ショパン・ワルツ主要14曲 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ショパンのワルツについて
作品の特徴: ワルツというのは皆さんもご存知のように3拍子のリズミカルな音楽で、実は舞曲(より噛み砕いて言えば「ダンス・ミュージック」)です。 日本語では「円舞曲」と訳されますが、これも奏鳴曲(ソナタ)、諧謔曲(スケルツォ)ほどではないにしても、 訳語の方が意味不明という実に皮肉な現象となってしまっています(蹴球って何だっけ、籠球って何だっけ、というのと似ていますね)。 クラシック音楽愛好家でなくても一般人でも「ワルツ」という言葉の認知率はほぼ100%で、 これは「ワルツ」という音楽がインターナショナルで、音楽的に市民権を獲得していることの何よりの証拠です。 このように誰でも知っている「ワルツ」という言葉ですが、一般的にワルツの本場はウィーンであることに異論を唱える人は少ないのではないかと思います。 ワルツの発祥はまさにドイツ・オーストリア圏で、ワルツ王・ヨハン・シュトラウスが数々の優雅で華やかなウィンナ・ワルツを作曲して、 特に本場ウィーンを中心に爆発的な人気を博していました。 このようにワルツは、ショパン以前から既成のジャンルとして開花して最盛期を迎えていたわけですが、 この先人たちが築き上げてきた伝統ある舞曲の世界にショパンも足を踏み入れたように見えたのは、 単なる気まぐれや模倣では決してなく、むしろショパンはワルツという先人たちが作り上げた既成の概念・常識を覆して 独自の世界、新境地を切り開こうと意図してのことであったことは、彼が残した数々の名作ワルツが何より物語っています。 ショパンはワルツの世界に足を踏み入れたのではなく、ワルツという既成のジャンルに ショパンしか書き得ないオリジナリティを盛り込み、不朽の名作を生みだそうという野心からだと思われます。 ショパンは19歳の時に祖国ポーランドからウィーンへ演奏旅行に出かけましたが、ショパンの音の小さく華やかさのないピアノ演奏は 受けが悪かったようでした。「ウィーンの聴衆はヨハン・シュトラウスのウィンナ・ワルツには盛大な拍手を送るけれど、 僕の作品やピアノ演奏には全く無関心」と愚痴をこぼしていたほどです。 しかしショパンは自分の作品の方が優れているという確信があったのだと思います。 ショパンは聴衆に迎合するのではなく、独自の美意識・スタイル・信念に基づいて、独創性溢れる作品を次々に生み出していきます。 ショパンの音楽は現在の僕たちにはロマン派の中の高貴な純音楽という印象ですが、 古典派からロマン派への移行期の時代にあっては、時代を先取りしたような斬新さがあり、 それを当時の一般の聴衆はなかなか受け入れられなかったというのが真相だと思います。 時代背景の話はこれくらいにして、先を急ぎたいと思います。 ショパンが作曲したワルツで現在知られているのは19曲です。 これは、第1番〜第19番とそのまま通し番号が付けられていますが、例によって作曲順ではありません。 一般的に、ショパンのワルツでよく知られているのは第1番から第14番までで、第15番から第19番は彼の学習当時の習作で、 内容的には第1番〜第14番に比べるとやや見劣りするのは仕方がないと思いますし、それ故にか演奏される機会は極めて少ないです。 つまりショパンのワルツ全19曲には第14番と第15番に大きな溝があることになります。 これはポロネーズで言えば、第7番と第8番に大きな溝があるのと同様の現象です。 ショパンのワルツ第1番〜第14番も、生前に出版されたものか、死後出版されたもの(遺作)かで大きく2つに分かれます。 生前に出版されたのは第1番から第8番までで、第9番から第13番までは作品番号付きの遺作、第14番は作品番号なしの遺作です。 この中で一般的に特に人気が高いのは、第1番「華麗なる大円舞曲」、第6番「小犬のワルツ」、第7番嬰ハ短調Op.64-2、 第9番変イ長調Op.69-1「別れのワルツ」、第14番ホ短調遺作といったところです。 ショパンのワルツは、いかにも舞踏用の円舞曲といった趣の優雅で華やかな作品から、 ワルツリズムを借りて自己の内面を表現した抒情詩といった趣の内省的な作品まで、実に様々な性格を持った作品があります。 ショパンはむしろワルツにおいて、後者を強く意識していたのではないかと思います。 また同時代の作曲家ロベルト・シューマンは、ショパンのワルツを舞踏用の円舞曲として踊るとしても、 「少なくとも相手の婦人の半分は伯爵夫人でなければならない」と言っているように、 ショパンのワルツはウィーンの大衆的なワルツと違い、パリの華やかな上流階級の社交界を思わせる 高貴で洗練された響きに満ち溢れているのは特筆すべきだと思います。 ショパンのワルツは規模の大きいものでも演奏時間が5分30秒程度で、中には第6番や第11番のように2分弱で終わってしまう小品もあります。 