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ピアノ練習法・上達法〜誰も教えてくれなかった上達の方法

〜音楽的才能とは?〜

「あの人は音楽の天才だ」、「あの人は音楽の才能がある」、という言い方をよく耳にしますが、皆さんは「音楽的才能が ある人」を頭の中に思い描いたとき、具体的にどのような人をイメージするでしょうか? 一度聴いただけで9つのパートを完璧に聴き分けてしまったモーツァルト、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番の ある部分を一度聴いただけで完璧にピアノで再現してしまったサヴァン症候群のある人、大抵の曲は一度弾いただけで たちどころに暗譜できてしまうというポリーニ(マウリツィオ)、12歳でショパンのピアノ協奏曲をオーケストラをバックに演奏して しまったキーシン(エフゲニー)、その他、クラシック音楽界には、一介の凡人の僕を驚愕させる驚異の才能 は枚挙に暇がないほどですが、この中で言われている「音楽的才能」の意味には多くの異なる概念があることに、皆さんは 気づいているでしょうか?そして、それらの意味を混同して一まとめにして「音楽的才能」という言葉を使っていて、 そのことに気づいていない方も多いのではないかと思います。 そこで、ここでは一般に「音楽的才能」と呼ばれているものに、どのような種類の異なった才能が含まれているのかを 1つずつ考察していきたいと思います。

1. 初見能力:重要度★★★
これは訓練することによる「慣れ」も大事な要素ですが、異常な初見能力は明らかに「才能」の領域に入ります。 音符がおたまじゃくしにしか見えない人にとって、初見能力に秀でた人は、まさしく超能力を持った宇宙人に見えるかもしれないですね。 天性の初見の能力を授かった人は、ピアノの上達において非常に恵まれたスタートラインに立てることは 言うまでもありません。但し、楽譜を読むのが遅い人もあきらめるには早すぎます。冒頭にも述べたとおり、この能力は 訓練、慣れによって、ある程度引き上げることができるからです。その具体的な方法については、後に別コーナーを 作って詳しく説明する予定です。

2. 暗譜力(記憶力):重要度★★★
暗譜力、記憶力が優れた人は非常に恵まれた人と言えます。音楽的才能という高尚な才能の中にあって、非常に 現実的で実際的な才能なので軽視されがちですが、ピアノ演奏は頭と身体を総動員する全身作業であるだけに、 このような「頭の良さ」は非常に大きなメリットとなります。実際、プロのピアニストは一晩の演奏会で、 楽譜にして150ページ近い分量を暗譜で演奏しなければならないため、記憶力の悪い人には務まらない仕事とさえ 言えます。音楽的感覚やテクニックに恵まれていても、この記憶力がネックになっている人もいるのではないか、 と考えられますが、訓練次第では人並みレベルまで引き上げることが可能なので、致命的にはならないと個人的には思います。

3. 音感(絶対音感):重要度★★★★
これも究極的には才能の領域に入るものと考えられます。僕自身は個人的には、絶対音感は生まれ持った素地に 左右されることが多いと考えています。一般には絶対音感の獲得年齢は6歳が上限でそれ以降は普通身につかないと 言われていますが、ここで大切なのは、ラベリング能力ではなく、各調性毎の微妙な色彩感の違い等を感覚的に 感じ取れる素地だと思っています。これは一般に、絶対音感の一種のように考えられていますが、絶対音感の獲得年齢 を過ぎてしまった人でも、生まれ持った素質がある人なら、ごく当たり前のように感じながら何気なく過ごしている のではないか、と思います。そういう素地がある人は、ピアノ演奏に相応しい音感に恵まれた人と言えるでしょう。 但し本人自身はそのことに気づいていないことが多いのではないか、と僕は思います。

4. テクニック(技巧、技術):重要度★★★★★
皆さんがピアノを習うのに多くの時間を費やすのが、この「テクニック」の習得であることに異論がある人は少ないのではないか と思います。ピアニストは何故毎日何時間もピアノに向かうのか、それは音楽的課題の発見、新たな表現の可能性を探るという 目的もさることながら、テクニックの維持と向上も大きな部分を占めるのではないか、と思います。 「技術よりも音楽が大切だ」と言う声も多く聞かれますが、自分で感じ取った素晴らしい音楽を自分の理想そのままの 姿で聴く人に伝えるためには、非常に訓練されたテクニックが必要になります。あくまで音楽表現の手段ではありますが、 この手段が備わっていないと、何を表現することもできません。

5. 音楽的センス(音楽性):重要度★★★★★特上
今まで初見能力、絶対音感、暗譜力、テクニックについて見てきましたが、そのような能力は誰が見ても「異常な才能」 として驚愕する人多発間違いなし!といった素人目にも非常に分かりやすい才能ですが、この「音楽的センス(音楽性)」は、 判断基準が非常に主観的かつ曖昧で、それだけに分かりにくい才能とも言えます。しかし、ここに挙げた才能の中では最も重要だと 個人的には考えます。極端な話、曲を仕上げる速さ、技術的な正確さ、確かな暗譜力といったものが備わっていたとしても、 肝心の演奏が、音楽的センスに乏しく表現力のない演奏であることは十分にあり得ることだと思います。ソルフェージュの 能力が抜きん出ていて天才性を期待されていたのに、音楽的感覚、センスがないというのは、ピアノを演奏する人にとって まさに悲劇です。でも、もちろん、音楽的センスは、訓練によって磨き上げることができる(と僕は思います)ので、 落胆せず、意識的に取り組むことが大切だと思います。

以上、5つの異なる才能について見てきましたが、1、2については「あれば恵まれたスタートラインに立てるけれど、別に 特別優れていなくても大丈夫」であると思うのに対して、3〜5については、プロのピアニストを目指す人の場合、 「これがないと非常に不利になる」と僕は思っています。但し、趣味でピアノを弾く場合にはそれほど神経質に考える 必要はないと思います。あくまで、ピアノの才能と呼ばれているものにも、いろいろな才能があって、そのような 才能を総動員して音楽が作り上げられていく、という事実に気づいて欲しいために、このような分類と説明を試みることに した次第です。

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