ショピニストへの道・TOP > ピアノ練習方法・上達法

ピアノ練習法・上達法〜誰も教えてくれなかった上達の方法

〜ピアノ上達を阻む要因その5・肉体的条件の問題〜

ピアノの話題において、肉体的条件とは、主に手の大きさのことを言います。 場合によっては必要な筋力にも言及する必要がありますが、ほとんどの場合、問題ないようです。 従ってここでは、手の大きさの問題に絞って話を進めていきたいと思います。

現在のピアノの鍵盤の規格(サイズ)は西欧の成人男性向け
「もっと手が大きかったら…」というのは、おそらくピアノを弾くほとんどの人が感じていることではないかと思います。 ピアノの発祥の起源は言うまでもなく西欧で、しかも鍵盤の大きさは西欧の成人男性にちょうど良いサイズに 定められており、これが国際規格になってしまったという経緯があります。従って、日本人、 特に女性や子供がこれと同じ規格のサイズのピアノを弾くのは相当無理があると考えるのが普通ですね。 僕は手の大きさは日本人としては普通だと思いますが、それでももう少し手が大きかったら、きっともっと楽に ピアノが弾けるだろう、と思っており、実際、曲の中の特定の部分が上手く弾けない場合、その原因は 手の大きさが足りないことだろうと思うことが頻繁にあります。 しかし、そのような現状を当たり前のように受け入れている今の日本のピアノ教育界で、この状況を 改善しようという動きが全く見られないのは、残念という他ないですね。 手の小さい人はピアノを弾く資格がない、とでも言うのでしょうか?これは理解に苦しむことですが、 仮にそのような現状に甘んじるとして、では果たして、今の規格のピアノでは、どれくらいの手の大きさがあれば 問題ないとされているのでしょうか?

手の大きさとピアノ
専門的にピアノを勉強する上で必要とされる手の大きさには、専門家の間ではある程度、共通の認識があるようです。 一般的な通説では、次の条件を満たすことが必要であるとされています。

1. 白鍵のオクターブを余裕をもって上から押さえられる手の広がりを持つ
2. ハ短調の4和音(ド、ミ♭、ソ、ド)を無理なく押さえられる手の伸縮構造を持つ

一応、この2条件をクリアしていることが、ピアノ演奏技術を首尾よく習得できる必要条件と、ピアノ教育者の間では考えられているようです。 条件2は条件1を含むように思えますが、1はオクターブが上から押さえられる必要があるのに対し、 2では鍵盤のやや手前からでも届けば一応OK、ということなのでしょうか?明らかに条件2の4和音も 上から押さえられることが絶対に必要になると思いますけど…。 皆さんはどうだったでしょうか?条件2はクリアしてますか? ところで、ピアニストの横山幸雄さんは、自身の著書「ピアノQ&A」の中で、専門的にピアノを弾くのに必要な 最小限の手の大きさは、9度が押さえられる大きさだとしています。9度が届く大きさであれば、それより鍵盤1つ分狭い オクターブを押さえるのに幾分余裕が生まれるからだ、という旨、説明していました。これはまさしくその通りだと 思いました。ただ、このような著書の中では自分の本音を出すことを著しく制限されてしまうため、これが横山さん自身の 本音かどうかは分からないです。僕自身の本音を書いてしまうと、ピアノを弾く上では、一応曲がりなりにも (手前からでも良いから)白鍵の10度届く大きさは絶対必要だと感じています。この場合、黒鍵の10度は 手を橋げたのようにして比較的余裕をもって届きますし、親指-黒鍵、小指-白鍵の短10度も楽に届きます。 これは僕自身の手の大きさの話ですが、僕自身これでも手の大きさが足りないと感じることがあることを考えると、 これが最小限の大きさだと考えられます。 但し、これは、あくまで、ピアノを専門としてやっていく上で必要な手の大きさですので、 ピアノを趣味で弾いている皆さんは、これより小さいからと言って悲観する必要は全くないと思います。 リストやラフマニノフを弾くのは難しくても、モーツァルトなど、手が小さくてもきちんと弾ける曲は たくさんあるので、そのような曲を弾いて楽しめればそれでよいのではないか、と思っています。

それでも納得できない今のピアノの鍵盤サイズ
故園田高弘氏は、音大の試験官をしているとき、「どんなに良い演奏をしても、手が小さい人は不合格にする」 と語っていたようです。それは、手の小さい人を差別扱いしているのではなく、むしろ逆に、手の小さい人に これ以上、ピアノで苦しい思いをさせたくない、という親切心からだということで、この話を聞いたとき、 僕も目から涙が流れ出たのを覚えています。園田氏のこの考え方は僕も大いに共感できます。 手が小さい人は、手が大きい人が楽々弾きこなせるパッセージでも、手の角度や指の広がりを変えたり 各指の力の入れ具合や脱力を検討したりと、涙ぐましい努力をする必要に迫られることがあるようです。 手が小さいというただそれだけの理由で、ピアニストとして不利な立場に置かれるのは、本人にとっても 理不尽ですし、それを見ている指導者、教育者も辛いと思います。園田氏は、それまでの指導経験から この事実を知っており、「手の小さい人をこれ以上ピアノで辛い思いを させたくない」という、教育者として最大限の親切心から、手の小さい人がピアノを専門に勉強することを 断念させるのだと思います。

本当にピアノというのは不公平な楽器ですね。 音楽性、音楽的感覚、リズム感、音感、テクニックなどの才能、ピアノが好きという熱い思いと純粋さ、 向上心、集中力、忍耐強さ、色々持ち合わせていても、手が小さいというただそれだけの理由で断念しなければ ならない、という事実は、理不尽極まりないと思います。作曲家の故中田喜直氏も、このことに関して 強い思いがあるようで、そのことについて「音楽と人生」という書籍の中で、熱く語っています。 洋服や靴にLサイズ、Mサイズ、Sサイズ、SSサイズがあるのに、ピアノがLサイズしかないのはおかしい、 と異議を唱えています。日本人女性の手は総じてSサイズかSSサイズなのに、Lサイズのピアノを弾きこなせるわけがない とも主張しています。手が小さい人は、今の鍵盤サイズのピアノを弾くのに、かなり無理をして手を広げながら 弾くことになるため、本来の正しいピアノ演奏法が身に付かない、と言うことです。 ピアノ教育者は、脱力、弛緩の必要性を散々説いておきながら、それができる余裕がない今の大きな鍵盤サイズの ピアノを弾け、と強要するのは、あまりにも残酷と言うべきでしょうね。ピアノの教育界を、僕たちの力で 変えていく以外に道はないのかも、と思いました。僕には何もできないですが、こうして、一弱小サイトの管理人として ピアノ教育界に現在のピアノ鍵盤サイズの規格の再検討を是非お願いしたいと思っています。

〜サイト内コンテンツ一覧〜

PR

ピアノ練習法・上達法メニューに戻る