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ピアノ練習法・上達法〜誰も教えてくれなかった上達の方法

〜ピアノを弾く正しい姿勢・指の形〜ピアノはスポーツだ!〜

ピアノを弾く正しい姿勢・指の形〜ピアノはスポーツだ!

スポーツ同様、「形から入る」ことがピアノでも重要

ピアノを習い始めると、まずピアノを弾く正しい姿勢、指の形を教え込まれると思います。 最初は単音の簡単なフレーズを弾くことになりますが、これはどのような姿勢でも、どのような指の形でも弾けるものです。 それなら姿勢や指の形はどうでもいいのではないかと思う初心者の方も多いと思いますが、決してそうではありません。 簡単なフレーズでは気にならなくても、その後、徐々に上達して難しい曲を弾く段階になった時に、 間違った姿勢や指の形では、やがて壁にぶち当たります。 そうならないために、最初から正しい姿勢、指の形を徹底的に教え込まれるわけです。

皆さんはスポーツを練習するときに、その導入として、まず「形から入る」ということを徹底して教わると思います。 野球で言えば、バッティングは足をこのくらいの幅で開いてバッターボックスの中ほどに立ち、脇を締めてバットを握り、 ボールからは絶対に目を離さない、バットスイングは腰の回転を利用して腕が遅れて出てくるように、という基本を 徹底して教わると思いますし、水泳にしても各種目において基本となる形を徹底して教わると思います。 スポーツがその種目を問わず、その最初期に「形から入る」のは、その後の上達に非常に大きく影響してくるからです。 スポーツは自己流のフォームではよほどの天才でない限り、頭打ちになることが多いので、 そうならないように初めの段階で正しいフォームを徹底的に教え込まれるわけです。 イチロー選手の振り子打法にしても、野茂英雄投手のトルネード投法にしても、それは基本を身に付けた上で独自の工夫を施した結果であって、 基本の正しいフォームが大前提にあります。

ピアノは奥深い芸術であってスポーツではない、野球や水泳と一緒にするな、と言われそうですが、決してそんなことはないと思います。 確かにピアノ音楽は深遠な芸術ですが、その芸術を引き出す過程は、まさしく「運動」そのものです。 ピアノにおける「運動」というのは初心者は指の運動だけと思っている方が大半だと思いますが、決してそんなことななく、 ピアノは全身を上手く使うことによって、初めて良い演奏が可能となります。 具体的には、手首の柔軟性、肩から肘にかけての力の抜き具合、指先に重みを伝えるための正しい指の形、腕の角度、正しい姿勢、足の開き具合、ペダルの正しい踏み方など、 「正しい」とされる決まったフォームがあります。 運動神経が悪い方も「自分は運動音痴だからピアノに向かない」とは思わないで下さい。何を隠そう僕も運動神経は良くないですが、ピアノはここまでの域に達していますので、 ピアノの上手さは運動神経とは恐らく関係ないと思われます。運動神経が悪い方も悲観する必要は全くないです。 ピアノ演奏というのは高尚な芸術ではありますが、その芸術を引き出す過程は運動であるため、 スポーツと同様に「形から入る」ことがその後の上達において重要になってくる ということが言いたいわけです。

そこでここではピアノにおいて正しいとされる指の形、姿勢について説明します。

正しい指の形:指は軽く曲げた状態で打鍵・手のひらと鍵盤の間には鶏の卵が1個入るくらいのスペースを作る

ピアノにおいて正しいとされる指の形は指の付け根、第1関節、第2関節を均等に軽く曲げた状態で、 鍵盤には指先だけが接するような形で、手のひらと鍵盤の間には鶏の卵が1個入るくらいのスペースがある状態が基本、 ということを教わると思います。僕は最初それを聞いたとき、鶏の卵なんて、そんなに大きなものは入らないよ、と思ったものです。 手のひらと鍵盤の間のスペースが「鶏の卵1個」というのは、あくまで大人の手のサイズを考えた場合の話であって、 6歳の子供の場合には「鶏の卵1個」では大きすぎます。 要は手のひらと鍵盤の間に大きなスペースを作るような手の形が正しいということを分かりやすく強調することを意識した 具体的な表現だと思います。指をまっすぐに伸ばしてべったりと指の腹で打鍵するような子供・初心者があまりに多く、 それは間違いであるということを教えるための分かりやすい「たとえ」なのだと思います。

最初はこの形でピアノを弾くことに慣れない方も多いと思いますが、最初が肝心です。 この時点で正しい指の形で弾くことを徹底的に覚えてしまえば、後が楽です。 このフォームで弾く限り、指の形が原因で上達の壁にぶち当たることはなくなります。