ショパンの作品の中でも規模が小さい上、難易度も比較的易しいものが多く、比較的取り組みやすいのも特徴です。 例えば第3番イ短調Op.34-2、第6番「小犬のワルツ」、第7番嬰ハ短調Op.64-2、第9番変イ長調Op.69-1「別れのワルツ」、第10番ロ短調Op.69-2、 第12番ヘ短調Op.70-2など、ショパンの入門としてピアノレッスンで取り上げられることの多い作品が結構あります。 このような抒情的なワルツは、ワルツ特有の第1拍目のアクセントが影を潜め、 ショパンがポーランドで生まれ育ったことによって自然に身に付いたマズルカリズムが意識的にか無意識的にか現れることがあります。 それが、ショパンの孤独な悲しみと哀愁が身に染みる名作ワルツが生まれる秘密だったように思われてなりません。 ショパンはワルツという既成のリズム、ジャンルに足を踏み入れても、ショパンのオリジナリティが見事に花開いており、 誰にも真似のできない至高の境地に到達していることに感嘆させられます。
第1版:2002年10月
ワルツ第1番変ホ長調Op.18「華麗なる大円舞曲」作曲年:1831年この曲は序奏とコーダを伴った3部形式で書かれていますが、様々なテーマが繰り返し登場するメドレー形式に近い構成を取っており、 甘美で優美で通俗性のある華やかなテーマが次々に登場するところや反復記号が多用されているところなど、 ウィンナ・ワルツとの顕著な類似点が多数認められます。反復が多用されすぎているきらいがあり、 それがややもすると冗長さを印象付ける欠点ともなっているようです。
この作品の構成は次のようになります。
序奏:右手のB♭音の単音のみで構成 この曲全体を通しての技術的な課題は、やはり同音連打です。 従って、同音連打が得意な人と苦手な人とで、この曲の難易度は著しく変わってくると思います。 参考までに、頻繁に登場する6つの同音連打の運指に関しては、全音では(321321)、 パデレフスキ版では(313131)となっており、その他、(323232)、(212121)などが考えられます。 いずれにしても易しくはないですが、一番弾きやすい運指を見つけるのも重要なポイントだと思います。 特に6つの音のうち後半は音がくっつきやすく、また鳴りにくい傾向があると思うので、 きちんと6つの音が全てはっきりと鳴るようにしっかり手に馴染ませるように練習する必要があります。
ワルツ第2番変イ長調Op.34-1作曲年:1835年第1番「華麗なる第円舞曲」とこの第2番Op.34-1の内容を比較した場合、第2番の方がはるかに内容が濃い傑作であるはずですが、 知名度や認知度は第1番の方が圧倒的に上という皮肉な結果となってしまっています。このような皮肉な逆転現象が起きてしまうのは どうしてなのでしょうか。このような傑作が第1番「華麗なる大円舞曲」の陰に隠れてしまうのは何とももったいないことだと思うのですが。 曲の難易度は、ワルツの中では最高レベルでワルツ第5番Op.42に次ぐ難易度と感じています。 曲の構成は、序奏とコーダを含んだ3部形式と考えられ、次のようになります。
序奏:変ホ音連打を含む単音主題+8分音符パッセージ+和音進行、パッセージのユニゾン、単音パッセージ 主部は右手が6度の音程を保ちながら優美な第一主題を奏でる部分と、プラルトリラーを含んだ軽やかなパッセージを奏でる部分、 その後、変ニ長調、変ホ長調、変イ長調という予告なしの(いきなりの)転調によって華麗に盛り上がる終結部から構成されます。 この部分の高速に駆け上がる音階とその後の和音連打が技術的にはやや難易度が高いのではないかと思います。 中間部は変ニ長調に転調して優美で抒情的な旋律が奏でられ、このワルツを初めて聴いたときはこの部分に感動しました。 この中間部もさらにABAと3つに分けることができ、A部では右手が6度のゆっくりしたパッセージを 弾きながら、4指と5指でプラルトリラーを弾くというさりげない難所があります。中ほどのB部では、やや不安定で激しさを秘めた楽句と なっており、和音の6連打、オクターブを含む和音のパッセージ等、技術的にさりげなく難しい部分です。 中間部の終結部は、主部の終結部を調性を変えて(変ト長調、変イ長調、変ニ長調)登場させるという手法が採られて、華やかに締めくくられます。 この部分の高速の音階(特に前半の変ト長調)はこの曲に登場する高速音階の中で、最も難しいのではないか、と思います。 (余談ですが、変ト長調の上昇音階が何故難しいかというと、1指が3指または4指の下をくぐるときに、シ♭→ド♭が半音、 ミ♭→ファが全音と、オクターブ内で2度行われる指くぐり(ポジション移動)で 異動する距離が異なるためだと思います。特にミ♭→ファは移動距離が大きく、この音階が 弾きにくい最大の原因ではないか、と思います。