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ピアノ練習法・上達法〜誰も教えてくれなかった上達の方法

〜ピアノの魅力とは?〜

ピアノの音色は別格

皆さんはピアノが好きでしょうか?楽器の中でピアノが一番好きでしょうか?

僕がピアノを習い始めた経緯の章でも詳しく説明したように、僕はピアノの音にとりわけ強い興味と大きな感動を覚える、 今考えれば不思議な子供でしたが、ピアノの音には他の楽器にはない独特の魅力があります。 小学校に上がる頃の僕が「エレクトーンはどう」と母親に聞かれて、「ピアノがいい」と繰り返し叫んだのも、 ピアノの音が好きだったからです。僕にとってピアノの音色は他の楽器の音色とは比べ物にならないほど好きでしたし、 オルガンやエレクトーンなどの鍵盤楽器は、同じ鍵盤楽器でも全くと言っていいほど惹かれるものはありませんでした。 このような僕の音に対する感覚はかなり特殊であったようで、このような感覚があったため、 僕は交響曲や管弦楽曲などピアノが一度も登場しない楽曲に対しては、実に大学に入るまで自分から積極的に聴こうという姿勢には なれなかったほどでした。ここまで極端ではないにしても、皆さんもあらゆる楽器の中でピアノの音が一番好き という方も結構いらっしゃるのではないかと思います。

今、ピアノの音色について語りましたが、僕がピアノが好きな理由はそれだけではありません。 僕がピアノを愛する理由をここではいくつか示したいと思います。 いずれも一般的に色々言われていることですが、これはあくまで僕自身の感覚や実体験に基づく独自のものです。

1. ピアノの音色

ピアノの魅力と言えば、まず何をおいても「音色」ではないでしょうか。 何を隠そう僕自身、ピアノの音色に魅せられてピアノをせがんだくらいですから、そのような方は他にも大勢いると思います。 僕が大好きなショパン、彼は幼い頃、母親の弾くピアノを聴いたとき、わっと泣き出したそうです。 もちろんショパンはピアノの音が嫌だったのではなく、ピアノの音にあまりに感動して身が震えて哀しくなって、 泣く以外にその感情を処理する方法がなかったのだそうです。 さすがに僕はそこまでではなかったのですが、ピアノの音は僕にとって特別なものでした。 「ピアノの音はあくまでピアノの音、どんなに頑張ってもそれを超えることができないのがもどかしい、もっといろんな音を操りたい」 と言ってピアニストから指揮者に転向する大物音楽家も結構いますが、 それは結構なことです。ピアノの音よりももっと好きな音があるのなら、ピアノにこだわってもそこから素晴らしい音楽表現が生まれることは あまり期待できないからです。 それはともかくピアノの音色の魅力はその儚さではないかと思います。 これはピアノの音を出すメカニズムに秘密があります。ピアノは鍵盤楽器で、指で鍵盤を押すとその力がハンマーに伝わって、 そのハンマーが弦を打つことによって音が出ます。鍵盤を押す物理的な速さと強さと微妙なタッチの具合によって、 ピアノの音の「量」と「質」は様々に変化します。両足でペダルを踏むことにより音色をさらに自由に変えることができます。 これによってピアノの音色は「ピアノの音」という制約の中で無限とも言える色彩を付けることができます。 ピアノの音楽表現、芸術表現については、僕自身、確固たる持論がありますが、ここで述べると長くなりすぎてしまうため、 別の項目を立てて詳しく述べたいと思います。 とにかく、ピアノの音色は魅力的で、これはピアノという楽器の人気がある理由の1つではないかと思います。

