ピアノ曲の難易度とは?
難しい曲を華麗に弾きたい・・・これは日々ピアノの練習に励んでいる皆さんの誰もが抱く強い思いではないかと思います。
その「難しい曲」というのは例えばショパンの幻想即興曲、革命のエチュード、英雄ポロネーズであったり、
もう少しマニアックになってくるとバラード、スケルツォであったり、あるいは他の作曲家では、リストの愛の夢第3番、ラ・カンパネラ、
ベートーヴェンの「月光」、「悲愴」、「熱情」、「テンペスト」、「ワルトシュタイン」であったりすると思いますが、
これらの作品は一体どれくらいの難易度で、今の自分があとどれくらい頑張れば到達することができるのか、
皆さんもきっと知りたいのではないかと思います。
全音ピアノピースの難易度表は参考になるのか?
ピアノ曲の難易度を考える際、皆さんは何を指標にしていますか?僕はピアノ学習当時、インターネットがなかったため、
もっぱら「全音ピアノピース」の裏表紙に掲載されている難易度表を見ながら自分なりに難易度について考えていたため、
今でも主だった曲は怖いくらい正確に覚えています。
全音ピアノピースの難易度表では、
難易度A:初級、難易度B:初級上、難易度C:中級、難易度D:中級上、難易度E:上級、難易度F:上級上
となっていて、その更に一昔前は同じ作品に対して、
難易度A:初級、難易度B:中級、難易度C:中級上、難易度D:上級
という4段階に分けられていた時代もあり、僕のピアノ学習当時はちょうどその過渡期でした。
僕は当時からこの難易度表に対して疑問を抱いていて、より具体的に言えば、
ショパン、リスト、シューマン、ベートーヴェンなどの古典派後期以降、ロマン派にかけての超一流作曲家の作品は
軒並み難易度ランキングを底上げする傾向があるように感じていました。
極端な例で言えば、ショパンの雨だれの前奏曲やノクターン第2番は難易度Eとなっていますが、
これらは純粋な技術面から見れば、モーツァルトのトルコ行進曲(難易度B)よりも明らかに易しく
(この点、モーツァルトは難易度的には不当に低く扱われています。モーツァルト=軽いという先入観のためでしょうか。)、
これは実際に弾いたことがある人でなければ分からないことです
(それでは全音ピアノピースの難易度は何を基準にしているのか、
実際に弾いた人が付けたものではないのではないかという疑問も当然湧くのですが、その真相は僕には分かりません)。
難易度Eが難易度Bよりも易しいというのでは、一体何のための難易度表なのか、
そもそもその存在意義が疑問視されても仕方がないというものです。
また多くのピアノ名曲は難易度D以上であり、難易度Fがかなりの割合を占めるので、
この難易度Fを細分化することも重要になってきます
(例えばショパンのバラード・スケルツォは全音ピアノピースにはありませんが当然全曲難易度Fです。
その中でもそこには確かな難易度の差が厳然としてあり、それを細分化することが必要というわけです)。
僕はインターネットの比較的初期に当サイト「ショピニストへの道」を立ち上げ、
そこで「全音ピアノピースの難易度は当てにならない」と暗にほのめかしていました。
当サイトの中で「ショパン・ピアノ名曲の体感難易度」というページが当サイトの「顔」とも言える非常にアクセス数の多い
人気ページになっているのを考えれば分かるように、
ピアノを弾いている皆さんがショパンの名曲の難易度に強い関心を抱いているのが分かりますし、
もしかしたら僕自身の影響も大きいのかもしれないのですが、
今ではネット上の至る所で、全音ピアノピースの難易度を疑問視する声が聞かれるようになりました。
ある匿名巨大掲示板では、主だったピアノ曲の難易度に偏差値を付けようという試みがなされているようで
僕も何度かのぞいたことがあるのですが、残念ながら明らかに的外れな偏差値が付けられている曲が少なからずあり、
改めて正確な難易度を付した表を作ることの難しさを実感させられました。
ピアノ曲の難易度を付けることが難しい理由とは?
各曲に正確な難易度を付けることが難しい理由として、次の2点が挙げられます。
@多数の作品の難易度の相対比較は1人のピアノ弾きの中でしか行えない
(例えばA、Bの2人がいて、Aが感じる幻想即興曲の難易度とBが感じる革命のエチュードの難易度を比較することができないということ)。
Aある特定の曲に対して個々人が感じる難易度には個人差がある(僕はこのことを当サイトで「体感難易度」と表現しています)。
難易度の相対比較が特定の1人のピアノ弾きの中でしか行えないとなると、
とにかくたくさんの曲を弾きまくっている人が1人で難易度表を作るしかないことになります。
しかも各曲に対して感じる難易度には個人差が厳然としてあるため、
その難易度表は他の人にとっては異なるものになる可能性が高いわけです。
「そうは言っても実際に難しく聴こえる曲は難しいんでしょう」と安易に考える方もいらっしゃるかもしれませんが、
耳に聴こえる華やかさは当てにならないことも多いと考えるべきです。
耳に難しく聴こえる曲が必ずしも難しいとは限りませんし、その逆も真ならずです。
その格好の例がショパンのエチュードOp.10-2とOp.10-4で、この2曲を知らない人に聴かせると
誰もがOp.10-4の方がはるかに難しい曲に聴こえると言うと思いますが、
実際の難易度は逆で、しかもOp.10-2の方が圧倒的に難しいです。
これは極端な例ですが、このように難易度は耳で聴いて判断するものではなく、
実際に弾いたことがある人に判定してもらうしか方法がないわけで、そこにこそ難易度表を作成することの難しさがあるわけです。
ピアノ曲の難易度表を作れる人は少ない
本当は多くのレパートリーを持つピアニストにご登場願って難易度表を作成していただければそれがベストなのかもしれませんが、
異常に弾ける天才ピアニストは技術的に天性のものを持っているため、
その方たちが感じる難易度は、多くのピアノ学習者の参考にならないのではないかという危惧もあります。
そこで登場するのが僕というわけです。僕はピアノが好きでピアノ一筋で生きてきて、
古典派からロマン派、近代まで色々な作品を弾いてきた経験があり、
特にショパンの作品はほぼ全曲を少なくとも一度は弾いたことがあるほどです。
ピアニストよりも皆さんに近い存在で、皆さんとピアニストの「橋渡し」ができるというところに、
僕のピアノ弾きとしての存在意義、希少価値があるのではないかと考えています。
僕に課せられた使命は、僕というピアノ弾きにとっての各曲の難易度を示すことだと思います。
だからこそ、僕は自分の練習体験を元に、当サイトでショパンの各曲の難易度を細かくつけているわけです。
ここではそのネタと重複する部分は大いにあるかと思いますが、ここではその議論の対象をショパンに限定せず、
あらゆる作品に対して僕自身が感じた難易度を示していきたいと思います。
ここでは主に全音ピアノピースの難易度と僕自身の感じる体感難易度を比較しながら、
各曲について簡単にコメントを付けていきたいと思います。その中でピアノ学習者の皆さんにおすすめの作品を紹介したいと思います。