同じようでも、変ニ長調の上昇音階の場合、ミ♭→ファ、シ♭→ドの どちらも全音なので、指をくぐらせる際の移動距離がほぼ等しいため頭を切り替える必要がなく、かえって弾きやすくなります。 さらに余談ですが、変ト長調の右手の音階の場合、上昇は難しくても下降が易しいのは当然とはいえ面白い現象ですね。) 主部の再現部は、この曲の冒頭の主部とほぼ同じものが使われていますが繰り返しは省略されています。 主部の終結部(C'部)の最後は盛り上がって、技術的に難しい華麗なコーダに 突入します。特にコーダの前半は難易度が高いです。3連符+8分音符の常動的なパッセージという点では ワルツ第6番「小犬のワルツ」の右手の音型と似ていますが、この曲のこの部分の方が難易度は上です。 このワルツはショパンの華麗系ワルツの中では第5番と並んで最高傑作と思います。
ワルツ第3番イ短調Op.34-2作曲年:1831年曲の構成については諸説あるようで、冒頭の16小節をどのように位置づけるかによって変わってきますが、 僕自身はこれを長い序奏と位置付けています。あくまで17小節以降が第1主題ではないかと思います。 その根拠としては、ショパンのワルツは第1番から第6番までは長短の程度の差こそあれ、 必ず序奏が置かれているからです。ショパンもここを序奏と位置付けていたのは、明らかではないでしょうか。 序奏の16小節は曲の中ほどと終結部にも全く同様のものが再登場していますが、それを除くと、 曲は大きく3部に分けることができます。 この曲のように、序奏と同じものを最後に持ってきて曲を結ぶという構成は、 ショパンの曲では他にマズルカ第13番イ短調Op.17-4やノクターン第10番変イ長調Op.32-2、ピアノ協奏曲第2番の第2楽章などに見られます。 そのいずれも冒頭は序奏という位置づけであることは明らかです。
構成:序奏:第1部(A-B-C-C'):第2部(A-B-C-C'):序奏(と同じもの):第3部(E):序奏(と同じもの:終結)
序奏:イ短調:右手は1拍目が休符、2拍目と3拍目に2重和音でリズムを刻み、左手第5指でバス音を保持しながら、1,2,3指の内声部で旋律を担う この曲は哀愁漂う曲調も素晴らしいですが、僕自身はそんな陰鬱な流れにわずかに光が差し込んでくる瞬間を迎えるC部とC'部に強く惹かれます。 何とも物憂げでありながらも爽やかという相反する要素を見事に融合・同居させ、微妙な陰影と濃淡をつけた音楽性豊か、香り豊かな色彩感には 惚れ惚れするほどです。また第3部のE部の左手が担う比較的高音の旋律も、何ともやるせない不思議な情熱が内包されており、 ホ長調に転調してからの美しく簡素な響きも特筆すべきものです。まさしく「ピアノの詩人」と言うにふさわしい音の世界そのものです。 ショパン自身が自作のワルツ全曲の中でこの曲を最も好んだ理由も、そこにあったのではないかと僕は信じています。 まさにショパン自らの会心作のワルツ3番、皆さんも味わいながら聴いてほしいと思います。 技術的にも易しい曲ですので、皆さんにも是非ご自分で弾きながら味わってほしい1曲です。
ワルツ第4番ヘ長調Op.34-3作曲年:1838年ところで「名曲に名演あり」と言われますが、名曲でなくても名演は存在します。この作品はショパンの他のワルツと比べると 際立って優れた特徴がないように感じますが、この曲には圧倒的な名演が存在します。皆さんもご存じ、スタニスラフ・ブーニンです。 ブーニンが1985年第11回ショパンコンクールの第2次予選で弾いたこの曲の演奏は、それまでの常識を覆す速いテンポで斬新かつ自由闊達な演奏で、 並み居る審査員、ワルシャワの聴衆を大変驚かせ大きなインパクトを与えるものでした。 このワルツを弾き終わると、まだ第2次予選のプログラムの途中(ただし最後は英雄ポロネーズを残すのみ)だというのに、 聴衆から拍手が沸き起こり、ワルシャワフィルハーモニーホールは爆発的な拍手で熱狂のるつぼと化しました。 その流れをそのままに勝利宣言・凱歌のような英雄ポロネーズという流れ・・・ 閑話休題。この作品の構成は例によって序奏とコーダを含む3部形式で書かれています。 構成:序奏(ヘ長調)-主部(ヘ長調)-中間部(変ロ長調)-主部:再現部(ヘ長調)-コーダ(ヘ長調)
序奏:右手8度、左手10度で右手と左手の第1指が交差した状態でのヘ長調の属和音から開始。半音単位で細かく上昇する右手の音型で主部への流れを作る。 この作品はテンポは速いですが、難易度はそれほど高いとは思いません。ただし主部の左手の伴奏音型は3拍目がサブドミナントである点が 他のワルツとは異なるユニークなもので(他のワルツは伴奏音型の2拍目と3拍目は同じ和音か少なくとも和声的には同じ役割を果たすことがほとんどです)、 その斬新な手法のため、弾きなれたワルツと勝手が違うと感じることもあると思いますが、ここは慣れが重要です。 右手のパッセージはパターン化されているので、速いテンポで弾くのもそれほど苦にならないはずです。 強いて言えば、ヘ長調のF-A-C-E(ファ-ラ-ド-ミ)の繰り返しで上昇していくところで音を外しやすいので、 遅いテンポで弾いてしっかり手に馴染ませることが大切です。 皆さんもこの曲を得意の1曲にして、ブーニンの気分を味わってみてはいかがでしょうか。
