ショパン・マズルカ | |
ショパンのマズルカについて
作品の特徴: 現在分かっているところでは、ショパンは生涯で58曲のマズルカを作曲したと言われています。そのうち 一般に忘れられずに演奏されるのはOp.6からOp.68までの作品番号のついた49曲です。 マズルカは、 ポロネーズと並ぶショパンの祖国の民族舞曲です。ポロネーズが貴族階級の間で広まった のに対し、マズルカは広く一般庶民に親しまれています。その語源は、マズルカ発端の地であり、 風光明媚なポーランドの「マゾヴィア地方」に由来すると言われています。ワルツと同じ くらいのテンポの3拍子ですが、強調される拍は、ワルツが通常1拍目であるのに対し、マズルカは2拍目、ないし 3拍目に強いアクセントがあり、しばしば2拍子系のリズムに変化、複合することがあります。ショパンが 実際にマズルカ演奏をするのを聴いて、2拍子の曲に聴こえた、と言った人もいたそうです。 その素朴にして不思議なリズムも、マズルカの大きな特徴でもあります。 また、マズルカは、ショパン作品の全カテゴリー中、曲数が最も多く、次に曲数が多いエチュードの27曲の倍以上の 作品が残されていますが、ほとんどの作品は、演奏時間が5分以内の小規模なものです。 また同じ「マズルカ」と呼ばれる作品でも、快活なもの、素朴なもの、単純なもの、優美なもの、華麗なもの、憂鬱なもの、 と非常に表情が豊かで、バラエティーに富んでいるのも大きな魅力です。これは、「マズルカ」と呼ばれるものが、 「マズル」、「クヤヴィアク」、「オベレク」と呼ばれる、それぞれ異なる起源を持つ3種類の民族舞曲の複合形である ことも大きな原因です。 このように、ショパンのマズルカは多種多様なものですが、他のカテゴリーに比べると、いわゆる「力作」が少ない のも大きな特徴です。マズルカは、生活の拠点をパリに移した後も、ショパンにとって最も身近な舞曲であり、 まるで日記を綴るような感覚で、気軽に譜面に書き留めた結果出来上がったものが多く、それだけに、 作曲時のショパンの心境が率直に現れているとも言えると思います。 また、このようなマズルカ的な特徴あるリズムは、意識的にせよ無意識的にせよ、ショパンの他のカテゴリーの作品にもしばしば 現れており、マズルカリズムへの深い理解と共感は、ショパン作品に宿る民族精神への理解を深めるために避けて通ることが できないと言っても過言ではないようです。このような民族精神の理解に関しては、ショパンの祖国ポーランドで生まれ育ち、 マズルカに慣れ親しみながら体で覚えたピアニストの方が有利であるという指摘も時々なされ、実際、ポーランドの生んだ ピアニスト、例えばルービンシュタインやステファンスカの弾くマズルカに、暗黙のブランド力が宿っているのも事実です。 しかし、ポーランド生まれでなくても、マズルカの根本的理解を深めることは十分可能であり、実際、マズルカで 優れた演奏を聴かせるロシア出身、西欧出身のピアニストが数多くいるのも事実です。 ショパンのマズルカの演奏に関しては、技術的に限って言えば比較的易しめであり、ショパンを極めたい学習者の場合、中級課程から少しずつ 導入していく必要があると思います。マズルカ独特の半音階的和声進行、入り組んだ和声、民族舞曲特有の特殊旋法等のために、譜面には臨時記号が多く、 譜読みの負担は若干大きいですが、ショパンの「日常」に近づくためにも、是非、挑戦していただきたいと思います。
4つのマズルカOp.6
作曲年:1830-31年、出版年:1832年
マズルカ第1番嬰へ短調Op.6-1
マズルカ第2番嬰ハ短調Op.6-2
マズルカ第3番ホ長調Op.6-3
マズルカ第4番変ホ短調Op.6-4
5つのマズルカOp.7
作曲年:1830-31年、出版年:1832年
マズルカ第5番変ロ長調Op.7-1
マズルカ第6番イ短調Op.7-2
マズルカ第7番ヘ短調Op.7-3
マズルカ第8番変イ長調Op.7-4
マズルカ第9番ハ長調Op.7-5
4つのマズルカOp.17
作曲年:1834-35年、出版年:1836年
マズルカ第10番変ロ長調Op.17-1
マズルカ第11番ホ短調Op.17-2
マズルカ第12番変イ長調Op.17-3
マズルカ第13番イ短調Op.17-4