2. ピアノの表現の可能性の大きさ

ピアノ以外の楽器の多くは基本は単音しか出せない楽器がほとんどです。 管弦楽のヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスなどの弦楽器、フルート、クラリネット、オーボエ、ファゴットなどの木管楽器、 トランペット、トロンボーン、ホルン、チューバなどの金管楽器、ティンパニなどの打楽器、 いずれも基本は単音で、基本的にはそれ自体で自己完結できない楽器がほとんどです。 一方、ピアノは一度にたくさんの音を出すことができます。これはオルガンやチェンバロなどの鍵盤楽器も同様ですが、 それに加えて、ピアノは打鍵の強さと速度を変えることにより、ピアニッシモからフォルティッシモまで 幅広いダイナミクスを付けることができます。 1人で操れる音の多さと多彩さ、ダイナミクスでピアノを超える楽器はないと思います。 ピアノの表現力はまさにオーケストラに匹敵するとも言われ、まさにピアノが「楽器の王様」と言われる所以です。

このようなピアノの特性のため、オーケストラの原曲がピアノ曲として編曲されることも多く、 ベートーヴェンの9曲の交響曲はフランツ・リストによりピアノ曲として忠実に編曲されていますし、 同じ作曲家がオーケストラ曲をピアノ曲に編曲したり、その逆をしたりすることもあります。 これはオーケストラでは大勢の演奏者が必要で自分の意のままに音楽を操ることができないのに対して、 ピアノであればピアノの楽器とピアノを弾く技術を備えた自分の体1つがあれば、その音楽を再現できるという ピアノならではの特性を考えた結果だと考えられます。 例えば、ベートーヴェンの交響曲を聴いて、自分で表現してみたいと思ったとき、他の楽器の奏者は その中の1つのパートしか弾けませんが、ピアニスト・ピアノ弾きはリスト編曲の楽譜でも入手してそれに従って弾くことで、 ベートーヴェンの交響曲をフルに「演奏」することができ、表現意欲を満たすことができるのですから、たまらなく気持ちよいはずです。

このように、ピアノという楽器は基本的にアンサンブルを必要とせず、 自分1人で自己完結できるところが大きな特徴でもあり魅力でもあります。 管弦楽などでは指揮者の指示に従う必要がありますし、楽団員の一員としてその役割を忠実に果たすことが求められますが、 ピアノ独奏の場合は他の奏者や指揮者に合わせる必要はなく、まさに自分が指揮者であり演奏者でもあり、 自分の好きなように、まさしく自分の意のままに音を操ることができます。 「そういう音楽じゃないのに・・・」と思いながら渋々指揮者の指示やレベルの低い楽団員に合わせる必要もないわけです。 他の人たちと力を合わせて1つのことを成し遂げるというのも素晴らしいことですが、 それよりも個人技・個人プレイが好きで自己完結できるような物事に強く惹かれる人がピアノ弾きには多い印象ですし、 何を隠そう僕自身、そういう傾向が顕著です。 そのためか、ピアノ弾きはともすると独りよがりで協調性に乏しい人間になりやすい傾向がありますが、 これはピアニスト、ピアノ弾きの「職業病」と言ってもいいように思えるほどです。 ただし、これはあくまでピアノに限ったことで、ピアノを離れたところでの振る舞いは僕の場合は全く関係ないです。

3. 作品の多さ

ピアノの名曲は非常に多いです。例えば皆さんが好きなショパンはその生涯に作曲した曲のほとんどがピアノ曲でしたし、 他の分野で名を成した作曲家もピアノ曲を全く作曲しない作曲家の方がむしろ珍しいくらいで、 ベルリオーズくらいでしょうか。他にワーグナー、ブルックナーなどもその類なのかもしれませんが・・・ 逆に言えば、古今東西の名作曲家、バロック時代のバッハ、スカルラッティから古典派のハイドン、モーツァルト、 ベートーヴェン、ロマン派のシューベルト、ショパン、リスト、シューマン、メンデルスゾーン、ブラームス、チャイコフスキー、 近代のドビュッシー、ラヴェル、スクリャービン、ロマン派作風のラフマニノフなど、全て数々のピアノ名曲を生み出しています。 その他にも大勢の作曲家がそれぞれ名曲を生み出していますし、中には1曲だけで有名になり歴史に名を残した作曲家もいるほどです。 これらの作品を1人の人間が制覇するのは到底不可能と思いますが、逆に言えばピアノ曲のバラエティーはそれだけ豊富だということで、 ピアノの世界はそれだけ広く深いということです。 これもピアノの大きな魅力です。 ピアノを習い始めたばかりの頃は目の前にこれほど広く深い世界が広がっているのが実感できないかもしれませんが、 ピアノを続けていけば実感できるようになってくると思います。