ワルツ第5番変イ長調Op.42作曲年:1840年この作品は序奏とコーダを含むという点で他のワルツとの類似点はありますが、構成的にはやや独特です。
曲の構成:序奏-主題A(変イ長調)-副主題B(変イ長調)-C(変イ長調)-B-D(変イ長調)-B-E(ハ短調-変イ長調)-B-A-B'(変形)-コーダ
序奏:変イ長調:E♭-F音の右手の長いトリルから入り左手で和音を添えることで変イ長調の調性が立ち上がるという手法 このワルツはこうしてみてくると各主題の調性はいずれも基本的にはほとんど変イ長調で変わり映えしないような印象を持たれるかもしれませんが、 細かい部分にはショパンならではの細かい工夫が施されていて、特に主題Eとコーダでのモチーフの処理の仕方や転調法は一種独特です。 コーダはこの曲の規模からするとかなりの規模でバランスを欠いているきらいはありますが、 非常に技巧的でピアニスティックでスケールが大きくこの曲の最大に聴きどころと言っても過言ではないほどです。 このワルツはショパンのワルツ全19曲の中では難易度が最も高いワルツと個人的には考えています。 それでも上級レベルの方であれば、十分ものにすることができると思います。是非、挑戦してみて下さい。
ワルツ第6番変ニ長調Op.64-1「小犬のワルツ」作曲年:1846-47年その作品64の3つのワルツの第1曲目を飾るこの変ニ長調のワルツは「小犬のワルツ」のタイトルが付けられています。 このワルツは我が国では、ショパンのワルツ全曲の中でも最も有名なものの1つで、ピアノレッスンではショパンの導入として 課題に出されることも多く、またピアノ学習者のピアノ発表会の定番の作品ともなっているのは皆さんもご存知の通りです。 このワルツが「小犬のワルツ」と呼ばれる理由については、はっきりとした背景があります。 ショパンは当時、恋人のジョルジュ・サンドと同棲生活を続けていたわけですが、そのジョルジュ・サンドが飼っていた小犬が、 自分の尻尾を追いかけてくるくると回る習性を持っていたようで、サンドがショパンにその様子をピアノで表現した曲を作ってほしい と頼んだそうで、そうしてできたのがこの「小犬のワルツ」というわけです。 確かにこの曲を聴くと右手が4音単位で旋回する快活なパッセージ、そして3連符と8分音符で構成される快活なパッセージは、 いかにも愛らしくすばしっこい小犬の様子がピアノの音で見事に表現されているようで、 抽象音楽一筋だったショパンが描写音楽を書かせても超一流だったことが証明されています。 しかし何とこの作品は作曲を依頼したジョルジュ・サンドにではなく、ショパンの謎の恋人説として憶測されているポトツカ夫人に献呈されてしまったのは 何とも皮肉です。それがショパンの強い意図なのか気まぐれなのかは知る由もありませんが・・・ この作品はショパンのワルツの中でも第11番と並んで最も規模が小さく、演奏時間は通常1分40秒から1分50秒ほどです。 海外ではこのワルツのことを「1分ワルツ(minute waltz)」と呼ぶこともあるそうです。しかしどう考えても1分では弾けないですし、 敢えて名前を付けるのであれば、2分ワルツとしてほしいところですが、minuteには「瞬間」という意味があり、 要するに一瞬で終わってしまう短いワルツという意味で厳密な「1分」ではないことは明らかです。
この作品は短い序奏を伴った3部形式で書かれています。構成は次の通りです。
序奏:変ニ長調:単音(トリルを付ける版と付けない版がある)-展開する右手のパッセージ(そのまま第1主題に突入) この「小犬のワルツ」はいい加減に弾くのは結構簡単でも、実際に細かいパッセージの間に挿入された プラルトリラーをしっかり弾くためには正しい運指法と練習方法が必要となり、きちんと練習を積むことが必要です。 またこの曲の序奏の冒頭の単音にトリルを付けるか付けないかは版によって異なり、現在でも議論の対象となり決着がついていない問題のようですが、 最終的には好みの問題となってしまいそうです。 「小犬のワルツ」はショパンの作品の中でも非常にポピュラーで親しみやすい名曲です。 皆さんも是非、この曲に取り組んでみて下さい。結構面白い曲だと思います。
ワルツ第7番嬰ハ短調Op.64-2作曲年:1846-47年前述したように、この作品64の3つのワルツは、ショパンが恋人のジョルジュ・サンドと破局を迎えようとしていた時期に作曲されたもので、 ショパンが36歳〜37歳の頃の作品ですが、39歳で亡くなったショパンにとっては晩年の作品ということになります。 ショパンの孤独な晩年の心境がにじみ出た哀愁漂う絶品のワルツです。
