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ピアノ練習法・上達法〜誰も教えてくれなかった上達の方法

〜要因その3・楽譜が覚えられない(暗譜できない)〜

「楽譜を覚える」の意味について
楽譜がなかなか覚えられない、という悩みも上達を阻害する主要な要因の1つではないかと思います。 「楽譜を覚える」という言葉は、狭義には「暗譜」ですが、ここでは「暗譜」に加えて、その前段階を含む 概念として考えていただきたいものです。

普通、1曲を自分のものにする課程では、次のような段階を踏むのが一般的ですね。

0. ピアノに向かう前に一度楽譜を眺めてできる限りの情報を仕入れる
1. ピアノに向かって楽譜の音を実際に出して音を取り、正しい音だけを記憶する
2. 1の作業で定着した音の断片を少しずつつなげていく
3. 徐々に滑らかに弾けるようになっていく
4. 楽譜を見ながらなら止まらずに弾けるようになる
5. 暗譜で弾けるようになる

段階0の作業の意義
普通のピアノ学習者の場合、上記の0の作業を省くことが多いですが(僕もそうです)、 これは専門的には大切な作業だそうです。その意義については別の項目を作って詳しく説明する予定ですが、 一言で言えば、いきなり次の1の作業から入った場合、音取りの作業で間違った音を弾いてしまう回数が 増える危険があるからです。この場合、その間違いは直ちに修正されますが、一度間違った音を弾いてしまうと 脳のどこかにその記憶が永遠に眠り続けることになります。このような部分は、普通に一度で弾けた部分に 比べると、記憶の定着度が高まらないことが僕自身の経験則として導き出されました。 このような事態を未然に防ぐ意味でも、段階0の作業は非常に重要なわけです。 (それでも僕は所詮素人ですし、面倒なため省略してしまう場合がほとんどです)

「楽譜を覚える」とは?
段階1から4までは、楽譜を見ながら、視覚(目)、聴覚(耳)、触覚(手)、記憶力(脳)を頼りに、 正しい記憶の断片を正しい方法で接続していく作業になりますが、このとき、演奏者は、色々な感覚を総動員して、 その曲を弾くために必要な情報を収集、定着させています。そのメカニズムは複雑極まりないものですが、 一つ言えることは、楽譜を見ながらでも全く弾けなかった曲を、楽譜を見ながらであれば完全に弾きこなすことが できる、という状態にまで持っていくことができる、という事実です。 これは考えてみれば不思議なことです。何故かと言うと、初めは楽譜を見ても全く弾けなかった曲が楽譜を見ながらなら 弾けるようになる、但し、楽譜を外されると途中で先が全く分からなくなる、ということは、段階4の状態で、 演奏者は楽譜から演奏に必要な情報だけを抜き出す、という高度な作業をしていることになるからです。 おそらくこの段階で、演奏者は楽譜の中の情報の8割以上は消化しているのでしょうね。でもその残りの部分で 必要な情報が入手できるかできないかで、演奏の続行が可能かどうかが決まってしまうのでしょうね。 これは、記憶のメカニズムの神秘だと思っています。皆さんも不思議だと思いませんか?

ちょっと前置きが長くなってしまいましたが、この辺で本題に移りたいと思います。 皆さんは今習っている、または学習している曲の中で暗譜で弾く必要がある曲はどれほどあるでしょうか? 発表会等、公の場、人前で演奏する場合は、もちろん暗譜の必要はありますよね。でもそれ以外、 例えば、皆さんが散々やらされているツェルニーの練習曲などはどうですか? 原則として暗譜でなくてもOK、ですよね。つまり、実際に手を付ける曲のうち、暗譜を強要されない曲が かなりの割合を占める、という事実を再認識するべきです。この場合、段階4までいければ、 その曲は合格、となりますね。すなわち、できるだけ短い時間で段階4まで持っていくことこそが最も重要で、ここでは、 その状態にまで持っていくことを「楽譜を覚える」と言いたいわけです。 但し、ツェルニーの練習曲は、指示テンポが非常に速いですから、 楽譜を見ながら弾いているうちはまだ完成からは程遠く、テンポを上げるための弾き込みをしているうちに 自然に暗譜してしまう、という人もいるでしょうね。ツェルニーの練習曲を弾き込みの対象に使うのは、 個人的にはあまりおすすめしたくないのですが、指の訓練にはいい方法ではありますよね。 この良し悪しは別として、ピアノでは、楽譜を見ながらでもよいから一応弾ける状態にまで持っていく能力が 非常に大切になります。

楽譜の覚え方(暗譜も含めて)
楽譜を覚える能力は、譜読みの能力とも深く関わってきますが、譜読みの能力が情報のインプット力だとすれば、 楽譜を覚える作業は、記憶の保持能力とも言えます。短期記憶を中期記憶に格上げする作業と言ってもよいと思います。 これは訓練で鍛えるしかないですが、 とにかく繰り返しひたすら暗記する単純作業と考え、記憶の定着に努めるのが最善にして最短の近道だと思います。 やはり、ピアノにおいても、学校での受験勉強、あるいは資格試験の勉強と同様、記憶力、記憶力強化のノウハウは 生かされると個人的には思っています。

但し、楽譜の覚え方のコツが全くないわけでもないので、少しだけ僕の持論を書いておきたいと思います。 よく、「繰り返し弾いているうちに指が覚えてしまう」とか「楽譜を見なくても、何も考えずに指が勝手に動いてしまう 状態になるまで繰り返し弾いていればいいんでしょう?」などと言う人がいますが、これほど頼りない記憶法はない と思いませんか?このような場合、一度暗譜が飛びそうになった場合、そこから立て直すことができるでしょうか? 怖いのは、前の部分との流れで記憶している場合です。この場合、途中から弾こうとすると、訳が分からなくなってしまう という危険が大きいのですが、これは皆さんも経験的によく知っていることと思います。 このようなことも含めて、楽譜を記憶する上で注意すべきポイントを以下に列記しておきます。

1. 曲の中の途中、色々な部分から弾き始める練習をする
2. 音(旋律、和声)で記憶する
3.鍵盤の位置で記憶する
4.楽譜そのものを画像として記憶する
5.曲の構成で記憶する

1は、上で説明した通りです。2は、絶対音感があれば、かなり頼りになる記憶方法です。 3は、指の動きではなく、どの鍵盤を押さえればよいかを1つ1つ丹念に記憶していく方法です。 指の動きは、流れで覚えるという、いわば「線的な」記憶方法ですが、鍵盤の位置は、 それ自体1つ1つが「点」であるため、記憶の信頼度は抜群です。これは重要な記憶法です。 4は、楽譜を写真のように記憶してしまう方法です。記憶力がずば抜けている人の場合、 この方法が意外に役に立つようですが、残念ながら僕にはそれほどの記憶力はないです。 楽譜についているコーヒーやしょうゆのしみの色や形まで覚えてしまう、というツワモノもいるようですが、 その精度の高い記憶力には呆れるほかないです。 5は、誰もがやっている方法ですが、念のため一応挙げておきました。例えばショパンのワルツ7番の場合、 曲の構成は、ABCBABですが、三度登場するBの中で今どの部分を弾いているのか、ということを 常に意識しながら弾く、ということです。これは当たり前すぎましたかね。

上記の暗譜法の中では、特に1と3が重要だと思います。皆さんも是非、実践してみてください。

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