4. 演奏の難しさ

ピアノって難しい!と感じる人は多いと思います。「多い」というよりほとんどの方が難しいと感じていると思います。 白鍵と黒鍵があり白鍵の間隔と黒鍵の間隔は微妙に違う(黒鍵の間隔の方が若干広い)し、 それを長さや太さの違う左右の10本の指で弾かなければならず、そこにペダリングが加わるのだから、 難しくて当然というものです。 また楽譜も基本は2段譜でト音記号と上段とヘ音記号の下段の楽譜を同時に瞬時に読めなければならず、 その楽譜を覚えなければならない、弾くときも自分の出す音とハーモニーに注意してバランスを整えなければならない、 リズムにも注意して、全体のバランスを考えて、最終的に仕上げる際には単なる「音の羅列」にならないように 音楽的で表情豊かな演奏に仕上げなければならない・・・ピアノを弾くということは実に知・情・技が 高いレベルでバランスが取れていることが要求されます。 それを達成するには強い意志の力と集中力、根気、持続力が求められます。

ピアノはよほどの天才でない限り、長年のたゆまぬ努力の積み重ねが必要となる楽器です。 これは他の楽器についても言えることなのですが、ピアノの場合は前述したような高いハードルがいくつもあるため、 特に難しい楽器です。幼児期から習い始めた場合でも、技術的に一応の完成を見るのに早い人でも10代前半(天才型)と10年近くかかりますし、 上達の遅い人は永遠にその域にたどり着けないこともしばしばです。 正しい方法で正しい努力の仕方をしても、上級者になるのに平均10年ほどかかるのです(この平均は脱落した人を含んでいませんから、 平均とはいえ、10年で上級者になれるのは相当のピアノ優等生です)。

これはピアノの魅力と一見関係ないように思えるかもしれませんが、目標が高ければ高いほどやる気が出るという僕のような人間にとっては まさに魅力そのものです。僕は小学生のある時期にショパンの「英雄ポロネーズ」を初めて聴いて、頭を金槌で殴られたかのような 大きな衝撃を受けて、その瞬間、「絶対にこの曲が弾けるようになりたい、それまで絶対にピアノを続ける」と誓ったのは、 管理人のピアノ歴やピアノ練習奮闘記でも詳しく述べた通りです。 一朝一夕に達成できない目標でも、目の前にある小さな目標を1つ1つクリア・達成していけば、やがて大きな目標が近づいてくる と信じて日々たゆまぬ努力を続ける、という根気強さが必要になりますが、 そのようにして確実に上達していること、目標に近づいているのが実感できると、さらにやる気が湧いてきます。

ショパンの様々な作品が一応技術的には弾けるようになってもなお、僕はそれをいかに弾くか、 どのように弾けば自分の感動や思いを聴く人に伝えられるか、ということを意識しながら日々ピアノに向かっていました。 本当にピアノというのは奥が深い世界で、上を目指せばきりがない世界です。 これこそ、ピアノの大きな魅力と言ってよいと思います。

以上、ピアノの魅力、ピアノが他の楽器と大きく異なる特徴について、僕自身の考えを述べてきました。 中には僕自身の偏見もあるかと思いますが、とにかくピアノの世界は果てしなく広く奥が深く、楽しいものです。

そのような域に到達できるように、皆さんもピアノを始め、続けていきましょう!

初稿:2005年9月
第2稿:2017年6月13日(全面書き換え)

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