マムシ指の矯正

上記のような手の形を意識して練習していても、指が関節を逆方向に沿ってしまうという「マムシ指」という 指の形に時々なってしまう人が一定数います。実は僕は初心者の頃、よく親指だけ「マムシ指」になってしまっていました。 親指の付け根がそっくり返り、外側を向いてしまうわけです。僕は不幸にしてというべきか、第2指〜第4指は短くて指がそっくり返る余地はないため、 親指以外の指がマムシ指になることはありませんでした。 この親指のマムシ指は練習中も意識して矯正しました。親指が正しく内側に曲がった形を維持するように常に注意していました。 そうしているうちにバイエルが終わる頃にはこのマムシ指は自然になくなってしまいました。 このように弾き方の癖はそれを指摘された時点で常に気を付けて、早めに矯正してしまうべきです。 癖のある悪い奏法が体に染みついてしまう前に、早い段階で徹底的に排除してしまって下さい。

正しい姿勢:肩・肘・手首は柔軟に保ち、前腕は水平に:「脱力」が重要

ピアノの鍵盤に接するのは指先だけですが、その指先にかかる力を適切にコントロールするためには 全身を正しく使うことが大切です。良いピアノ演奏は全身の関節と筋肉を正しく使うことによって可能となります。 肩・肘・手首など、どこか関節の1か所に力が集中してかかるような状態、例えば肘がコチコチに硬くなってしまう、とか、 肩に力が入りすぎて肩が上がってしまう、とか、ミスタッチしないことを意識しすぎて手首がコチコチに固まっている、 というような初心者を見かけますが、これでは疲れてしまいますし、それ以前に指先に正しく力を伝えることができず、 ピアノから出る音も硬く詰まったような音になってしまいます。 各関節や筋肉に必要な力だけが入り、適度に力が抜けた状態(これを「脱力」と言います)で 各関節や筋肉を柔軟に保った状態で、指先に自分の体重が効率よく伝わる姿勢が正しい姿勢です。 この姿勢と脱力を身に付けることで、難曲を弾くための基礎が出来上がります。 これも初心者のうちから意識して取り組んで、身体にしみ込ませてしまうのが得策です。 そうすることで上達の強固な基礎が出来上がりますし、また長い時間弾いていても疲れを最小限に抑えることができます。

正しい姿勢:足は右ペダルの手前でかかとを着ける

足の置き場所についても重要です。 ピアノの椅子に座ると、小さい子供の場合は足が床に着かないと思いますが、大人の場合は足の置き場所も初めから意識しておいた方がよいと思います。 中級者以上になるとピアノのペダルは踏んだ状態が基本になるため、ペダリングを前提とした足のポジショニングを始めのうちから 意識しておいた方がよいです。具体的には、右足は右ペダルの前でかかとを着けた状態で、足底からつま先にかけては右ペダルに乗った状態です。 こうして右足のかかとを「軸」にして、それより先の足底からつま先にかけての動きによって右ペダルを踏める状態にしておきます。 左足は手前に引いておき、必要に応じて左ペダルを踏める準備状態にしておきます。ペダルを踏み方は右ペダルと同様、 かかとを軸にします。

まとめ:間違った自己流の弾き方が染みつくと上達が頭打ちになってしまう。最初が肝心

ピアノにおいては正しいフォームから入ることが重要です。 このフォームを軽視して癖の強い自己流の弾き方が染みついてしまうと、いずれ壁にぶち当たり、それを克服するために 矯正作業に多くの時間が奪われてしまいます。それで矯正できればまだ良い方で、矯正できないばかりにそこで頭打ちになってしまうケースも しばしばあります。基本をおろそかにすると、そのツケが必ず回ってきます。 最初が肝心と心得て、最初から正しい姿勢・フォームを身に付けてしまって下さい。

僕は導入期にこれがうまくできたため、その後、ここまで上達できたのだと思っています。 僕にとって演奏フォームで問題になったのは、初めの頃の「マムシ指」だけで、これもすぐに矯正できたので、 癖のあるフォームや自己流の弊害については僕自身の具体例を交えて語ることはできませんが、 周囲では癖の矯正に苦労している人が結構いましたので、この項目を設けました。

ピアノは高尚な芸術と考えるとこの点がおろそかになってしまいますので、むしろ最初のうちはピアノはスポーツ競技の一種くらいに考えて、 徹底的に正しいフォームを覚え込むことを第一に考えて取り組んで下さい。ピアノの芸術性を意識するのはその後で十分です。

初稿:2017年6月14日

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