ピアノ練習法・上達法〜誰も教えてくれなかった上達の方法 | |
〜教本(練習曲)との正しい付き合い方〜趣味でピアノを楽しみたい大人の場合〜
レパートリーの中の練習曲の位置づけ 前項では、ピアノ学習者の場合の、教則本(練習曲)との付き合い方について述べましたが、 ここでは、ピアノ学習を終えた方、及び独学でピアノ上達を考えている方、つまり趣味でピアノを楽しみたい大人の方を対象に、 練習曲との付き合い方について僕自身の考えを述べたいと思います。
前項でも述べたように、練習曲と言って皆さんが真っ先に思い浮かべるのは、ツェルニーではないかと思います。 ハノンもなじみ深いですね。このような練習曲をピアノレッスンで指定されているのではなく、 独学の方で自主的に練習に取り入れている方はどのくらいいるのか、僕には分からないのですが、 その場合、気を付けてほしいのが、皆さんのレパートリーの中でのその練習曲の位置づけです。 その練習曲はおそらく一回弾けばそれで終わりで、その後、ほとんどというより全く弾かない可能性が高い曲です。 その一方で、練習曲というものの役割から言えば、指の訓練として、指に負荷がかかるほどのテンポで弾かなければ 技術上の上達があまり望めないことになります。 つまり、楽譜を見ながら何とか弾けるという程度では指に負荷をかけるという練習曲の役割を果たさないため、 少し時間をかけることになりますが、そうして時間をかけて仕上げたその1曲は、それで終了となり、 その後、生涯の長きにわたって一度も顧みられることなく記憶の彼方に葬り去られるわけです。 せっかく時間をかけて仕上げた曲なのに、それがその後のレパートリーに加わらないというのは、 何とももったいない話です。さらに独学者の場合は、毎日の生活が勉強や仕事で追われて、 なかなか思うように練習時間が捻出できないという問題も抱えていることが多いです。 つまり、僕が何を言いたいかと言うと、独学者の場合、一生のレパートリーにするつもりがない曲に、 日々の少ない貴重な練習時間を充てるのは極めて効率が悪く、貴重な時間の多くを無駄にすることになるということです。 とは言っても、初級終わりから中級にかけて、基礎を身に付ける教則本として他に代わる系統だったものがあまり見当たらないこともあり、 ツェルニー100番の半分 → ツェルニー30番 この辺りまでは、 独学あるいは大人から始めたあるいは再開した方でも、一応の基礎を身に付ける上で、取り組んでおいて決して損はないと思います。 ツェルニー30番練習曲は一応中級ということにはなっていますが、指定のテンポは皆さんの思っている以上です。 その指定のテンポで弾ければ、古典派に関しては上級者と言ってもよいくらいです。 ここまで弾ければ趣味としての基礎は十分だと思いますから、あとは個々の音楽的嗜好に応じて、それぞれの作品を弾きながら、 難所を抜き出しての部分練習を繰り返すことで、自分の求める技術が自然に身についていくと思います。 ツェルニーはベートーヴェンの弟子でありリストの師匠でもあったため、 ベートーヴェン−ツェルニー−リストという系譜があり、ベートーヴェンやリストの難曲をバリバリ弾きこなすためには、 有効な練習曲とも言えるわけで、ショパンが最も得意と自称する僕でさえ、ツェルニーで訓練されて育ってきたという経緯から、 その一時期はショパンよりもベートーヴェンに向いていると言われたことさえありました。 本当はショパンの曲が好きで、ショパンを最も得意にしたいと思っていたのに、これは何とも皮肉なことです。 このような僕の経験をもとに、趣味でピアノを楽しむ皆さんに、今一度よく考えてもらいたいことがあります。 それは皆さんが今現在、どのようなスタンスでピアノに向かっていて、今後、どのような楽しみ方をしたいのか、 最終的にはどのような作曲家のどのような作品を弾けるようになりたいのか、です。 もし、皆さんがベートーヴェンやリストの作品にあまり興味がなく、 ショパンやドビュッシーのようなロマン派から近代にかけての作品を美しく弾きたいという目標をお持ちでしたら、 残念ながら、ツェルニーの練習曲はあまり役に立つとは言えないです。 ツェルニーは音階やアルペジオといった、古典派の作品を弾く上で最重要となる基礎技術の上達に焦点を絞って書かれていますが、 ショパンの場合、音階やアルペジオが速く正確に弾けるようになったからと言って、それで弾けると言うほど単純なものではなく、 複雑極まりない動きの組み合わせによって成り立っている、極めて「危うい」音楽です。 これはツェルニーの練習曲ではカバーしきれないもので、「ツェルニーの練習曲をしっかり弾けるようになったからもう何でも弾ける」 というとんでもない誤解、錯覚が、ショパンを弾く上で非常に大きな弊害となりうるということです。 このような事態を避けるためにも、ツェルニーの練習曲は目的と必要に応じて使い分けていただきたいのです。 以上のことをまとめると次のようになります。
趣味でピアノを楽しみたい大人の皆さんの場合には、 趣味でピアノを楽しんでいる皆さんは、必ずしも練習曲に縛られる必要はないと思います。 何よりもピアノを楽しむことが大切ですからね。
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