ショピニストへの道・TOP > ピアノ練習方法・上達法

ピアノ練習法・上達法〜誰も教えてくれなかった上達の方法

〜ピアノを買おう!ピアノを選ぶ際の基本的な考え方〜

ピアノを習うならピアノ購入は必須

ピアノが弾けるようになりたいと思う方は、まずピアノを習うことが必要です。 ピアノを習うということはピアノのレッスンを受けるということです。 ピアノのレッスンは通常、週1回、30分〜1時間程度です。 ピアノの前に座る時間が1週間でこの時間だけでは上達は到底望むべくもありません。 ピアノのレッスンは日頃の練習の成果を先生の前で示し、できていることとそうでないことを先生が判断して生徒に示し、 次の課題を与える場であって、当然のことなら練習の場ではありません。

つまりピアノを習うなら、レッスン以外、毎日練習できる場(ピアノがあって毎日弾ける場所)が必要です。 それは多くの場合、自宅になります。 何だか当たり前のことを羅列しただけの遠回しな言い方になってしまいましたが、このように書くのは、 ピアノを習うのであれば自宅にピアノがなければ話にならないということを 強調するためです。

つまり自宅にピアノがない場合、ピアノを購入することが絶対必要というわけです。

僕がピアノを習い始めた頃は当然のことながら電子ピアノなどという文明の利器はなく、 ピアノと言えばそれはイコール、100%生ピアノ(アコースティックピアノ)であったわけで、 選択肢としてはグランドピアノ(横型ピアノ)かアップライトピアノ(縦型ピアノ)の2つしかありませんでした。

僕がピアノを習い始めるまでのいきさつ、ピアノを買ってもらうまでの一部始終については、ピアノを始めようのページで述べた通りですが、 比較的貧しい家庭にもかかわらず、僕のピアノへの熱い思いが親にも通じて、思い切って当時最高級のY社のアップライトピアノを 買ってくれたことに対しては感謝しなければいけないと思います。

仮にその時代、何かの間違いで既に電子ピアノなるものが発明されていたとしたら、 その当時の状況から察するに、僕は何も考えずに電子ピアノが買い与えられていた可能性があったと思います。 そう考えると、その時代に電子ピアノがなくてよかった、とも思えてきます。

今の時代はピアノを習い始めるときに、自宅に置くピアノをどのように選ぼうかと考える際に、 電子ピアノという選択肢も加わった分、住宅事情や予算に応じて柔軟に対応できるようにはなりましたが、 その選択を誤らないように、ここでは本物のピアノと電子ピアノは何が違うのか、ということと、 本物ピアノでもグランドピアノとアップライトピアノでは何がどう違うのかについて簡単に説明したいと思います。

後に詳しく述べる通り、電子ピアノは「偽ピアノ」と言っても良いと個人的には思いますが、 偽物を知るためには、まず本物を知らなければならないのは当然のことです。 そこで、まず最初に本物のピアノについてある程度説明した後、電子ピアノが本物ピアノとどこがどう違うのかについて 見ていきたいと思います。

本物ピアノの構造とメカニズム・特徴について

こんなにも違うグランドピアノとアップライトピアノ〜その1:構造上の違いによるアクションの違い

グランドピアノというのは音楽ホールや学校や公共スペースに置いてある弦が横に張ったタイプのピアノです。 あのように流線型になっているのは、しゃれたデザインを意識しているというよりは、 弦の長さで音の振動数が決まる(弦が長いほど振動数が小さい、つまり低い音になる)という物理的な制約を反映しています。

横に弦を張るのにはもちろん理由があります。鍵盤の動きとハンマーの動きは連動していて、鍵盤を打つとその上下運動に連動して ハンマーが下から上に上がる動きをします。弦を横に張っておけば、この弦を下からハンマーが打ち、その反動に加えて重力の影響も手伝って 元の位置に復元します。ここがアップライトピアノとの大きな違いです。 アップライトピアノの場合は弦が縦に張ってあるため、ピアノの鍵盤の上下の動きをハンマーに伝える際に横の動きに変換しなければならず、その際に動きのロスが生じます。 さらにハンマーは弦を打った後、反動と復元力で戻るわけですが、その際、重力の影響が働かないため、戻りが若干遅くなります。 これはピアノのアクションに大きな影響を及ぼします。 例えば、きちんと調整したピアノの場合、理論上グランドピアノは1秒間に14回打鍵可能であるのに対して、 アップライトピアノでは7回と大きな違いが生じます。