4つのマズルカOp.24
作曲年:1834-35年、出版年:1836年
マズルカ第14番ト短調Op.24-1
マズルカ第15番ハ長調Op.24-2
マズルカ第16番変イ長調Op.24-3
マズルカ第17番変ロ短調Op.24-4
4つのマズルカOp.30
作曲年:1836-37年、出版年:1838年
マズルカ第18番ハ短調Op.30-1
マズルカ第19番ロ短調Op.30-2
マズルカ第20番変ニ長調Op.30-3
マズルカ第21番嬰ハ短調Op.30-4
4つのマズルカOp.33
作曲年:1837-38年、出版年:1838年
マズルカ第22番嬰ト短調Op.33-1
マズルカ第23番ニ長調Op.33-2
マズルカ第24番ハ長調Op.33-3
マズルカ第25番ロ短調Op.33-4
4つのマズルカOp.41
作曲年:1838-40年、出版年:1840年
マズルカ第26番嬰ハ短調Op.41-1
マズルカ第27番ホ短調Op.41-2
マズルカ第28番ロ長調Op.41-3
マズルカ第29番変イ長調Op.41-4
3つのマズルカOp.50
作曲年:1841-42年、出版年:1842年
マズルカ第30番ト長調Op.50-1
マズルカ第31番変イ長調Op.50-2
マズルカ第32番嬰ハ短調Op.50-3
3つのマズルカOp.56
作曲年:1843年、出版年:1844年
マズルカ第33番ロ長調Op.56-1
マズルカ第34番ハ長調Op.56-2
マズルカ第35番ハ短調Op.56-3
3つのマズルカOp.59
作曲年:1845年、出版年:1845年
マズルカ第36番イ短調Op.59-1
マズルカ第37番変イ長調Op.59-2
マズルカ第38番嬰ヘ短調Op.59-3
3つのマズルカOp.63
作曲年:1846年、出版年:1847年
マズルカ第39番ロ長調Op.63-1
マズルカ第40番ヘ短調Op.63-2
マズルカ第41番嬰ハ短調Op.63-3
4つのマズルカOp.67
作曲年:1835-49年、出版年:1855年
マズルカ第42番ト長調Op.67-1
マズルカ第43番ト短調Op.67-2
マズルカ第44番ハ長調Op.67-3
マズルカ第45番イ短調Op.67-4
4つのマズルカOp.68
作曲年:1829-49年、出版年:1855年
マズルカ第46番ハ長調Op.68-1
マズルカ第47番イ短調Op.68-2
マズルカ第48番ヘ長調Op.68-3
マズルカ第49番ヘ短調Op.68-4
その他の作品番号なしのマズルカ
マズルカ第50番イ短調「ノートル・タン」
マズルカ第51番イ短調「エミール・ガイヤールに捧ぐ」
マズルカ第52番変ロ長調
マズルカ第53番ト長調
マズルカ第54番ニ長調
マズルカ第55番ニ長調
マズルカ第56番変ロ長調(アレクサンドラ・ヴォロドスのために)
マズルカ第57番ハ長調
マズルカ第58番変イ長調
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ショパン・マズルカ・人気CDショパンの祖国ポーランドが生んだ巨匠ルービンシュタインのマズルカ全集。各曲に盛り込まれた情緒を必要最小限の動きで 静かに表出しながら、格調高い洗練された表現の中に、マズルカ特有の素朴さも感じさせる見事な演奏。 完成度も高く、マズルカのお手本としても価値の高い演奏ですが、中には「面白くない演奏」と指摘する人も…。 快活な作品では、美しく磨き上げられた音色、飛び跳ねるようなリズムで、演奏する一方、憂鬱な作品では、彼の持ち味である 繊細な抒情表現が涙と感動を誘う素晴らしい演奏を展開。マズルカ特有の民族色にはやや乏しいような気がしますが、 この美しさ、気品は何物にも代えがたい魅力があるのも事実。ファースト・チョイスはこちらがいい? ポーランドの生んだ女流ピアニスト、ステファンスカのマズルカ全集。比較的遅めのテンポで、どっしりとした構えの中で、 骨太の音色で弾かれる各曲は、風格と気品に満ち、まるでルービンシュタインの再来を思わせるほど。ときに退屈、マンネリな 流れに陥りそうになる部分もありますが、全体として見事な演奏です。
ショパン・マズルカ・楽譜
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