曲の構成は序奏とコーダのいずれもないシンプルな3部形式です。 具体的には、主部(A:嬰ハ短調 - B:嬰ハ短調)-中間部(C:変ニ長調 − B:嬰ハ短調)-主部の再現(A:嬰ハ短調 - B:嬰ハ短調)です。
主部: このワルツはショパンのワルツの中でも特に独創的でショパンならではの哀愁と旋律美に満ちた名曲です。 難易度は易しいと言われることが多いですが、ごまかしなくきちんと弾くのは結構難しく、この右手の8分音符を 完璧に弾ける人はなかなかいないです。全ての音の粒が揃っているかを冷静に自分の耳で聴いて修正していくことが求められます。
ワルツ第8番変イ長調Op.64-3作曲年:1846-47年しかしなかなかどうして、これが結構いい曲なんですよ。ショパン晩年のワルツですが、ワルツ第7番で聴かれる晩年特有の哀愁とは打って変わって、 このワルツは明るく爽やかです。しかし変イ長調という調性のためか、明るさの中にも何とも言えない儚げな優しさと陰りがあります。 ショパンの初期の華麗系のワルツと違い、ふとした瞬間に感じさせる独特の哀愁があり、音楽性豊かで香り高い作品となっています。 この曲でショパンは意外で大胆な遠隔転調を多用して、新鮮な驚きを感じさせる斬新な作曲技法を披露していることにも注目させられます。 この作品もシューマンの言うような「伯爵夫人と踊るワルツ」のような雰囲気があります。 ワルツでありながら、中間部は2拍子系のリズムとなっている点も他のワルツにないユニークさがあります。 そのような意味でもこのワルツは他のワルツからは得られない、独特の魅力に満ち溢れています。 この作品は「知る人ぞ知る」マイナーなワルツで、この曲が好きということに一種の「ためらい」を感じる人も多いと思いますが、 20世紀の大ピアニストのルービンシュタインは「内緒の話だが、私はこの曲が密かに好きなんですよ」とある記者に語っていたそうです。 その話が公になってしまうのはどうかと思いますが、実は僕も個人的にはこの曲がかなり好きです。 以前、スタニスラフ・ブーニンが1985年第11回ショパンコンクールで優勝して、その翌年に来日した際、日本中はブーニンフィーバーで 沸き返っていましたが、その時の東京公演でショパンのワルツ集が演奏されて、その模様がNHKで放送されたときに聴いたのが、 この曲との初めての出会いでした。その演奏は録画して何回も、いや何十回も見ました。その演奏は速いテンポで颯爽とした演奏で、 この曲の儚げな雰囲気とはやや違いましたが、爽やかで素晴らしい演奏でした。 曲の構成は序奏がなくコーダのある3部形式です。 主部(変イ長調)−中間部(ハ長調)−主部の再現(変イ長調)―コーダ(変イ長調)
主部: この作品は難易度的には決して高くはありませんが、メインテーマの最後の方に出てくる右手の幅広い音型がややミスタッチしやすい部分です。 1指を滑らせて連続して使うなど特殊な運指もあり、慣れないと戸惑うかもしれませんが、弾きなれれば大丈夫だと思います。 しかし短い作品でありながら、様々な調性のオンパレードの趣があるので、演奏するにあたっては、譜読みに慣れていないと戸惑うのではないかと思います。 音楽性豊かで、ショパンが多用した意外な転調の妙を感じながら聴いてほしい、あるいは弾いてほしい、晩年の隠れた名作ワルツです。
ワルツ第9番変イ長調Op.69-1「別れのワルツ」作曲年:1835年このワルツは「別れのワルツ」あるいは「告別」というタイトルが付けられていますが、皆さんはこの作品にまつわる背景・エピソードをご存じでしょうか。 ショパンは「ピアノの詩人」というだけあって、特定の女性に対する思いを昇華させることでできたピアノ曲が数多く存在します。 よく言われるようにショパンが思いを寄せた女性として、コンスタンツィア・グワドコフスカ(グラドコフスカ)、 マリア・ヴォジンスカ、ジョルジュ・サンドの3人が挙げられることが多いですが、この作品はその2番目の、マリア・ヴォジンスカにちなんだ作品です。 当サイトの「ショパンの生涯」のコーナーでも触れているように、マリア・ヴォジンスカはショパンと同郷のポーランドの貴族の娘で、 幼い頃から家族ぐるみで付き合っていて、いわば知り合いだったようですが、 1835年、ショパンが25歳の頃、旅の途上のドイツで久しぶりに彼女に出会った際、彼女が一段と美しい娘に成長していることに驚き、 心を奪われます(残された2種類の肖像画を見る限り、客観的には決して美人とは言えないと思いますが、あくまでショパンから見て、という意味です)。 ショパンがマリア・ヴォジンスカに惚れ込んでいることは周囲から見て一目瞭然であったとも言われますが、 ここまでなら、それまでのショパンにもよくあること、片思いで終わってしまうのですが、この時は違いました。 