1秒間に7回打鍵できれば十分ではないかと思う方も多いと思いますが、決してそんなことはありません。 例えば難曲として知られるラフマニノフのピアノ協奏曲第2番・第3楽章の冒頭ではあの速いテンポで1拍で6回打鍵しなければならない部分がありますし、 ラヴェルの夜のガスパールの第3曲「スカルボ」ではアップライトピアノでは到底弾けない細かく速い連打が続きます。 また技術的にはアップライトピアノで弾ける部分でもピアノがやっとついてきてくれるというのと、 余裕をもって自分の要求に応えてくれるのとでは、弾き心地が違いますし、その分、表現に余裕が生まれ、 その分、自分の試したい表現の幅が広がります。

こんなにも違うグランドピアノとアップライトピアノ〜その2:表現の幅の違い

グランドピアノはその設計上、スペースの制約を全く気にしていません。もちろん価格による制約はありますし、 セミグランドピアノ、グランドピアノ、フルコンサート型グランドピアノと 様々なランクがありますが、あくまでピアノの持つ表現、性能を追求しています。 ピアノの音色は弦の物理的な振動によって規定されますが、その振動が最も美しく聴こえるような箱型・設計を工夫しています。 これは振動の倍音、共鳴を聴く人に最も美しく伝えるための工夫で、その結果、あの流線型のデザインが最良であるという結論になっているわけです。 つまりピアノの音色の素晴らしさは圧倒的にグランドピアノに軍配が上がるということです。 それだけでなく、左ペダルの違いも大きいです。「ああ、弱音ペダルでしょう」という方も多いと思いますが、 弱音と一口には言えない難しい要素を含んでいます。

1音に対する弦の本数は高音域・中音域で3本、低音域で2本、さらに低い音では1本ということで弦の本数が異なりますが、 グランドピアノでは左ペダルを踏むとハンマーと鍵盤がわずかに右に平行移動し、打弦する本数が減ります。 これに対してアップライトピアノでは左ペダルを踏むとハンマーが弦に近づくため、同じ強さで打鍵しても弱い音になります。 このように左ペダルはグランドピアノとアップライトピアノでは似て非なるものです。

アップライトピアノで左ペダルを踏むと物理的に音が弱くなりますが、グランドピアノでは打弦する本数が少なくなる分、 倍音や共鳴が少なくなり、やせた音になります。もちろんこの状態で強打すればフォルティッシモを鳴らすことも可能で、 この場合はやせこけた攻撃的な音になります。ここに右のダンパーペダルを加えると、豊かな音から、か細く悲しげな独り言のような音まで 実に幅広く繊細な表現を生み出すことができます。指の微妙なタッチの違いに敏感に反応してくれるので、 弾いていて気持ちよく感じられます。これはアップライトピアノではあまり望めないことです。

以上、グランドピアノとアップライトピアノの違いを簡単に説明しました。 以上の説明でお分かりの通り、性能的には断然グランドピアノに軍配が上がります。

しかし問題はやはり皆さんの予算と住宅事情です。さらにアップライトピアノよりもグランドピアノの方が 物理的にも大きな音が出ますから、近所迷惑についても考慮せざるを得ず、難しい問題があります。

生ピアノ(アコースティックピアノ)と電子ピアノの違い

前述した住宅事情と予算を考慮すると、電子ピアノも選択肢に加えなければならない方も多いと思います。

ただ僕自身、電子ピアノを弾いてみた率直な感想を言えば、電子ピアノはあくまで電子ピアノであって、本物のピアノとは似て非なるものであるということです。 極論すれば生ピアノと電子ピアノとは全く違う楽器と言ってもいいくらいです。 ピアノの性能や特性を語る場合には、音色とアクションが2本柱ですが、生ピアノと電子ピアノとではそのいずれも全く違います。

ピアノの音色について

まず音色に関しては電子ピアノの場合は、モデルとなるピアノがあり、そのピアノの最も美しい音をサンプリングしているようです。 一音についても最強音から最弱音まで人間の耳で聴き分けられないほど細かく段階分けしてサンプリングされ、 打鍵の強さに応じてそのサンプリングされた音を出力するというメカニズムが採られているようです。 「モデルとなるピアノの最も美しい音」なら良いではないか、と思う方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。 電子ピアノを雑に弾いても、実は雑な音が出ないんですよ。雑なタッチでも美しい音が返ってくるので「ウソだろ」と思いながら弾くわけですが(笑)、 このように「ウソだろ」と思えるのも、このタッチでは本当のピアノならこういう音が鳴るはずだという長年積み重ねた経験があるからで、 ピアノを習い始めたときからこの電子ピアノで練習を始めたら、雑なタッチでも美しい音が返ってくるという誤った認識が染みついてしまい、 修正するのに苦労するのではないかと思いました。 あくまでそのことを知っていて電子ピアノを弾く分にはあまり問題にはならないと思いますが、 子供の大事な成長期に電子ピアノばかり弾いていたら、美しい音を出すタッチの感覚が育たないのではないかと思えるほどでした。

