち、前衛的作曲家、 ジョン・ケージの無音音楽「4分33秒」を演奏会でも取り上げるなど、個性派の名を欲しいままに している感があります。 1999年にはショパン没後150年の大企画として、ポーランド出身の音楽家で編成されたポーランド祝祭 管絃楽団を自ら指揮して、ショパンのピアノ協奏曲第1番、第2番を録音しました。彼の指揮も1つ1つの フレーズに対して思い描いている理想の音像を徹底的に楽員達に伝え、彼の中に宿るショパン音楽の魂を そのまま、聴く人に理想の形で伝えることができるようになるまで、ものすごい時間をかけて入念に徹底的に リハーサルを繰り返した跡が伺えます。普通の指揮者なら 何となく流してしまうような楽句に対しても細かく指示を与え、その表現の細部への徹底度も尋常ではありません。 演奏内容そのものよりも、よくここまでできるなあ、ということにまず感心させられてしまうでしょう。 もちろん演奏内容も非常に優れています。ショパンのピアノ協奏曲の管弦楽の面白さのみならず、ツィマーマン の弾くピアノも、非常に緻密で細部まで徹底しており、細かい一音一音にまで神経が行き届いています。 そしてそれをつなぎ合わせ、一つの大きな流れとして聞かせる卓越したバランス感覚!!これを聴いてしまうと 世に出まわっている同曲盤がどれほどいい加減でアバウトな演奏に聞こえてしまうことか。 もはや、ツィマーマンというピアニスト、この人は僕だけでなく、多くの人が「世界一のピアニスト」 と思っているのではないでしょうか。彼の才能、それはショパンコンクールに優勝できる、という レベルをはるかに凌駕するほどの偉大なものであったことが証明されつつあります。 こういった 超天才アーティストの今後に大きな期待を抱きながら、クラシック音楽を楽しめる僕たちの幸せは 他の何物にも代え難い大きな宝物であり財産というべきでしょう。
ツィマーマンの音楽観 世にショパンのスペシャリストは多いですが、ツィマーマンは、ショパンコンクール優勝直後から 「ショパン弾き」と呼ばれることに大きな抵抗を感じていたそうです。「ある特定の1人の作曲家に こだわるのは、芸術家として非常にもったいないことであり、危険でもあります」と彼は語ります。 その彼の主義は、そのまま録音の曲目に現れているのです。ショパンコンクール覇者としては、否、 超一流ピアニストとしては悲しいほどにショパンの作品の録音が少ないのはそのためです。 当時から、彼は自分の演奏に深みを増すために、演奏会の回数とレコーディングの機会を自ら厳しく 制限し、作品と向き合い掘り下げるための時間を十分に確保していたようです。 また、レコーディングのテイクを終えた後も、ある一定期間は専属のDG側に発売を許可せず、その演奏を 何度もプレイバックし、自分の耳で聴いていつどんなときでも納得のいくものであることを十分に確認する そうです。 こうした行為は、現在の商業主義,人気第1主義の風潮という時代の流れと逆行するもので、 ともすると話題性に乏しくなり、コンサートピアニストとしては「忘れられた存在」に なる危険性をはらんでいますが、CD等で聴ける彼の演奏水準の奇跡的な高さは、彼が自らに課した こうした厳しい自己鍛錬の賜物と言えます。 また彼は、様々な国の言語学に関心を持ち、数ヶ国語を同時に操る他、音響学、ピアノのメカニズムにも精通して いて、ピアノ調律の資格も持っているようで、調律の最終段階の微調整は、彼が全て自分の納得のいく ようにやっているそうです。 そのためかどうか、彼の弾くピアノの芸の細かさには思わず唸らされることがあります。ダンパーペダルを ゆっくり上げていくときに一瞬音量が増幅される瞬間がありますが、その効果も考えながら弾いている 箇所があるのには、驚きを感じます。最近、より細部へのこだわりが増し、思索的な演奏をするように なってきましたが、彼が今世紀、大芸術家としてどのような活動をしていくか、目が離せません。 ※Krystian Zimermanの邦語表記については、Krystianはクリスティアン、クリスチャン、 Zimermanはツィマーマン、ツィメルマン、ジメルマンなど複数の表記があり、 2016年現在、クリスチャン・ツィメルマンと表記されることが多いです。 僕自身はこの人をドイツ・グラモフォン盤でこの人の演奏を初めて聴き、レコードでは「クリスティアン・ツィマーマン」と 表記されていたことから、この呼び方が最もなじみがあります。 そのような訳で、当サイトでは「クリスティアン・ツィマーマン」で統一しています。
ツィマーマン・ディスコグラフィ(所有CD) 上記のように、ツィマーマンは安易な録音、演奏会を行うことを自ら厳しく制限しており、結果として名声の割に録音が極端に 少ないのですが、逆に言えば、それだけ今現在流通している彼の正規の録音を収めたCDは、一枚一枚、「自分の真価を世に問う」という 覚悟と決意を持って、送り出されたものということになります。そのため、ツィマーマンの演奏は、そのどれもが異常なほどの 高水準に達している名演奏となっています。
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