ショパンの方からも積極的にアプローチし思いを伝えたようです。マリアの方もショパンに惹かれ、両想いとなっていたそうです。 そのような満ち足りた交際期間中、ショパンはこのワルツを作曲して、彼女に贈りました。 このようなこの曲にまつわるエピソードからは、「別れ」や「告別」ではなく、「(愛の)告白」の方が曲のタイトルとして 適切なのではないか、なぜ「別れ」なのか、と首を傾げる方も多いと思いますが、それは2人の恋が実らなかったからです。 この時、ショパンとマリアは婚約を交わしたのですが、その約1年後、彼女の両親から何の理由も告げずに婚約破棄の手紙が送られてきました。 ショパンは病弱の身でありながら、パリの社交界で昼夜逆転の生活を送り、無理が重なっていたようで、 マリアの両親からは結婚の条件として、それまでのそのような不摂生をただすことを提示していたわけですが、 ショパンはそれを守らなかったというのが婚約破棄の理由ではないかと言われていますが、 ただ単に、自分のかわいい娘を、病弱な青年の元に嫁がせたくないという気持ちも強かったのではないかと思います。 さらにこの頃、ショパンはパリの社交界で幅を利かせる男装の麗人ジョルジュ・サンドとの交際も密かに噂されていたそうで もしその噂が事実だとしたら(そして実際ショパンはサンドと交際することになるわけですので事実だったのだと思いますが) 浮気したショパンに当然責任があり、これはとんでもないことで、マリアの両親の気持ちも分からなくはありません (ただショパンの立場から言い訳させてもらうと、ショパンから見てジョルジュ・サンドの第一印象は最悪で、 「なんて感じの悪い女なのだろう、あれでも本当に女なのだろうか」とも言っているくらいですから、 ジョルジュ・サンドの方がショパンに対して積極的で、それにショパンは流されてしまった、悪い女に引っかかってしまった、 というのが真相に近いとは思います)。 理由はどうであっても、マリアの両親から反対された以上、ショパン自身にはもうどうすることもできません。 ショパンは悲しみに打ちひしがれ、絶望に沈みました。そしてそれまでマリアから送られてきた数々の大切な手紙を束ねて、 その上に彼女からもらったバラの花を添えて、その上に「我が悲しみ(Moja bieda)」と書き記し、リボンで束ねました。 そしてショパンはそれを生涯大切な思い出としてしまい込み、生涯、大切に持ち歩いていたそうです。 このワルツは恋人との幸せに満ち足りた交際期間中、彼女に対する思いを伝えた愛の抒情詩であって、 別れに際して書かれた作品ではないため、「別れのワルツ」と呼ぶのは作曲背景には厳密には合致しないことになります。 しかし最終的に別れなければならなかった2人の運命を考えると、このような呼び方もありなのかもしれませんが。 このワルツはショパンの死後に草稿が発見された遺作で、彼はこのワルツを出版する意図は全くなかったようです。 ショパンはこのワルツを、マリア・ヴォジンスカとの2人だけの大切な思い出として、例の「我が悲しみ」と記した 手紙の束とともに、生涯の大切な思い出として胸の中にそっとしまい込んだのです。 何とも悲しいエピソードで、僕はこの話を初めて聴いたとき、そのあまりの悲しさと感動と同情とに激しく感情をかき乱され、 涙が止めどなく流れたのを昨日のことのように覚えています。 ショパンの恋人としてはジョルジュ・サンドが有名ですが、ショパンがその生涯で最も愛した人は、きっとこの人だったに違いない、 という確信に近いものがあります(何の根拠もありませんが、直感による確信です)。 ちなみにマリア・ヴォジンスカはこの後、結婚したそうですが、決して幸せな結婚生活ではなかったそうです。 運命というのは何と皮肉なものだろうかと考えさせられてしまいます。 この話を聞いて、皆さんは不思議に感じることはなかったでしょうか? 話が長引いたついでに、このことについて僕自身が疑問に感じる点についても少し触れておきたいと思います。 ショパンとマリア・ヴォジンスカの婚約には当然のことながら2人の意思が大きく関わっていると思いますが(2人が惹かれ合っていたのは 確かな事実だと伝えられていますし)、婚約破棄に関しては「彼女の両親からの一方的な拒絶」という記述は数々の文献で一致しています。 この記述からは、この婚約破棄の意思決定に、ともするとマリア・ヴォジンスカ自身が関与していないかのような奇妙な印象を抱きます。 マリア・ヴォジンスカ自身の主体性が全く感じられず、この婚約破棄についてどう思っていたのかの記述が全く見当たらないのです。 ショパンと別れなければならないと滂沱の涙を流し両親に「そこを何とか」と頼み込んだのか、食ってかかったのか、両親が言うことだから、逆らえないと諦めたのか。 はたまた何とも思っていなかったのか。 