またこれと関連することですが、電子ピアノはサンプリング音を再生することで音を出すという都合上、音色は均一で面白みに欠けるという欠点があります。 そのため、自分が欲しい音色と違うことも結構多く、自分の頭の中にあるイメージ通りの音楽に ならないという大きな問題があります。音色を自分の手でゼロから作り出すというピアノならではの醍醐味が味わえない点も不満が大きいです。

これはカンティレーナに限ったことではなく、ガツンとした攻撃的な爆音が欲しいときにも言えます。 電子ピアノではいくら物理的に強く打鍵しても、お上品な音しか返ってこないので、 物足りなさを感じることもしばしばです。こういうときなどは、やはり本物のピアノが一番だと強く感じます。

皆さんは当然のことながら本物のピアノを弾くのが上手くなりたいのであって、電子ピアノがいくら上手く弾けるようになっても 嬉しくないですよね。それなら、やはり本物のピアノ、最低でもアップライトピアノで練習することをお勧めしたいと思います。

ピアノのアクションについて

アクションについては電子ピアノも生ピアノのアクションを再現するための様々な工夫がなされているようですが、やはり本物ピアノとは違います。 本物のピアノは鍵盤をゆっくり押し下げていったときに、底に抵抗を感じるようなアクションになっていますが、 少ないとも低価格帯の電子ピアノではそれが忠実に再現できていないように感じました。

またアクションの重さについても、本物のピアノは高音に行くほどアクションは軽く低音に行くほど重くなるのですが、 電子ピアノでは鍵盤のアクションが均一で、それが忠実に再現できていないように感じます。 特に低価格帯の電子ピアノは総じて鍵盤が軽すぎて、いつもこれを弾いていたら指がなまってしまうのではないかと思えるほどですし、 特に低音の鍵盤の軽さは「絶対にこんなピアノはない」と思ってしまうほどです。

一方、高価格帯の電子ピアノでは本物のアクションと謳っているものもありますが、逆に鍵盤が重すぎたりして、 弾き心地が軽視されているように感じられるものが結構多いです。これはこれで弾いていて疲れるだろうと思ってしまいます。

現在の住宅事情を考慮すると電子ピアノの需要はかなりもので、品質さえ一定レベルを超えれば、潜在的な需要はかなりのものと言えそうです。 そのため各メーカーともに力を入れているようで、昔の製品と比べると鍵盤の戻りがかなり速くなるなど進歩しているように感じられますので、 今後、さらに改良と工夫を重ねて本物に限りなく近い電子ピアノが登場する日も近いのではないかと期待しています。

ピアノメーカーのヤマハ、カワイは当然として、ピアノを製造していないローランド、カシオなども力を入れ、 電子ピアノにおいてはヤマハやカワイと肩を並べる技術レベルに達しているように感じられます。

このように今後の製品開発が期待される電子ピアノではありますが、今のところ、本物のピアノとの差は依然として歴然としていると思います。 従って、皆さんの住宅事情と予算が許すならば、電子ピアノではなく生ピアノをお勧めしたいです。

予算・予算・お金がないとは言うが・・・

僕の場合は予算、住宅事情の都合上、グランドピアノを購入して自宅に置くことは不可能でしたが、ある程度、裕福な家庭で住宅事情が許すならば、 一番下のランクでもよいですのでグランドピアノの購入をお勧めします。その理由は上で再三述べた通りです。 そうは言っても予算がないという方は少し考えてみて下さい。皆さんは自家用車は数年に一度、乗り換えているのではないでしょうか。 自家用車は安いものでも100万円、高級車ならば300万円以上しますよね。 一方、ピアノの場合はアップライトピアノで50万円前後、グランドピアノは一番安いものは100万円で購入できますし、300万円も出せば、ある程度のランクのものが購入できます。 防音室もセットで必要になり、予算的にはかなり厳しいかもしれませんが、自家用車を数年に一度乗り換えることに比べたら、 ピアノの場合は基本的に買い換えは頻繁には必要ないわけですから、決して高い買い物ではないと個人的には思います。 少なくとも僕は自家用車よりもピアノに投資したいという価値観です。 皆さんも、もし予算的に何とかなりそうであれば、多少のローンを組んだとしても、 グランドピアノが弾ける環境を手に入れるのがおすすめです。

それでもどうしても予算と住宅事情で本物のピアノを購入するのが難しく、電子ピアノになってしまうという方も いると思います。そのような方のために、電子ピアノを購入するに際して最低限気を付けるべき事柄について以下、説明します。