当時マリア・ヴォジンスカは17歳〜18歳とショパンよりも8歳ほど若く、意思表示力が弱かった可能性がありますが、 この時代のこの地方の婚約に関しては、本人同様、両親の力が相当大きかったのでしょうか。貴族ということで規律も厳しかったのだと思います。 今の現代の日本なら、「駆け落ち」という選択肢もあったと思うのですが、当時はそのようなことは考えられなかったのだと思います。 婚約が破棄されてショパンと別れることが決定したとき、マリア・ヴォジンスカはどのような思いだったのか、知りたい気持ちは膨らみます。 上記のエピソードからはショパンは絶望の淵に追い込まれ、恐らく血を吐くほどに悲しんだに違いないのに、女性というのは意外に冷静なのかもしれないですね。 この2人のアンバランスがただ単に感受性の違いによるものなのか、本当はショパンの一方的な片思いに近い状態だったのか。 この状況を考えると、僕はむしろショパンの方に同情してしまいます。 こんなにあっさりと結婚を諦めてしまうのなら、そこまで強く思われてはいなかったのだ、だから、こんな人とは結婚などしなくてよかったのだと 思えればよかったのだと思いますが、当のショパンはそう思えるほど冷静ではなかったのだと思います。 ・・・というのは余談でした。 この作品にまつわる背景の話がかなり長くなってしまいましたが、この曲の内容の話に移りたいと思います。 このワルツは上記のような作曲背景のためか、甘く美しい旋律とハーモニーが特徴となっています。
構成はワルツにしては珍しいロンド形式で次の通りです。
主題A:変イ長調:アウフタクトから右手のゆっくりした8分音符で奏でられる旋律は、まるでピアノの鍵盤を撫でるように優しい旋律です。
左手のバス音も半音階で下降したかと思うと上昇するという不安定さがあり、愛に酔っているような、言わば陶酔するような印象を与えます。
この旋律の単位は2回繰り返されます。
副主題部1: 主題A’:変イ長調:再び主題A'が変イ長調で戻ってきます。
副主題部2: 主題A'':変イ長調:最後にメインテーマAが戻りますが、ここは反復なしで、 最後の速い装飾的な上昇パッセージは減七アルペジオになり(最後の2音だけは違いますが)、 この夢のようなワルツは静かに終わりを迎えます。 このワルツはショパンのワルツの中でも技術的にはかなり易しめですが、テーマAの最後の方に登場する装飾的パッセージなど、 意外に難しい部分もあり、また音楽的に演奏するのはそう簡単ではないと思います。 陶酔するようなテーマAを味気なく弾く人もいますし、また逆になよなよとバランスを欠いた弾き方をしてしまう人もいて、 この曲本来の良さが損なわれてしまっている演奏がほとんどで、真の名演にはなかなか巡り合えないです。 とはいえ、ショパンのワルツの中では技術的には易しい方ですので、ショパンのワルツの入門としてもおすすめの1曲です。
ワルツ第10番ロ短調Op.69-2作曲年:1829年このワルツはショパンのワルツの中でも技術的には易しめで理解しやすい作品ということもあり、 ピアノ学習用としてよく取り上げられるもので、この曲を弾いたことがあるという方も多いのではないかと思います。 曲の構成は明快・単純な3部形式です。 主部(A-A'-B-A''-B-A'')-中間部(C-C')-主部の再現(A-B-A')
主部: このワルツはこのように構成もシンプルですが、素材(=旋律やモチーフ)が素晴らしいため、 聴く人の涙を誘う哀愁に満ちた佳作となっています。
ワルツ第11番変ト長調Op.70-1作曲年:1835年構成は単純明快な3部形式で、 主部(AABB)-中間部(CCDCDC)-主部の再現(AA)という構成です。
主部:
中間部: 主部の再現:変ト長調:中間部が終わると主部が再現されますが、変ト長調のAを繰り返し、B部を登場させることなくシンプルかつ唐突に終結します。 このワルツは非常にマイナーですが、♭6つの変ト長調という譜読みが難しい調性であることに加えて、 跳躍も多く技巧的にもそれなりに難易度が高い曲ということもあり、この曲を演奏するのはピアニストかショパンマニアのアマチュアに 限られるのではないかと思いますが、物好きな方は是非、チャレンジしてみて下さい。中間部の感動的な部分だけでも弾けるようになると気持ちよいと思います。
ワルツ第12番ヘ短調Op.70-2作曲年:1843年曲の構成は2つの要素を順番に登場させるということを2回繰り返すというシンプルなもので、強いて言えば「2部構成」でしょうか。 このような構成を採っているショパンの作品は他にノクターン第9番などがあります。 構成:第1部(A-A-B)-第2部(A-B)
第1部:
第2部: この作品は音楽的にも技術的にも地味な作品ですが、ショパンのワルツの中では特に易しいもので(ワルツ3番や7番よりもはるかに易しいはずです)、 ショパンのワルツ入門用として、ショパンの「初ワルツ」として皆さんにおすすめの1曲です。
ワルツ第13番変ニ長調Op.70-3作曲年:1829年このワルツも第9番「別れのワルツ」同様、ショパンが思いを寄せた女性に強く影響されています。 作曲当時ショパンは19歳でしたが、この頃のショパンは、同じ音楽院に通う声楽科の学生であったコンスタンツィア・グワドコフスカ(グラドコフスカ)という女性に 密かに片思いをしていました。その時のショパンの胸の内が昇華され結晶化された作品としては、ピアノ協奏曲第2番(ヘ短調Op.21)が有名ですが、 実はこの曲も同じ思いがベースにあって、その心情の吐露の結果、作品として結晶化したものと言われています。 彼が当時の友人に宛てた手紙の中には次のような一節があります。 「これは僕にとって不幸なことなのかもしれないが、僕には今、理想の女性がいる。この半年間、毎晩のように夢の中に彼女が出てくるのだが、 まだ一度も口をきいたことがない。僕は心の中で彼女に忠実に使えてきた。彼女のことを夢に見、彼女のことを想いながら 僕はコンチェルトのアダージョ(注:ピアノ協奏曲第2番・第2楽章(ラルゲット)のこと、当時のテンポ指示は「アダージョ」だったのでしょうか) を書いた。そして今朝、このワルツを書いた。これを君に送ろうと思う。 このワルツの中間部の左手が高音になっていて驚くかもしれないが、この音に託した僕の思い、君ならきっと分かってくれると思う」・・・ これは彼ではなくても僕たちでも十分に分かるというものです。中間部で右手でワルツリズムを刻みながらの主旋律に対して、左手がテノールの対旋律で追随する部分がありますが、 そのテノールの対旋律がこれでもか、これでもかと高音に上がってくる、そのやるせない情熱は聴く人の胸に迫り、 思わず目頭が熱くなります。ショパンがグワドコフスカにどれほど一途に惚れ込んでいたか、 どんなに言葉で説明するよりも、この作品のこの部分が何より雄弁に物語っています。 これを聴くと、どんなに思っても思っても決して叶えられることのない悲しい片思いをする青年の静かな悲鳴と嗚咽に聴こえてきます。 ショパンは結局、自分の胸の内を打ち明けることができず片思いで終わってしまったようですが、 そのやるせない思いは、素晴らしい珠玉の名曲として今日、このような形で残されていることが僕たちにとって何よりの財産です。 余談ですが、グワドコフスカはショパンの死後、この話を聴いたとき、「あの人は空想にばかり耽っていて、頼りにならない人だった」と 全く無関心だったようです。ショパンは胸の内を彼女に告白していたとしても、きっと成功しなかったのだろうと思われます。 それなら告白せずにその思いを密かに胸に秘めておいて、結果的には正解だったのだと思います。 作品の構成は典型的な3部形式で、主部(A-A-B-B)-中間部(C-C-D-D-C)-主部の再現(A-A-B-B)
主部:
中間部:
主部の再現: このワルツ第13番は、一聴すると地味に感じるかもしれませんが、音楽的にも技術的にも意外に高度なものが要求される、 隠れた名作ワルツです。このワルツを書いたショパンの気持ちを想像しながら、聴いたり弾いたりしてほしい作品です。
ワルツ第14番ホ短調(遺作)作曲年:1830年この作品の構成は、他の初期のワルツのような単純な3部形式とは異なり、 華やかな序奏とコーダを持つ3部形式で書かれており、ショパンがこの曲に力をいれていたことが伺われます。 構成は次の通りです:序奏(ホ短調)→主部(ホ短調:ABABA)→中間部(ホ長調:CCDC'DC')→主部の再現(ホ短調:A)→コーダ(ホ短調) 序奏:ホ短調:左手が広い分散和音、右手がホ短調の主和音(E-G-H)のみで構成される連続アルペジオで上昇する極めて華やかな序奏です。
主部:
中間部:
主部の再現:
コーダ:ホ短調: このワルツは技巧的には第1番、第2番、第5番ほどの難易度ではありませんが、ショパンのワルツの中ではそれに次ぐ難易度だと思います。 その分、弾き映えも聴き映えもする曲で演奏効果も非常に高い曲であるため、このワルツを弾ける技術レベルに到達している方には 是非ともおすすめの1曲です。
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ショパン・ワルツ・人気CD夭折の天才ピアニスト・リパッティの代表的名盤。録音の音質はよくないものの、透明度の高い音色で都会的に洗練された ワルツを聴かせてくれます。 骨太の音色、遅めのテンポで淡々と弾き進めていく、枯れた味わいが印象深い演奏。ルービンシュタインの老成された渋い 芸風とコクのある表現が特徴。 美しい音色で丁寧に弾きこまれたワルツ集。オーソドックスタイプの演奏で録音もよいので、ショパン・ワルツ集のファースト・ チョイスには最適な演奏かも。
ショパン・ワルツ・楽譜
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