それでも電子ピアノしか置けないという方に

88鍵あることが最低条件

本物のピアノは88鍵ありますが、キーボードのような電子ピアノで61鍵というものもあります。 しかしこれを買ってはいけません。本物のピアノと同じ88鍵あることが絶対条件です。

低価格帯のものを避ける

電子ピアノは安いもので数万円というものもありますが、こういうものは絶対に買ってはいけないと思います。 アクションも到底ピアノからは程遠く、鍵盤の形とアクションを揃えただけで、ピアノの音が一応鳴るというだけという印象です。 ある程度長い間使う楽器であることを考えると、ここでケチったがために上達が遅くなったという本末転倒の結果になりかねず、 また「これじゃ全然だめだ、買い換えよう」ということになったら、それこそ「安物買いの銭失い」となってしまいます。 コストパフォーマンス的には低価格帯のものはかなり高いと考えて下さい。 ここには最低でも20万円以上は投資したいところです。

ピアノが全く弾けない人または初心者:本物のピアノを知っている人に同伴して選んでもらう

同じ価格帯でも店頭で色々なピアノが並んでいて、どれにするか全く分からない、と途方に暮れる人も多いようです。 もしピアノの購入を考えている皆さんが、ピアノが全く弾けない、または完全な初心者・初級者の場合、 ピアノを選定する能力は全くないと思います。音色、アクションと言っても、鍵盤を叩いただけでは分かりようがないものだからです。 やはりある程度、中級以上の曲を弾いたり音階を弾いたりして弾き比べしながら慎重に選びたいものです。 それができないのであれば、可能であればそれができる人、つまり中級者以上の方に同伴して 選んでもらう方が良いと思います。 そのような人がいない場合には、ピアノの先生に相談してみてもよいと思います。 ピアノの先生が「電子ピアノのことなんて知らない」という場合には、ピアノの先生を頼ることもできないので、 自分で情報を収集するしかなくなりますが、今の時代はインターネットという便利な情報収集ツールがあるので、 インターネットで電子ピアノの選び方に関するホームページを検索して参考にするのもよいと思います。 その際に注意してほしいのは、そのホームページの執筆者はどの程度のピアノの腕なのか、セミプロ級なのか、 上級者なのか、初心者を何とか脱した程度なのか、我流で弾いている聴くに堪えないレベルの独学者なのかで、 その記事の信憑性は全く異なってきます。 何も知らないよりはマシと考えて参考にするのか、全く無視するのか、それは皆さん次第です。皆さんの自己責任でお願いします。

中級者以上:試弾して厳選する

やはりピアノ選びの王道は自分で弾くことです。本物ピアノを選ぶときも自分で弾いて慎重に選ぶことになりますが、 これは電子ピアノでも同様です。得意なレパートリーを数曲弾いて、アクション、音色が自分に合っているかどうかを慎重に確かめて下さい。 特に電子ピアノの場合はアクションが重要です。鍵盤の底にしっかりとした抵抗を感じるか、 低音に行くほどアクションが重いなど本物のピアノを再現したアクションになっているか、鍵盤の戻りの速さが十分で 連打やトリルがしっかり弾けるアクションか、などに注意して下さい。 作品だけでなく様々な調でスケールやアルペジオ、半音階、ハーモニーを弾いてみて下さい。 それを展示してある製品毎に試弾し、一番良いと思うものを慎重に選んで下さい。 皆さんがある程度弾いて、これなら大丈夫と思える製品を選べば、間違いは少ないと思います。

必ず一定頻度で本物のピアノを弾く機会を作る

上記のようにして電子ピアノを上手に選び、早速自宅で練習することになったとしても、それだけで満足しない方が良いと思います。 電子ピアノはあくまで電子ピアノであって、本物のピアノとは似て非なるものであり、 いくら電子ピアノを弾くのが上手くなっても本物ピアノが上手く弾けるという保証はありません。 ピアノレッスンを定期的に受けていれば、そこで本物ピアノを弾けると思いますので、 その機会に本物ピアノと電子ピアノの違いをその都度確認して、ギャップを埋める努力をして下さい。

以上、ピアノ選びの話をしてきました。 電子ピアノはあくまで電子ピアノであって、本物ピアノとは違う楽器である点を認識して使用して下さい。 自宅にグランドピアノがあるのが一番の理想ですが、予算やスペース、住宅事情の都合でアップライトピアノで妥協せざるを得ない場合も多いですし、 それらがどうしても難しければ、電子ピアノということになります。

ピアノ選びの参考にしていただければ幸いです。

初稿:2017年6月14日

〜サイト内コンテンツ一覧〜

PR

ピアノ練習法・上達法メニューに戻る